隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

SF

統計外事態

芝村裕吏氏の統計外事態を読んだ。 統計外事態という文字列を見て、どういう風に区切るのかちょっとよくわからなかった。知っている単語で見ていくと、「統計」「外事」「態」だ。そうすると、これは/統計/外事/態/と区切るのかとも思えるのだが、それだと意…

三体III 死神永生

劉慈欣氏の三体III 死神永生を読んだ。三体シリーズの最終巻だが、2巻目の最後があのような形で終わって、一体どいう展開になるのだろうと思って読み始めたのだが、最初に「時の外の過去」の部分があって、これも何かの仕掛けなのだろうと読み、その次がいき…

宇宙の春

ケン リュウの宇宙の春を読んだ。本書は短編集だが、アメリカで出版された本を翻訳したというわけではなく、日本で収録作品を選定して出版したオリジナルの短編集のようだ。収録作品は「宇宙の春」、「マクスウェルの悪魔」、「ブックサイヴァ」、「思いと祈…

7分間SF

草上仁氏の7分間SFを読んだ。本書はSF短編小説で、11編収められている。90年代の作品が4作、00年代の作品が6作で、書下ろしが1作という割合。コメディタッチだったり、ブラックユーモアたっだり色々多彩な作品が収められている。5分間SFと比べると、ページ数…

アメリカン・ブッダ

柴田勝家氏のアメリカン・ブッダを読んだ。柴田氏の小説は単なるSFというよりも、観念的なSFだと読むたびに感じる。本書は短編集で、「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」、「鏡石異譚」、「邪義の壁」、「一八九七年:龍動幕の内」、「検疫官」、「アメ…

三体Ⅱ 黒暗森林

劉慈欣氏の三体Ⅱ 黒暗森林を読んだ。タイトルをパット見て、「暗黒…」だと思い込んでいたが、よく見たら「黒暗…」だった。三体Ⅱ では三体人が地球に侵略することが明らかになった世界で、「危機紀」という新たな紀年が定義されている世界になっている。国連…

嘘と正典

小川哲氏の嘘と正典を読んだ。本書は短編集で、「魔術師」、「ひとすじの光」、「時の扉」、「ムジカ・ムンダーナ」、「最後の不良」、「嘘と正典」の6編が収められている。巻末の初出一覧を見ると、最初の4編がSFマガジンで、「最後の不良」がPen、「嘘と正…

流れよわが涙、と孔明は言った

三方行成氏の流れよわが涙、と孔明は言ったを読んだ。本書はSF短編集で表題作の「流れよわが涙、と孔明は言った」、「折り紙食堂」、「走れメデス」、「闇」、「竜とダイアモンド」の5編が収められている。表題作は明らかにディックの「流れよ我が涙と、警官…

なめらかな世界と、その敵

伴名練氏のなめらかな世界と、その敵を読んだ。本書はSF短編集で、「なめらかな世界と、その敵」、「ゼロ年代の臨界点」、「美亜羽へ贈る拳銃」、「ホーリーアイアンメイデン」、「シンギュラリティ・ソヴィエト」、「ひかりより速く、ゆるやかに」の6編が収…

時空旅行者の砂時計

方丈貴恵氏の時空旅行者の砂時計を読んだ。本作は第29回鮎川哲也賞を受賞した作品で、SF+ミステリーの構成をとっている。SFのところは主人公で探偵役となる加茂冬馬が不思議な声にいざなわれて過去の世界にタイムスリップするところなのだが、実はミステリー…

5分間SF

草上仁氏の5分間SFを読んだ。たぶん1980年代後半から1990年代の前半ぐらいには草上仁氏の作品をよく読んでいた気がする。軽いタッチのSF短編を量産していて、SFマガジンにもよく掲載されていたと記憶しているし、文庫本も早川書房から多数出ていたと記憶して…

さよならの儀式

宮部みゆき氏のさよならの儀式を読んだ。著者初のSF短編ということで、興味を持ったので、読んでみた。宮部みゆき氏というとやはりミステリー作家という印象がある。収録作品は8編。「母の法律」、「戦闘員」、「わたしとワタシ」、「さよならの儀式」、「星…

ランドスケープと夏の定理

高島雄哉氏のランドスケープと夏の定理を読んだ。姉のテアは12歳で故郷のグリーンランドを離れ、日本の大学に進んだ。17歳で宇宙物理学の博士号を取得する前に助教になった。というのも極めて優秀で、様々な理論を発表し、そして、22歳で教授になった。だが…

三体

劉慈欣氏の三体を読んだ。各方面で話題になっているので読んでみたが、確かにこれは読みやすいし、面白い。翻訳なのに読みやすいのは、訳者の一人である大森望氏の貢献なのだろうと感じた。翻訳の経緯に関しては訳者あとがきで書かれていて、その部分も興味…

スペース金融道

宮内悠介氏のスペース金融道を読んだ。これも「超動く家」のようなバカSF的なところがある、コメディタッチのSFだ。人類が最初に植民に成功した惑星。だから(でもなぜか)二番街と呼ばれている惑星。その惑星にある新星金融。借りる人には誰でも貸す。アンド…

巨神降臨

シルヴァン・ヌーヴェルの巨神降臨を読んだ。本作は巨神計画から続いてきた巨神シリーズ三部作の最終巻だ。前回、EDCのメンバーが突然巨神テーミスとともに宇宙に放り出されたところで終わって、「いったいどうストリーが続くのだろう?次巻は第一巻と第二巻…

郝景芳短篇集

郝景芳短篇集(原題 孤独深处)読んだ。「折りたたみ北京」でヒューゴ賞を受賞した郝景芳の短編集だ。ただ、「折りたたみ北京」はケン・リュウの英訳からの日本語訳というややこしい関係になっているが、本短編集に収録されているのは中国語から日本語の翻訳と…

ヒト夜の永い夢

柴田勝家氏のヒト夜の永い夢を読んだ。これは怪作(褒め言葉)だ。あーだ、こーだ書くと、かえって面白くなくなりそうでためらわれるのだが、何も書かないと一体何の話なのだということになってしまう。本の裏に書いてある慷慨程度は書いておくべきか?1927年…

超動く家にて 宮内悠介短編集

宮内悠介氏の超動く家にて 宮内悠介短編集を読んだ。これは単行本未収録作品の短編集で「トランジスタ技術の圧縮」、「文学部のこと」、「アニマとエーファ」、「今日泥棒」、「エターナル・レガシー」、「超動く家にて」、「夜間飛行」、「弥生の鯨」、「法…

ハロー・ワールド

藤井太洋氏のハロー・ワールドを読んだ。本書は連作短編集で、ITベンチャー企業エッジに勤める(ただし、4作目で休職し、5作目では辞めたことになっているのであろうと想像する)文椎泰弘(フズイヤスヒロ)が主人公の最近のIT関連のテーマを盛り込んだSFになっ…

クロストーク

コニー・ウィリスのクロストーク(原題 crosstalk)を読んだ。本の雑誌2019年3月号で北上次郎氏が絶賛していたので、実物を見てみると、2段組で700ページの大作だった。「どう考えても読み終えるのには1週間はかかるなぁ」と思い躊躇してしまった。そのあと、Y…

パワー

ナオミ・オルダーマンのパワー(原題 The power)を読んだ。本書は歴史学者の二―ル・アダムス・アーモンが「大変動」の時に何が起こったのかをノベライズしたという体をした小説になっている。では「大変動」とは何か?それはある日突然女性たちが雷霆(いかず…

巨神覚醒

シルヴァン・ヌーヴェルの巨神覚醒を読んだ。本作は巨神計画 - 隠居日録の続編で、前作から9年経った所から物語が始まっている。前作で発掘された巨大ロボットはテーミスと名付けられ、国連に所属する地球防衛組織EDCに所属することになっていた。9年間に何…

ダンデライオン

中田永一氏のダンデライオンを読んだ。ミステリーの分類になっているようだが、どちらかというとSFだと思う。もちろん、ミステリー要素もあるのだが、それは主ではなく従ではないかというのが読後の感想だ。物語は1999年と2019年が一人の男の中で交差するこ…

アルテミス

アンディ・ウィアーのアルテミス(原題 ARTEMIS)を読んだ。火星の人の作者の第二作目で、火星の人は未読だが、映画「オデッセイ」は金曜ロードショウで放送された時見て、面白いと思った。ただ、「オデッセイ」は最初は食料のことで困っていたはずなのに、芋…

5まで数える

松崎有理氏の5まで数えるを読んだ。本作は短編集で、表題作の他に、「たとえわれ命死ぬとも」、「やつはアル・クシガイだ 疑似科学バスターズ」、「バスターズ・ライジング」、「砂漠」、「超耐水性日焼け止め開発の顛末」の6作が収められている。著者は2010…

コルヌトピア

津久井五月氏の コルヌトピアを読んだ。本作は2017年の第五回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作である。西暦2049年東京都心南部で直下型地震が発生し、荒川両岸と環状八号線沿いの建物が焼失・倒壊し、三万五千人の人々が亡くなった。その災害復興の過程で、被…

グリフォンズ・ガーデン

早瀬耕氏のグリフォンズ・ガーデンを読んだ。プラネタリウムの外側 - 隠居日録が面白かったので、デビュー作のこちらも読んでみたのだが、こちらも何とも言えない不思議な小説になっている。こちらではIDA-10がバイオコンピューターとして登場していて、プラ…

世界の終わりの天文台

リリー・ブルックス=ダルトンの世界の終わりの天文台 (原題 Good Morning, Midnight)を読んだ。この小説はカナダの北極圏にあるバーボー天文台のオーガスティン・ロフタスの物語と人類初の木星有人探査船アイテルの搭乗員のサリー・サリバンの物語が交互に語…

プラネタリウムの外側

早瀬耕氏のプラネタリウムの外側を読んだ。本書は連作短編で非常に不思議な小説群なのだが、それに負けづ劣らず作者の経歴も不思議だ。1992年の4月に「グリフォンズ・ガーデン」が早川書房から刊行され作者はデビューした。新人賞を取ったわけでもないのに、…