隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

2024-01-01から1年間の記事一覧

鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折

春日太一氏の鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折を読んだ。橋本忍という脚本家の名前は知っていたが、実は知っていたのは名前といくつかの黒澤作品で脚本を書いていたということだけで、これほど日本映画に深くかかわった人だということは全く知ら…

戦国女刑事

横関大氏の戦国女刑事を読んだ。「警察というのは女社会であり、女尊男卑の風潮が色濃く残っている」と書かれていて、これだけでバカミスだというのが濃厚に漂ってくる。しかも、タイトルが「戦国女刑事」で、登場人物は戦国時代の武将のような名前を持ち、…

化学の授業をはじめます。

ボニー・ガルマスの化学の授業をはじめます。(原題 LESSONS IN CHEMISTRY)を読んだ。どこかの書評で、「テレビの料理番組で調理を化学の授業の様に進める」というような文章を見て、興味を惹かれて読んだ。確かに、本文中にそのような記述は出てくる。その部…

キュリー夫人と娘たち-二十世紀を切り開いた母娘

クロディーヌ・モンテイユのキュリー夫人と娘たち-二十世紀を切り開いた母娘 (原題 MARIE CURIE ET SES FILLES)を読んだ。日本語のタイトルは「キュリー夫人」になっているが、原題はMarie Curieになっていて、Madam Curieではない。本当にキュリー夫人とい…

さやかに星はきらめき

村山早紀氏のさやかに星はきらめきを読んだ。この連作短編集には5作収められているが、ジャンルとしては御伽噺に近いファンタジーのようなものだった。今から数百年未来の月が舞台で、その頃は地球は気候変動とか戦争により生物の棲めない惑星になっていた。…

蒼天の鳥

三上幸四郎氏の蒼天の鳥を読んだ。本作は第69回江戸川乱歩賞受賞作だ。この方の名前に全然見覚えはなかったが、テレビドラマやアニメに脚本を執筆してきた方のようだ。小説としては新人なのだろうが、執筆のキャリアが無いわけではないようだ。本作は実在の…

奥州狼狩奉行始末

東圭一氏の奥州狼狩奉行始末を読んだ。本書は東北にある架空の藩が舞台の時代小説で、その藩は馬の産地として有名であった。藩の牧の馬が狼に襲われることがあり、そのために狼狩りという役職がその藩にはあった。物語は序章帰路から始まるのだが、その序章…

ぎんなみ商店街の事件簿

井上真偽氏のぎんなみ商店街の事件簿を読んだ。実はこの本は2冊になっていて、一方がbrother編、もう一方がSister編になっている。それぞれの本には3編ずつ収録されており、実は同じ事件を別々の角度から見た物語になっているのだ。Brother編には「桜幽霊と…

「意思決定」の科学 なぜ、それを選ぶのか

川越敏司氏の「意思決定」の科学 なぜ、それを選ぶのかを読んだ。本書はジョン・フォン・ノイマンとオスカー・モルゲンシュタインの「ゲームの理論と経済行動」から発展した意思決定理論に関して平易に解説した本である。何かを選択するときに、合理的に(あ…

紫式部と藤原道長

倉本一宏先生の紫式部と藤原道長を読んだ。2024年のNHK大河ドラマは紫式部が主人公なので、その関連本の一つだろう。倉本先生はドラマの時代考証もしている。本書はタイトルが紫式部と藤原道長で、二人は同時代の人だが、一体いつどのように出会ったのかが不…

Q

呉勝浩氏のQを読んだ。ミステリーだと勝手に思って読み始めたのだが、ミステリーではなかった。では、どのようなジャンルの小説かというと一言では言い表せない。ロク、ハチ、キュウという血のつながらない姉妹弟がストーリーの中心だ。彼らの父親の町谷重和…

アメリカは内戦に向かうのか

バーバラ・F・ウォルターのアメリカは内戦に向かうのか (原題 HOW CIVIL WARS START AND HOW TO STOP THEM)を読んだ。日本語のタイトルよりは英語の原題の方がこの本の内容をよく表していると思う。どんな状況になったら内戦が起きやすいのかということをま…

なぜ世界はそう見えるのか:主観と知覚の科学

デニス・プロフィット、ドレイク・ベアーのなぜ世界はそう見えるのか:主観と知覚の科学 (原題 PERCEPTION HOW OUR BODIES SHAPE OUR MINDS)を読んだ。「人は見たいものを見る」と言われるけれど、この本を読むと「人は見たいように見る」というのがより適切…

奏で手のヌフレツン

酉島伝法氏の奏で手のヌフレツンを読んだ。ちょっと形容しがたい作品だ。我々とは似て非なる世界が舞台のSFなのだが、単に世界というより違う宇宙の物語ととらえた方がいいのかもしれない。我々が知っているような原理はこの宇宙には適応できないような気が…

素敵な圧迫

呉勝浩氏の素敵な圧迫を読んだ。この本は短編集で、「素敵な圧迫」、「ミリオンダラー・レイン」、「論リー・チャップリン」、「パノラマ・マシン」、「ダニエル・《ハングマン》・ジャービスの処刑について」、「Vに奉げる行進」の6編が収められている。全…

父がしたこと

青山文平氏の父がしたことを読んだ。タイトルが「父がしたこと」なので、物語の重要なポイントで父が何かをしたのだろうというのは想像がついたのだが、それが過去に行ったことなのか、それとも物語が進行する中で起きることなのか、全くわからない状況で最…

植物の形には意味がある

園池公毅氏の植物の形には意味があるを読んだ。この本はタイトルそのままで、植物の形態がなぜそのようになっているのかを思考実験で考えてみようという本だ。 葉が平らで、表が緑、裏が白い理由 植物の葉というのは大体平らで、表は濃い緑色、裏はうっすら…

都筑道夫創訳ミステリ集成

都筑道夫氏の都筑道夫創訳ミステリ集成を読んだ。「創訳」という聞きなれない言葉がタイトルに入っているが、一昔前(すでに二昔ぐらい前か?)なら超訳とい言葉が使われていたことを覚えている人もいるだろう。この本に収録されているのは児童向けに翻訳した…

反知性主義

森本あんり氏の反知性主義を読んだ。「反知性主義」という言葉自体はいつの頃からか目にしたり、耳にしたりすることがあった。その意味するところも、この言葉から科学的な知識や知見に反した行動や言動することを指すのだろうと漠然と思っていた。なぜその…

あなたには、殺せません

石持浅海氏のあなたには、殺せませんを読んだ。本作は短編連作倒叙ミステリーで、犯罪予備者の駆け込み寺とうわさされるNPOが舞台になっている。そこの1番の相談室は殺人を考えてる犯罪予備者に割り当てられていて、相談員が誰をなぜ殺したいのかを聞く。そ…

九月と七月の姉妹

デイジー・ジョンソンの九月と七月の姉妹(原題 Sisters)を読んだ。姉は9月に生まれたのでセプテンバーと呼ばれ、妹は10か月後の7月に生まれたのでジュライと呼ばれた。姉は我が強く、妹を支配して、従属させていた。妹は内気で、姉の支配を受け入れていた。…

地雷グリコ

青崎有吾氏の地雷グリコを読んだ。このタイトルからはどんな内容化想像するのはちょっと難しいと思う。女子高生の射守矢いもりや真兎まとは見た目は脱力系・無気力系なのだが、滅法ゲームに強い。そのゲームも単純に運が作用するようなゲームではなく、確実…

ちぎれた鎖と光の切れ端

荒木あかね氏のちぎれた鎖と光の切れ端を読んだ。本書は二部構成になっていて、第一部は倒叙的な記述になっており、友人グループで孤島のコテージに宿泊するメンバーの中に、仲間を殺そうとしている男が紛れ込んでいるというストーリーになっている。その男…

夜に星を放つ

窪美澄氏の夜に星を放つを読んだ。星に関係する小説だと思ったので読んだのだが、直接的には星には関係なく、各話に星にまつわることが織り込まれている短編集だった。収録されているのは「真夜中のアボカド」、「銀紙色のアンタレス」、「真珠星スピカ」、…

呪いを解く者

フランシス・ハーディングの呪いを解く者 (原題 UNRAVELLER)を読んだ。この物語はラディスという架空の国が舞台のファンタジーだ。ラディスには<原野ワイルズ>と呼ばれる霧に包まれた森が隣接しており、そこには不思議な力を持つ生き物が暮らしている。特…

家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊

磯田道史先生の家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊を読んだ。本書は250年以上続いた徳川政権がなぜ滅びたのかを、徳川家康がどのように滅びないように仕掛けをしたかを説明しながら、解説した本だ。そして、徳川幕府崩壊後の明治についても、何が変わ…

『源氏物語』の時間表現

吉海直人氏の『源氏物語』の時間表現を読んだ。この本の内容は序章からかなり衝撃的だった。何が衝撃的だったかというと、平安時代は時間的な日付変更が午前三時に起きていたということだ。つまり、午前3時を超えた時点で、新しい一日が始まるというのだ。こ…