多和田葉子氏の太陽諸島を読んだ。「地球にちりばめられて」 、「星に仄めかされて」に続くこの3部作シリーズの最終巻のはず。
前巻の最後で、彼ら一行は日本が一体どうなっているのか調べるために、日本に向けて旅立つことになったのだが、選んだのはコペンハーゲンから郵便船に乗り、バルト海を東へ向かう航路だった。郵便船だけれども一応旅客も運んでいるような船になっている。しかしである。地図を見ればわかるが、バルト海はヨーロッパ大陸とスカンジナビア半島の間にある海で、そこを東に行ってもロシアのサンクトペテルブルグ辺りにぶつかるだけである。一体どうするのだろうと思っていると、ドイツ、ポーランド、カリーニングラード、ラトビアと辿っていって、サンクトペテルブルグに辿り着いた。しかし、Hirukoはそこから列車でシベリアを横断するつもりだったようだが、ビザを持っていなくてロシアには入国できなかった。
「日本がどうなっているかわからない日本人がどうするのだろう」と単純に疑問に思ってこの小説を読みだしたのだが、どうやら著者は日本がどうなっているかにはさほど興味はなかったようだ。多分多言語、多国籍、多ジェンダーによる旅の間に起きることなどが書きたかったことなのでなかろうか。何とも消化不良な読後感だ。