隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

SF

5まで数える

松崎有理氏の5まで数えるを読んだ。本作は短編集で、表題作の他に、「たとえわれ命死ぬとも」、「やつはアル・クシガイだ 疑似科学バスターズ」、「バスターズ・ライジング」、「砂漠」、「超耐水性日焼け止め開発の顛末」の6作が収められている。著者は2010…

コルヌトピア

津久井五月氏の コルヌトピアを読んだ。本作は2017年の第五回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作である。西暦2049年東京都心南部で直下型地震が発生し、荒川両岸と環状八号線沿いの建物が焼失・倒壊し、三万五千人の人々が亡くなった。その災害復興の過程で、被…

グリフォンズ・ガーデン

早瀬耕氏のグリフォンズ・ガーデンを読んだ。プラネタリウムの外側 - 隠居日録が面白かったので、デビュー作のこちらも読んでみたのだが、こちらも何とも言えない不思議な小説になっている。こちらではIDA-10がバイオコンピューターとして登場していて、プラ…

世界の終わりの天文台

リリー・ブルックス=ダルトンの世界の終わりの天文台 (原題 Good Morning, Midnight)を読んだ。この小説はカナダの北極圏にあるバーボー天文台のオーガスティン・ロフタスの物語と人類初の木星有人探査船アイテルの搭乗員のサリー・サリバンの物語が交互に語…

プラネタリウムの外側

早瀬耕氏のプラネタリウムの外側を読んだ。本書は連作短編で非常に不思議な小説群なのだが、それに負けづ劣らず作者の経歴も不思議だ。1992年の4月に「グリフォンズ・ガーデン」が早川書房から刊行され作者はデビューした。新人賞を取ったわけでもないのに、…

書架の探偵

ジーン ウルフの書架の探偵(原題 A Borrowed Man)を読んだ。 本書の主人公はE.A.スミス。職業は蔵者。蔵者とは蔵書になぞらえた言葉で、図書館に備えられている再生体(リクローン)で、その時代に蘇った文学者のことである。最初のE.A.スミスはミステリーの作…

バビロン 2 ―死―

野崎まど氏のバビロン 2 ―死―を読んだ。新域の初代首長である斎開化は「自殺する権利」を認める自殺法を新域の首長の専権処分である「掌決」を用いて施行した(これにより、自殺法は議会による追認だけを得ればよいことになる)。そしてそれに呼応したのか、新…

半分世界

石川宗生氏の 半分世界を読んだ。本書は短編集で、4編収録されており、それぞれ、「吉田同名」、「半分世界」、「白黒ダービー小史」、「バス停夜想曲、あるいはロッタリー999」となっている。本書はSFというカテゴリーに分類されているが、単純にSFと言って…

アリスマ王の愛した魔物

小川一水氏のアリスマ王の愛した魔物を読んだ。ここで紹介されていて、 book.asahi.com 面白そうだと思ったので、読んでみたのだが、文体との相性が悪いのか、あまり楽しめなかった。本書は短編集で、5編収録されてる。各タイトルは、ろーどそうるず、ゴール…

スチーム・ガール

エリザベス・ベアのスチーム・ガール(原題 Karen Memory)を読んだ。時代は多分南北戦争後の19世紀末で舞台はアメリカのワシントン準州の架空の都市ラピッドシティ。カレン・メメリーはこの街で縫い子をしていた。縫い子と言っても裁縫の仕事をしているわけで…

Ank: a mirroring ape

佐藤究氏のAnk: a mirroring apeを読んだ。本作は470ページを超える大作だ。昔何かの本で、日本語のサルに相当する英語は二つある。一つはmonkeyで、もう一つはapeである。その使い分けは、尻尾があるのがmonkeyで、尻尾がないのがapeであるというのを読んだ…

エクソダス症候群

宮内悠介氏のエクソダス症候群を読んだ。精神科医のカズキ・クローネンバーグは再び火星の地を踏むことになった。かっつては日本の大学病院に勤務していた。カズキの恋人はその大学の教授の娘であったが、突発性希死念慮のために縊死による自殺を選んだ。そ…

巨神計画

シルヴァン・ヌーヴェルの巨神計画(原題 Sleeping Giants)を読んだ。本書は上下巻に分かれている。後に物理学者のローズ・フランクリンは十一歳の誕生日の日にサウスダコタ州の片田舎の森の中で穴に落ち、そこにイリジウム合金でできた強大な手を発見した。…

ゲームの王国

小川哲氏のゲームの王国を読んだ。このSF小説は一体どう理解すればいいのだろう? 本書は上巻・下巻に分かれており、上巻は約400ページ、下巻は約360ページの紛れもない大長編なのだが、上巻を読む限りは、これをSF小説と呼んでいいのだろうかと、疑問が湧い…

エクサスケールの少女

さかき漣氏のエクサスケールの少女を読んだ。何とか最後まで読んだが、「これは酷い」いうのが率直な感想だ。メモを取りながら読んで、気になった点を列挙する。これ以外にもあったが、多すぎるので、全てを書いているわけではない。 P10に「混信したかのよ…

クロニスタ 戦争人類学者

柴田勝家氏のクロニスタ 戦争人類学者を読んだ。伊藤計劃トリビュート - 隠居日録に収録されていた南十字星の続きの物語だ。 南十字星は、脳にうえつけられた可塑神経回路網でパーソナルな感覚までも自己相を通して共有し、そのデータは平準化され「正しい人…

あなたの人生の物語

テッド・チャンのあなたの人生の物語を読んだ。映画「メッセージ」の原作だ。表題作のあなたの人生の物語を含めて8作収められている。 バビロンの塔 いわゆるバベルの塔の話だが、これとよく似た話をどこかで読んだような記憶があるのだが、何かの勘違いだ…

ニルヤの島

柴田勝家氏のニルヤの島を読んだ。人体通信機構と繋がった生体受像により、人間のありとあらゆる生体活動が記録できるようになった時代では、記録された情報からいつでもその人の人生を叙述することが可能になり、その人が死んだ後にも、その人の人格に触れ…

伊藤計劃トリビュート

伊藤計劃トリビュートを読んだ。TAKさんが、伊藤計劃トリビュートの紹介をしていて、面白そうだったので読んでみた。tak-thinking-room.hatenablog.com 「テクノロジーが人間をどう変えていくか」という問いを内包したSFであること をテーマとした8編が収録…

Self-Reference ENGINE

円城塔氏のSelf-Reference ENGINEを読んだ。例外小説の中からピックアップした本の中の一冊である。 本作には22編の短編が収められており、それぞれ関連しているようで、関連していないかもしれない。同じ名前を与えられている登場人物が登場する話もあるが…

ケレスの龍

椎名誠氏のケレスの龍を読んだ。本人に訊く〈壱〉よろしく懐旧篇を読んだら、椎名氏の小説も久しぶりに読んでみたくなり、読書予定リストの中にあったケレスの龍を手にとってみのだ。 本作は、武装島田倉庫につながる世界の話で、いわゆる「北政府もの」で、…

404 Not Found

法条遥氏の404 Not Foundを読んだ。例外小説で紹介されていた小説の中の一編だ。 池上裕也は2回死んだ。クラスメートの九条晶に告白し、振られ、そして父親の経営する会社のビルの屋上から飛び降りて、自殺した。しかし、なぜか同じ朝を3度繰り返してしまう…

カムパネルラ

山田正紀氏のカムパネルラを読んだ。本書のタイトルから分かる通り、この小説は宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」と密接に関係している。 我々の世界と似ているけれどもちょっと違った世界での物語。16歳のぼくは母の遺言を履行するために、新幹線で岩手県の花巻に…

リアクト

法条遥氏のリアクトを読んだ。本作はリライト、リビジョンに次ぐ3作目である。本作で一条保彦が園田保彦になる部分が描かれると思っていたのだが、それは誤りで、もう一度リライトの世界を再構築する物語となっている。 本作では新たにホタルという未来から…

リビジョン

法条遥氏のリビジョンを読んだ。この作品はリライトの数か月後(1992年の秋)の世界を舞台にしており、園田保彦の誕生を描く物語になっている。 千秋家の女性に代々受け継がれている不思議な手鏡がある。この手鏡を使うと未来を視ることができるのだ。この視る…

リライト

法条遥氏のリライトを読んだ。例外小説 - 隠居日録で見つけたうちの一冊で、これはタイムトラベラー物のSF小説だ。 1992年の夏、中学2年生の美雪は、未来からやって来た保彦と出会う。旧校舎崩壊事故に巻き込まれた彼を救うため、10年後に跳んで携帯電話を持…

デカルトの密室

瀬名秀明氏のデカルトの密室を読んだ。SFにカテゴライズされると思うのだが、ミステリー要素も含まれている。が、実際に明確に謎が解決されるわけではない。ストーリーの中にいくつかの謎が示唆されている例えば、第一章の最後でケイイチがフランシーヌをを…

屍者たちの帝国

去年、映画「屍者の帝国」を見た後に買ったと記憶している。当時は、この中から2~3編を読んだだけで、その後読書を中断していた。 2編目の「小ねずみと童貞と復活した女」がハチャメチャで面白い。ドストエフスキーの「白痴」とダニエルキースの「アルジャ…