隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

太陽諸島

多和田葉子氏の太陽諸島を読んだ。「地球にちりばめられて」 、「星に仄めかされて」に続くこの3部作シリーズの最終巻のはず。

前巻の最後で、彼ら一行は日本が一体どうなっているのか調べるために、日本に向けて旅立つことになったのだが、選んだのはコペンハーゲンから郵便船に乗り、バルト海を東へ向かう航路だった。郵便船だけれども一応旅客も運んでいるような船になっている。しかしである。地図を見ればわかるが、バルト海ヨーロッパ大陸スカンジナビア半島の間にある海で、そこを東に行ってもロシアのサンクトペテルブルグ辺りにぶつかるだけである。一体どうするのだろうと思っていると、ドイツ、ポーランドカリーニングラードラトビアと辿っていって、サンクトペテルブルグに辿り着いた。しかし、Hirukoはそこから列車でシベリアを横断するつもりだったようだが、ビザを持っていなくてロシアには入国できなかった。

「日本がどうなっているかわからない日本人がどうするのだろう」と単純に疑問に思ってこの小説を読みだしたのだが、どうやら著者は日本がどうなっているかにはさほど興味はなかったようだ。多分多言語、多国籍、多ジェンダーによる旅の間に起きることなどが書きたかったことなのでなかろうか。何とも消化不良な読後感だ。