隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

たんぽぽ球場の決戦

越谷オサム氏のたんぽぽ球場の決戦を読んだ。本書は北上ラジオの第48回で紹介されていた。

越谷オサム『たんぽぽ球場の決戦』は白眉の草野球小説だ!【北上ラジオ#48】 - YouTube

野球の小説だ。と言っても、草野球のチームが舞台で、そのチームに参加しているのはかって野球に挫折した人たち。主人公の大瀧鉄舟は高校2年の時埼玉県の県大会決勝まで勝ち進んだ元エースだったが、惜しくも敗れ甲子園に行けなかった。その後肩を壊し野球をやめてしまい、今は倉庫会社でアルバイトをしている。その鉄舟が9年ぶりに野球をやることになった。といっても、本人が野球をまたやりたくなったというよりは母親にうまいこと乗せられて草野球チームのメンバーを募集することになったのだ。鉄舟は口下手で人とのコミュニケーションに問題があるので、疎遠になっていた高校野球のチームメイトの阪野航太朗に助けを求めた。そこから、一人二人と参加者が増えていって、9人そろうところは王道的なストーリー運びだろう。だが、集まってくるのは一度は野球に挫折した人ばかりだ。運動経験がない参加者はどうしても言いたいことが浮かんでしまう鉄舟だが、このチームを始める前に航太朗と怒鳴るのは止めようと約束したから、怒鳴りはしない。でも、つい舌打ちをしてしまう。

この小説は野球小説ではあるけれど、やはり大瀧鉄舟の成長物語だろう。肩を壊して野球を辞めてからは、一時期引きこもっていて、今は倉庫でアルバイトをしている。元チームメートの阪野航太朗と比べると足りないところがいくつもある。人とうまく付き合えないのが一番の弱点だと本人も感じている。鉄舟は野球チームの代表なのに、どうしてもみんなをまとめられていないもどかしさを感じながらも、なんとか皆に野球の楽しさを知って欲しいと頑張る。当然ながら、ライバルチームも出現して、最後には試合をすることになるというのも王道的なストーリー展開だろう。大瀧鉄舟が何とか頑張って野球を取り戻そうと奮闘するストーリーは読んでいて楽しいものだった。