隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

ミステリー

invert 城塚翡翠倒叙集

相沢沙呼氏のinvert 城塚翡翠倒叙集を読んだ。あの城塚翡翠の続編が出るとは思っていなかったので、かなり意外だった。というのも、前作の構成があまりにも見事で、あの構成を踏襲した形での続編は無理だと思ったからだ。なので、この作品はタイトルのように…

三月は深き紅の淵を

恩田陸氏の「三月は深き紅の淵を」を読んだ。このタイトルからはどのような内容なのか全くわからない。読んだ後でも、このタイトルは何を意味しているのかよくわからない。この小説は4つの短編から成り立っている。が、その前にロワルド・ダールのチャーリー…

第八の探偵

アレックス・パヴェージの第八の探偵(原題 Eight Detectives)を読んだ。原題の意味するところは八人の探偵なのに日本語のタイトルが第八の探偵になっているのは、アメリカ版のタイトルが"The Eighth Detective"になっているのに倣っためなのだろうか。この小…

黒牢城

米澤穂信氏の黒牢城を読んだ。天正6(1578)年10月、荒木村重は有岡城に籠城し、突如、信長に対して反旗を翻した。黒田孝高(官兵衛)は村重を翻意させるために有岡城に乗り込んだが、成功せず、城から追い払われることもなく、あるいは殺されることもなく、土牢…

薔薇のなかの蛇

恩田陸氏の薔薇のなかの蛇を読んだ。舞台はイギリスで、ケルトの遺跡のある地方での出来事が最初の「序章」で語られる。その遺跡の祭壇に切断された人体が置かれていたのだ。どう考えてもこれは殺人事件だろう。第一章では場所が変わって、納屋を改造した音…

法の雨

下村敦史氏の法の雨を読んだ。検察が起訴した事件の有罪率は99.7%だ。しかし、高等検察庁の検事の大神は同じ判事から3度無罪を言い渡された。その裁判官は年間15件もの無罪判決を言い渡していて、無罪病判事と揶揄されていた。そして、更に次の担当の二審裁…

へんぶつ侍、江戸を走る

亀泉きょう氏のへんぶつ侍、江戸を走る。本作の主人公は明楽久兵衛で、将軍様の駕籠担ぎである御駕籠之者組に属する御家人なのだが、今でいうところのアイドルオタクで、深川芸者の愛乃に入れ込んでいる。なので組中の同輩からは変物と呼ばれている。今日も…

新 謎解きはディナーのあとで

東川篤哉氏の新 謎解きはディナーのあとでを読んだ。警視庁国立署の刑事宝生麗子は実は巨大複合企業「宝生グループ」のご令嬢という設定の連作ミステリー。風祭モータースの御曹司である風祭警部の許事件解決に励むのだが、いい加減な風祭警部の推理が間違っ…

アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿

澤村伊智氏のアウターQ 弱小Webマガジンの事件簿を読んだ。本書はWebマガジンの駆け出しライターの湾沢陸男が取材中に出くわした事件に関するミステリーだ。短編集で「笑う露死獣」、「歌うハンバーガー」、「飛ぶストーカーとアイドル」、「目覚める死者た…

文学少女対数学少女

陸秋槎氏の文学少女対数学少女を読んだ。本書は雪が白いとき、かつそのときに限りの訳者あとがきに書かれていた、作者と同姓同名の女子高生が主人公のミステリーだ。私は中国人の名前に関しては全く詳しくないので、秋槎というのが女性向きの名前なのか、男…

泳ぐ者

青山文平氏の泳ぐ者を読んだ。本書は半席に登場した片岡直人を主人公とするミステリーで、前巻同様に事件の裏に潜む「なぜ」をあぶりだすのが物語の肝になっている。前巻は短編集だったが、本作は長編で、中に2つの「なぜ」が含まれている。一つ目は、六十歳…

ブックキーパー 脳男

首藤瓜於氏のブックキーパー 脳男を読んだ。本作は北上ラジオ33回で紹介されていた。www.youtube.comうーむ。またしてもシリーズ物の紹介だ。本作は脳男のタイトルがついている先行作品が二作あり、本作は三作目だ。 だが、前二作を読んでいなくても十分内容…

詐欺師は天使の顔をして

斜線堂有紀氏の詐欺師は天使の顔をしてを読んだ。本書は特殊状況ミステリーだ。2つの中編のミステリーが収録されている。子規冴昼は一世を風靡した霊能力者だったが、突然失踪してしまった。マネージャーの呉塚要も八方手を尽くして探したが、その行方は杳と…

戯作屋伴内捕物ばなし

稲葉一広氏の戯作屋伴内捕物ばなしを読んだ。本書は時代小説とミステリーを融合したハヤカワ時代ミステリ文庫でハヤカワ文庫JAの中のサブカテゴリなのだと思う。2019年の夏から刊行を開始しているようだ。本書の主人公は戯作者(本人は戯作屋と称しているが)…

向日葵を手折る

彩坂美月氏の向日葵を手折るを読んだ。本書は北上ラジオの第30回目で紹介されていた。 www.youtube.com物語は、小学六年生の高橋みのりが山形の桜沢という集落にやってくるところから始まる。みのりの父がくも膜下出血で突然亡くなり、母親の故郷にいる祖母…

谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題

東川篤哉氏の谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題を読んだ。本書は鰯のツミレならぬ岩篠つみれが狂言回しとなっている短編ミステリー。岩篠つみれの兄が岩篠なめ郎で、その兄は鰯の吾郎という鰯専門の海鮮居酒屋を谷中で開いている。その谷中を舞台にし…

夜の声を聴く

宇佐美まこと氏の夜の声を聴くを読んだ。この作品は北上ラジオの第23回で紹介されていた。www.youtube.comラジオの中でも言及されているが、不思議な構成のミステリーだ。連作短編のような感じの作りになっているのだが、それぞれのエピソードにタイトルがつ…

オーブランの少女

深緑野分氏のオーブランの少女を読んだ。著者のデビュー短編集で、「オーブランの少女」、「仮面」、「大雨とトマト」、「片思い」、「氷の皇国」の5編が収録されている。それぞれ、異なった味わいの短編なのだが、あえて言えば、最初の「オーブランの少女」…

贖いのリミット

カリン・スローターの贖いのリミット(原題 THE KEPT WOMAN)を読んだ。この作品は北上ラジオ第12回で紹介されていた。www.youtube.com本書はウィル・トレントシリーズの第8作で、北上ラジオでは「シリーズ物の一作ではあるが独立したストーリーなので、これだ…

楽園とは探偵の不在なり

斜線堂有紀氏の楽園とは探偵の不在なりを読んだ。この小説は、 一人を殺しても地獄に堕ちないが、二人殺せば地獄行き という特殊な世界を舞台にしたミステリーだ。二人の人を殺すと、どこからか天使がやってきて、燃え盛る地面に押さえ込んで、地獄に引きず…

戦場のコックたち

深緑野分氏の戦場のコックたちを読んだ。この本は単行本が出版されたときに、確か本の雑誌でも取り上げられていて、おもしろそうだと思った記憶があり、読もうと思った記憶もあるのだが、今まで読んでいなかった。すっかり忘れていたのだ。単行本の出版が201…

スワン

呉勝浩氏のスワンを読んだ。改めて今年坂口安吾の不連続殺人事件を読んで、「心理のミステリー」という言葉を再発見してよかった。この小説も心理の小説なのだ。この小説の構造自体はシンプルだ。埼玉県にある巨大ショッピングモール「スワン」で無差別銃撃…

君に読ませたいミステリがあるんだ

東川篤哉氏の君に読ませたいミステリがあるんだを読んだ。三度目の恋ヶ窪学園を舞台にしたミステリーだ。だが、今回は探偵部ではなく、第二文芸部が舞台になっている。第二文芸部とは何か?実践的な活動を本分とし、最終的にはプロとして作家デビューをする…

果てしなき輝きの果てに

リズ・ムーアの果てしなき輝きの果てに(原題 LONG BRIGHT RIVER)を読んだ。この作品は北上ラジオの第18回で紹介されていた。www.youtube.comハヤカワポケットミステリーなので、長い小説だ。480ページで、しかも上下2段組。なので、読み始める前は、読み終え…

恋に至る病

斜線堂有紀氏の恋に至る病を読んだ。私も詳しくは知らないが「青いクジラ」をモチーフとした作品だ。Blue Whale Challengeはロシア発祥とされ、参加者を自殺に導いたと言われている。本書では「青いクジラ」というサイトは青い蝶(ブルーモルフォ)と名前を変…

これはミステリではない

竹本健治氏のこれはミステリではないを読んだ。相変わらずトリッキーな作品だ。宝条大学のミステリクラブは大学が保有する保養所で例年合宿を開いていた。保養所は深い森に囲まれた湖の小島にポツン建っており(といっても島は孤立しているわけではなく、細長…

博士を殺した数式

ノヴァ・ジェイコブスの博士を殺した数式(原題 The Last Equation of Issac Severy)を読んだ。本の裏表紙には「祖父の死の真相に迫る暗号謎解きミステリー」となっており、その祖父が天才数学者という設定なのだから、さぞかし面白い暗号が作りこまれていて…

ベーシックインカム

井上真偽氏のベーシックインカムを読んだ。テクノロジーを題材にした日常のミステリーの短編集。5編収録されており、それぞれのタイトルは「言の葉の子ら」、「存在しないゼロ」、「もう一度、君と」、「目に見えない愛情を」、「ベーシックインカム」となっ…

キリオン・スレイの敗北と逆襲

都筑道夫氏のキリオン・スレイの敗北と逆襲を読んだ。キリオン・スレイシリーズの最終巻で、初めての長編作品。キリオン・スレイもいつの間にか日本を離れて、ニューヨークに帰っており、しかも音信不通になっているので、その消息を知る者は誰もいなかった…

国語教師

ユーディト・W・タシュラーの国語教師(原題 Die Deutschlehrerin)を読んだ。タイトルの国語教師とはマティルダ・カミングスキーのことだ。彼女はインスブルックの女子校で国語教師をしている。彼女の勤める聖ウルスラ女子ギムナジウムが「生徒と作家のワーク…