隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

スキマワラシ

恩田陸氏のスキマワラシを読んだ。

この作品は、「スキマワラシ」と「僕のアレの力」と「タイル」の物語だ。スキマワラシとは隙間童子のことだが、もっともこれは登場人物の纐纈太郎の造語だ。座敷童子は家に憑くものだ。一方スキマワラシは人と人の記憶の間に住みつくのだ。そして、それは忽然と幼い少女の形を伴って現れてくる。今にも取り壊されそうな建物の工事現場に。「僕のアレの力」とは本作の主人公の纐纈散太の持つ力のことで、ものに宿っている思念を感じる力だ。それは不意にやってきて、たまたま触れた物が宿している思念が体の中に流れ込んできて、そのイメージを感じることができる力なのだ。そして、最近なぜかこの力がある種の「タイル」に触れたときに強く発動することが多くなり、しかも強烈なイメージが流れ込んでくるようになった。そして、このタイルがもたらすイメージがスキマワラシにつながっていくのだ。

これは純粋にファンタジーで、なぜこのような不思議な思念を感じる力があるのか、スキマワラシは何なのかという事は一切明かされないし、明かす必要もないのだろう。不思議なことをそのまま不思議なこととして受け入れていけばよいだけだ。この物語は一見まとまりがないようなエピソードが連ねられているが、最後の最後の所でまとまっていくというそういうストーリーになっている。ページ数は470を超えているが、一気に読み進めることができた。

ブックキーパー 脳男

首藤瓜於氏のブックキーパー 脳男を読んだ。

本作は北上ラジオ33回で紹介されていた。

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うーむ。またしてもシリーズ物の紹介だ。本作は脳男のタイトルがついている先行作品が二作あり、本作は三作目だ。 だが、前二作を読んでいなくても十分内容を理解できる。但し、「脳男って誰?」とう疑問だけが最後まで残り、本書には何の説明もなかった。

物語の発端は警視庁捜査一課与件記録統計分析係第二分室の桜端道が不可解な殺人事件を発見したことから始まる。事件の場所は北海道、千葉県、長崎県に分散しているが、それぞれの事件は一カ月余りの間に発生し、遺体は拷問を受けたような身体的特徴を有していた。三件の被害者に接点はなさそうだ。しかし、三人の境遇は似ている。親族はおらず、突如引っ越しをして、その後一年余り後に殺されている。更に詳しく調べると、どうやら三人の経歴は全くの架空のようで、どこからともなく移り住んできて、拷問されて、殺されたようなのだ。同一の犯人による事件の想定されるが、そのことに誰もまだ気づいていない。そのことを聞いた室長の鵜飼縣は何らかの事件が現在進行中で発生していると見なし、警察庁を通じて全国の警察に同様の事件がないかを照会した。そして、また一件、愛宕おたぎしで事件が発生したという連絡を受け、鵜飼縣は現地に乗り込んでいったのだった。

この小説は600ページを超える大作なので、三分の一に差し掛かるまで、話がどんどん広がっていく。拷問されて死んだ人たちにはどのようなつながりがあるのか?犯人の目的は何なのかがメインの謎だ。三分の一の時点で、ようやく犯人しき人物が登場するが、話はまだまだ広がっていき、半分に差し掛かったところで、ようやく何が起こっているのかが見えてくる。しかし、後半になってもなかなか収束せずに、500ページを超えたあたりで、ようやく結末が見えてきそうになるのだが、この調子で本当に終わるのかという疑問が頭にわきながら、読み進めた。これだけ長いと、読み終わるのに、今までだとゆうに一週間はかかったが、この本の場合は三日半で読み終えた。それぐらい面白かった。作品は一応ミステリーの範疇に入るのだろうが、純粋な謎解き小説というよりはサスペンスなのだろう。ネタバレになるので、残念ながらこれ以上の内容を詳しくは書けない。

脳男とは何だろうという疑問が湧いたので、過去作のあらすじを読んでみたが、そのどちらも愛宕市が舞台になっているようで、脳男は重要な役割で今回も出てくるが、登場機会は少ない。今回メインの登場人物になっている鵜飼縣は本作からの登場のようだ。この若き女性警察官も謎の多い人物だ。結局、脳男が何なのかが明かされなかったので、前二作が非常に気になっている。一作目の「脳男」に関しては新装版が4月に出版されている。多分本作に合わせて出版したのだろう。今回のストーリーは一応の区切りがついているが、まだ終わったわけではないだろう。次作も気になるが、脳男のシリーズとしては出版の間が空きすぎていて、次の作品がいつ出るのか全く分からない。