隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

2019-01-01から1年間の記事一覧

ネガレアリテの悪魔 贋者たちの輪舞曲

大塚已愛氏のネガレアリテの悪魔 贋者たちの輪舞曲を読んだ。時代は19世紀末、場所はロンドン。ハンズベリー男爵家の娘エディス・シダルは父親に頼まれ贈り物の絵画を探すために画廊を訪れいてた。その画廊で最近発見されたルーベンスの「婚礼の日」という作…

クジラアタマの王様

伊坂幸太郎氏のクジラアタマの王様を読んだ。お菓子メーカーの宣伝広報局に勤めている岸は出荷された新商品のマシュマロのお菓子に画鋲が混入していたという苦情を発端に人気ダンスグループの小沢ヒジリと都議会議員の池野内征爾と知り合った。それはあたか…

まほり

高田大介氏のまほりを読んだ。まほりが何を意味するかに触れてしまうと、ネタバレになってしまうので書けない。途中で末保利のことだというのがわかるのだが、実はこれは万葉仮名で書いているだけで、それが何であるかを表していない。この物語は二人の視点…

medium 霊媒探偵城塚翡翠

相沢沙呼氏のmedium 霊媒探偵城塚翡翠を読んだ。推理作家の香月史郎は大学時代のサークルの後輩である倉持結花に頼まれて同行した先で霊媒師の城塚翡翠に会った。霊媒師の彼女は、死者の匂いを感じることができるという。結花は町中の占い師に見てもらってか…

謎解き 聖書物語

長谷川修一氏の謎解き 聖書物語を読んだ。本書のタイトルになっている聖書だが、この本で扱っているのはいわゆる旧約聖書のこと。聖書を実際に読んだことはないが、その中の物語、例えば創世記、ノアの箱舟、バベルの塔、出エジプトなどのエピソードは映画な…

線は、僕を描く

砥上裕將氏の線は、僕を描くを読んだ。本作は北上ラジオの第5回目で紹介されていた。本の雑誌 Presents 北上ラジオ 第5回 - YouTubeこの小説は第59回のメフィスト賞の受賞作なのだが、メフィスト賞というとなんとなくミステリーの賞だという風に思い込んで…

プーチンとロシア革命

遠藤良介氏のプーチンとロシア革命 百年の蹉跌を読んだ。著者は産経新聞で11年半の長期にわたりモスクワ特派員としてソビエト連邦・ロシアで取材した記者だ。2017年から産経新聞のオピニオン欄に80回にわたって連載した記事に、加筆修正して一冊にまとめたの…

私の家では何も起こらない

恩田陸氏の私の家では何も起こらないを読んだ。この小説は怪談の連作短編で、扱っているテーマは幽霊屋敷だ。その家は小さな丘の上に建っていて、周りには何もない。建物はかなり古いが手入れが行き届いている。修理をした大工の腕がよかったのだろう。家の…

踏み絵とガリバー《鎖国日本をめぐるオランダとイギリス》

松尾龍之介氏の踏み絵とガリバー《鎖国日本をめぐるオランダとイギリス》を読んだ。あのジョナサン・スイフトの書いたガリバー旅行記のガリバーと踏み絵が関係しているということが一つの本書のテーマになっていて、そこから戦国から江戸時代にかけての日本…

インソムニア

辻寛之氏のインソムニアを読んだ。物語は、2017年2月、アフリカ中央部に位置する南ナイルランドで平和維持活動に従事する自衛隊に、現地で活動する国際NGOから緊急要請が入ったところから始まる。ジュベルを拠点に医療分野で活動するNGOの移動診療車両が行方…

撰銭とビタ一文の戦国史 (中世から近世へ)

高木久史氏の撰銭とビタ一文の戦国史 (中世から近世へ)を読んだ。 貨幣・銭とは まず最初に本書では貨幣・銭に関して次のように定義している。 交換手段と価値尺度の機能を持つ媒体の中で汎用性が高いもの、またはその機能そのものを、私たちは貨幣と読んで…

ランドスケープと夏の定理

高島雄哉氏のランドスケープと夏の定理を読んだ。姉のテアは12歳で故郷のグリーンランドを離れ、日本の大学に進んだ。17歳で宇宙物理学の博士号を取得する前に助教になった。というのも極めて優秀で、様々な理論を発表し、そして、22歳で教授になった。だが…

FreeBSD 12.1をNaoPi NEO2上でセルフビルドするのは大変

FreeBSD 12.1がリリースされたので、早速ソースコードをsvn経由で取得して、ビルドしようとしたのだが、メモリー不足でビルドにてまどった。12.0の時は特に何も考えずに、 # make -j2 buildworld # make -j2 kernelでユーザーランドも、カーネルもビルドでき…

会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語

田中靖浩氏の会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語を読んだ。私は歴史物の一冊として面白く読んだ。会計の歴史に関して書かれている本ではあるが、この本で実際の会計のことを学ぶのはジャンルが異なっていると思う。会計に関する歴史を…

川っぺりムコリッタ

荻上直子氏の川っぺりムコリッタを読んだ。本書は北上ラジオの第6回目で紹介されていた。ムコリッタとは牟呼栗多のことで、仏典に記載されている時の単位らしい。30分の1日が1ムコリッタ、なので1ムコリッタは2880秒だ。本の雑誌 Presents 北上ラジオ 第6回…

雪が白いとき、かつそのときに限り

陸秋槎氏の雪が白いとき、かつそのときに限り(原題 当且仅当雪是白的)を読んだ。このミステリーには2つの事件が描かれている。5年前の事件と、そして、今回の事件。これらの事件は中国南部のZ市の高校で、冬の雪の降った真夜中に起きた。事件発生時には雪は…

進化論はいかに進化したか

更科功氏の進化論はいかに進化したかを読んだ。本書は2部構成になっていて、まず前半でダーウィンの進化論について解説している。ダーウィンの何が正しくて、何が間違っていたのかがメインのテーマだ。後半は生物の進化がどのように起きてきたのかの仮説だ。…

戦場のアリス

ケイト クインの戦場のアリス(原題 The Alice Netowrk)を読んだ。この本は、北上ラジオの第4回目で紹介されていた本だ。本の雑誌 Presents 北上ラジオ 第4回 - YouTube1947年七月、第二次世界大戦の傷が癒えつつある頃、十九歳のシャーリー・セントクレアは…

絶滅できない動物たち 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ

M・R・オコナーの絶滅できない動物たち 自然と科学の間で繰り広げられる大いなるジレンマ(原題 Resurrection Science)を読んだ。この本の日本語のタイトルと英語のタイトルの発想が真逆になっているのが興味深い。日本語のタイトルは「絶滅できない」といい…

かがみの孤城

辻村深月氏のかがみの孤城を読んだ。安西こころは入学したばかりの中学校をあることがきっかけで行けなくなってしまった。そして、だんだん家の外に出るのも怖くなり、家から出られなくなっていった。そんなある日、自分の部屋にある姿見が光りだし、その姿…

三体

劉慈欣氏の三体を読んだ。各方面で話題になっているので読んでみたが、確かにこれは読みやすいし、面白い。翻訳なのに読みやすいのは、訳者の一人である大森望氏の貢献なのだろうと感じた。翻訳の経緯に関しては訳者あとがきで書かれていて、その部分も興味…

落語推理 迷宮亭

落語推理 迷宮亭を読んだ。本書は落語とミステリーを合わせたアンソロジーになっていて、収録作は「変調二人羽織(連城三紀彦)」、「貧乏花見殺人事件(我孫子武丸)」、「崇徳院(伽古屋圭市)」、「幻燈(快楽亭ブラック)」、「落語家変相図(大下宇陀字)」、「落…

大江戸御家相続 家を続けることはなぜ難しいか

山本博文先生の大江戸御家相続 家を続けることはなぜ難しいかを読んだ。いつの放送だったのか正確には覚えていないが、NHK BSプレミアムの英雄たちの選択で「14代尾張藩主徳川慶勝、15代尾張藩主徳川茂徳、会津藩主松平容保、京都所司代松平定敬が兄弟」とい…

perlとchromecastその後

chromecastを使った後についつい電源を切らずに放置してしまうことがたまにあったので、NaonoPi NEO2で一日一回早朝にchromecastが動いているかどうか確認するようにした。早朝なら通常寝ているはずだし、その時間にchromecastが動いているのが検出されたら…

スペース金融道

宮内悠介氏のスペース金融道を読んだ。これも「超動く家」のようなバカSF的なところがある、コメディタッチのSFだ。人類が最初に植民に成功した惑星。だから(でもなぜか)二番街と呼ばれている惑星。その惑星にある新星金融。借りる人には誰でも貸す。アンド…

早朝始発の殺風景

青崎有吾氏の早朝始発の殺風景を読んだ。いわゆる日常のミステリーの連作短編集。千葉県の幕張あたりにある架空の沿線を舞台にした日常のミステリーで、登場人物がその沿線にある高校の学生というのが共通の設定になっている。収録作品は、「早朝始発の殺風…

交雑する人類―古代DNAが解き明かす新サピエンス史

デイヴィッド・ライクの交雑する人類―古代DNAが解き明かす新サピエンス史(原題 WHO WE ARE AND HOW WE GOT HERE Ancient DNA and the New Science of the Human Past)を読んだ。従来進化の系統樹は中央の幹から枝分かれすると、そのまま分かれていき、決して…

虚構推理 スリーピング・マーダー

城平京氏の虚構推理 スリーピング・マーダーを読んだ。虚構推理シリーズの3作目。妖怪や化け物から相談を受ける「知恵の神」である岩永琴子と件と人魚を食べたことにより、予知能力と不老不死の力を得た桜川九郎のコンビのミステリー。そう、今回はミステリ…

鬼憑き十兵衛

大塚已愛氏の鬼憑き十兵衛を読んだ。この小説は時代小説というよりも、実際は伝奇小説だ。時は寛永十二年十月、所は肥後熊本。物語は15人前後の侍たちが少年を追って、雨の中山に分け入ることから始まる。山に分け入っているのは荘林正馬ら一群で、加藤家浪…

徳政令 なぜ借金は返さなければならないのか

早島大祐氏の徳政令 なぜ借金は返さなければならないのかを読んだ。本書は室町時代の徳政一揆・徳政令に関して研究した本で、室町時代を通じて、徳政一揆・徳政令がどのように変質していったかの様子がよく分かった。