隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る

播田安弘氏の日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫るを読んだ。データを積み上げて、歴史的な出来事を分析して、考察する試みで、数値で裏付けをすることで、説得力を与えている。扱っているのは、元寇、秀吉の中国大返し戦艦大和だ。内容が面白かったのも、この章立ての順番で、最後の戦艦大和に関しては細かい内容に関して私の知識が不足しているので、よく理解できなかった。

元寇に関しては、神風(台風・暴風雨)により元・高句麗軍は被害をこうむり、撤退したという説明を昔はしていた。最近は神風はなかったというような説も見かけるようになったが、いったいどちらなのだろう。当時の記録が残っていれば、もっとすっきりどちらなのかということが明らかになるのだろうが、残念ながらそのような史料はないようだ。本書によると、現在の中学の日本史の教科書4冊の概要が紹介されているが、4冊中2冊が暴風雨に関して言及しているようだ。本書では侵略軍の規模、船の構造等を数値を積み上げて見積もり、博多湾の深度等を勘案して、停泊可能な場所を推定し、仮に蒙古軍の兵員の数が2万6千人だった場合は10時間が上陸に必要で、軍馬に関しても別に10時間必要であったと見積もる。つまり朝の6時から上陸を開始したとしても夕方の4時までかかってようやく兵員の上陸が終わる見積もりになる。日本側は3時ごろにいったん戦闘を止めているようなので、その時点では全軍上陸できていないのだ。この戦いでの蒙古軍の死者数を5000人と見積もり、2万6千に対して19%の損耗率となる。これだけの死者が出ていたとすると、戦線を維持できないので、撤退したのであろうというのが筆者の導いた結論だ。

秀吉の中国大返しに関しても、2万人の兵士が移動するとなるとどれぐらいの食料が必要になるのかということを計算して出すのだが、1日で40トンのおにぎりが必要になる計算で、いったいどこから調達したのだろうという疑問は確かに湧く。秀吉の中国大返しに関しては、山崎の戦に全軍が参加していなかったというのを何かで読んだか、見た記憶があるのだが、それの出展が何なのかが思い出せず、ちょっともやもやしている。

どうかこの声が、あなたに届きますように

浅葉なつ氏の「どうかこの声が、あなたに届きますように」を読んだ。

この本は北上ラジオ第20回で紹介されていた。
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主人公は元地下アイドルの小松夏海。ある事情で、アイドルを続けられなくなり、引きこもりのような生活から何とか脱して、パン屋でアルバイトをしていたところに現れたのが東文放送というラジオ局の黒木というディレクターだった。そして、番組アシスタントのオーディションをするから受けないかと誘いを受けた。それから少しづつラジオパーソナリティとして成長していく小松夏海の物語だ。

この小説は構成が面白い。主人公は明らかに小松夏海なのだが、オープニングの次の第一章であるTALK#01が井澤春奈になっていて、小松夏海はラジオのアシスタントとして初めて番組出演するという体で登場する。小松夏海は井澤春奈にとってはラジオの中の人なのだ。で、第二章では小松奈々子になり、これは小松夏海の本名だ。ディレクターの黒崎にスカウトされてラジオのおでぃしょんを受ける話。で、井澤春奈はもう登場しないのかと思うと、後半の方でまた登場する。そして、第三章の岡本英明もメインは夏海ではなく、岡本が夏海のラジオに救われている話で、岡本も後半の方で登場することになる。ラジオを挟んでこちら側と向こう側を表現することで、物語に遠近感とか、奥行きのようなものを与えている。

だが、ストーリーの中のクライマックスはもけもけ太郎のエピソードだろう。ラジオで何でも褒めます的なコーナは確かにあって聞いたこともあるが、こういう形でストーリーに組み込まれると、こういうコーナも意味があると思った。