隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

あなたには、殺せません

石持浅海氏のあなたには、殺せませんを読んだ。本作は短編連作倒叙ミステリーで、犯罪予備者の駆け込み寺とうわさされるNPOが舞台になっている。そこの1番の相談室は殺人を考えてる犯罪予備者に割り当てられていて、相談員が誰をなぜ殺したいのかを聞く。そして、犯罪者として警察に捕まることもいとはないかも聞く。たいていは犯罪者となることにはためらいがあるので、警察には捕まりたくないという。そうすると相談員は、どのように殺したいのかを質問するのだ。そうして、相談者の計画の杜撰さや穴をことごとく指摘し、警察に捕まらず殺すのは無理だと納得してもらい、ご帰宅してもらえれば、めでたしめでたしなのだが、相談者は相談することで、殺人計画をブラッシュアップし、結局は犯罪を実行してしまうのだ。さて、その結果はというのが本作の共通したストーリーの骨格だ。

収録されているのは「五線紙の殺意」、「夫の罪と妻の罪」、「ねじれた位置の殺人」、「かなり具体的な提案」、「完璧な計画」。この中で殺人がうまくいくのは「五線紙の殺意」だけで、あとは色々ひねっている。とくに「ねじれた位置の殺人」がひねっていて、一番面白かった。あらすじを説明するとネタバレになるので、書きにくいが、最後の最後ところであっという展開になる。当たり前だが、人がどのように思っているか・考えているかはわからないものだ。