隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

とてつもない失敗の世界史

トム・フィリップスのとてつもない失敗の世界史(原題 HUMANS A Brief History of How We F*cked It All Up)を読んだ。本書は我々人類が過去から未来にわたって犯してきた愚かしいミスをあげつらった本である。扱っている範囲は広範囲で、環境、外来種、独裁者、民主主義、戦争、植民地政策、外交、テクノロジーにわたっている。本書の作者はイギリスのジャーナリスト兼ユーモア作家で、文体がイギリス流のブラックなジョークというか皮肉になっていて、ちょっと鼻につくので、読者を選ぶかもしれない。実際、私はあまりなじめなかった。それと、知らないことも多々あったのだが、また同じくらい知っていることもあった。

知らなかったことでいえば、「穀物が人間を奴隷化した」というアイディアの最初の発案者はあのダイアモンド博士なのだとか。また、コロンブスは地球の大きさとアジアの大きさを間違って計算し、実際よりはアジアは近くにあると誤認していたらしい。もし、正しく計算していたら、果たして航海に出ていたのだろうか?まぁ、行ったのかもしれない。

17世紀前半のオスマントルコも酷い。後継者争いが起きないように、兄弟を暗殺したり、後継者がいなくなると困るので、鳥籠という隔離場所に幽閉したりを繰り返し、精神に異常をきたしているような人物を皇帝に据えたりを繰り返していた。しかも、その皇帝があまりにひどいときは暗殺により排除していたのだ。そんな状態でも国が持ったのだから不思議だ。

シルヴィーとブルーノ

ルイス・キャロルのシルヴィーとブルーノ (原題 Sylvie and Bruno)を読んだ。

この物語はシルヴィーとブルーノという姉弟のストーリーと、私とその若き友アーサー・フォレスターのミリュエル嬢をめぐるストーリーが入れ子のように語られていく。シルヴィーとブルーノは妖精の国の住人で、彼らの父は総督だった。ところがこの総督が旅に出ることになり、後の事を副総督である弟に託すべく、副総督の地位を次総督に変えて、万事後を頼んだのだった。しかし、そこには狡猾は罠が仕掛けれれており、弟の次総督は選挙によって皇帝に選ばれ、国を乗っ取ることを画策しているのだった。一方、アーサーは伯爵令嬢であるミリュエルに好意を寄せていたのだが、なかなか一歩前に踏みだすことができずにいた。ところが、ミリュエルの従兄である軍人のエリック・リンドが現れ、やがて二人は婚約することになるのだった。

今回読んだのはちくま文庫のシルヴィーとブルーノ で、これも出版直後に買った記憶があるので、実に30年以上も積読状態にあった本だ。今回初めて全編を読み通したが、あまり面白く感じられなかった。というのも、話が中途半端で終わって、何の結論めいたところがないのだ。妖精の国のストーリーの方は言葉遊びが散りばめられた、ルイス・キャロルお得意の感じがするストーリーになっているのだが、長い割には話が進んでいるようにも思えない。明確には書かれていないが次総督の弟は皇帝になったようなのだが、だからと言って何か劇的なことが展開している様子はない。その代わりと言っては何だが、シルヴィーとブルーノがちょくちょく私の方のストーリーにはみ出してきている。一方私の方のストリーは登場人物が科学談義、文学談義、宗教談義などをするのだが、予備知識・基礎知識がないので、あまり面白いとは思えなかった。そして、こちらの方のストリーでは、恋に破れたアーサーはインドに旅立つ決心をしたところで終わっている。

何とも尻切れトンボの感じがして、wikipedia シルヴィーとブルーノを見てみたら、どうやらこのストーリにはまだ先があるようなのだ。しかし、解説でもそのことには触れられていなくて、不親切な印象を受けた。解説者も翻訳者も原書には続巻があることを知らないとも思えないのだが、解説でも訳者による文庫版あとがきにも一切そのことに触れていない。