隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

インソムニア

辻寛之氏のインソムニアを読んだ。

物語は、2017年2月、アフリカ中央部に位置する南ナイルランドで平和維持活動に従事する自衛隊に、現地で活動する国際NGOから緊急要請が入ったところから始まる。ジュベルを拠点に医療分野で活動するNGOの移動診療車両が行方不明になり、車両に乗り込んでいた4名と連絡が取れなくなった。救援連絡を受けた国際NGOは車両が行方不明になった地点から一番近い宿営地の自衛隊に応援を求めたのだ。日本政府は平和維持活動をする自衛隊部隊に駆け付け警護の任務を新に追加し、そのことは各国関係者や非営利組織にも通達されていた。

暴徒や避難民による略奪の可能性もあり、7人の隊員が選任され、警備小隊が結成された。軽装甲起動車には隊長の葛城一等陸尉他三名、高起動車には副隊長の兵藤三等陸尉他四名が乗り込み、現場に向かった。小隊は救援要請が出されたエリアで、乗り捨てられた車両を発見し、調査のために近づいた。そこで待ち伏せしていた武装勢力の攻撃にあい、ロケット弾を撃ち込まれて、隊員が一人負傷した。小隊の装備は小銃と拳銃のみで、一方武装勢力RPG、機関銃、軽機関銃と戦力の差は歴然としており、勝負にならず、包囲されて、武装解除されてしまった。

この物語を動かしていくのは神谷啓介で、防衛省陸上幕僚監部衛生部でメンタルヘルス官として勤務しおり、帰国した元警備小隊の隊員が自殺したこともあり、元小隊隊員のメンタルヘルスのために、自衛隊中央病院の精神科の医師相沢倫子と協力し、元隊員たちに面談していくのだが、彼らから聞く話は報告書として記録に残っているものとは異なっていた。隊員と面談をするたびに何が起こっていたのかが微妙に違ってくるのだった。あらすじで紹介されている文章が、

現地で起きたことについて、残された五名の証言はすべて食い違っていた──。

と書かれていたので、黒澤明羅生門的に各隊員たちが自分の都合のいいような話をするのかと思ったのだが、そうで感じではなく、隠されていたことが少しづつ明らかにされていくといった感じだ。だが、最後まで読まないと何があったのかは当然わからない。これ以上書いてしまうとネタバレになってしまうので、書けないが、なかなか面白いストーリーになっている。