隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

歴史

城割の作法: 一国一城への道程

福田千鶴氏の城割の作法: 一国一城への道程を読んだ。城割という言葉にはなじみがなかったが、この本のタイトルから多分城を破却することだろうという想像は付いた。著者によると城を壊す作法には「破るわる」と「捨るたたむ・畳むたたむ」の違いがあり、そ…

平氏―公家の盛衰、武家の興亡

倉本一宏先生の平氏―公家の盛衰、武家の興亡を読んだ。本書には平氏の誕生の経緯から平清盛一族滅亡後の平氏についてまで詳細に書かれている。平清盛一族が滅亡しても、公家の平氏の一部は都で生き残り、明治の代まで続いていた。 平氏の誕生 桓武天皇の第三…

ストーンヘンジ ――巨石文化の歴史と謎

山田英春氏のストーンヘンジ ――巨石文化の歴史と謎を読んだ。ストーンヘンジはイギリスのウェールズのソールズベリーにある遺跡で、何とも不思議な存在だ。私は1997年の7月に訪れたことがある。本書によると、現在一般の見学者は遺跡内に入れず、離れた見学…

宮廷女性の戦国史

神田裕理氏の宮廷女性の戦国史を読んだ。本書はだいたい室町期から江戸時代にはいる辺りまでの時代の宮廷に出仕していた女性に関する本(彼女らの身分とか役割など)なのだが、最初のプロローグにかなり衝撃的なことが書かれている。それは14世紀の南北朝から1…

キュリー夫人と娘たち-二十世紀を切り開いた母娘

クロディーヌ・モンテイユのキュリー夫人と娘たち-二十世紀を切り開いた母娘 (原題 MARIE CURIE ET SES FILLES)を読んだ。日本語のタイトルは「キュリー夫人」になっているが、原題はMarie Curieになっていて、Madam Curieではない。本当にキュリー夫人とい…

紫式部と藤原道長

倉本一宏先生の紫式部と藤原道長を読んだ。2024年のNHK大河ドラマは紫式部が主人公なので、その関連本の一つだろう。倉本先生はドラマの時代考証もしている。本書はタイトルが紫式部と藤原道長で、二人は同時代の人だが、一体いつどのように出会ったのかが不…

反知性主義

森本あんり氏の反知性主義を読んだ。「反知性主義」という言葉自体はいつの頃からか目にしたり、耳にしたりすることがあった。その意味するところも、この言葉から科学的な知識や知見に反した行動や言動することを指すのだろうと漠然と思っていた。なぜその…

家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊

磯田道史先生の家康の誤算 「神君の仕組み」の創造と崩壊を読んだ。本書は250年以上続いた徳川政権がなぜ滅びたのかを、徳川家康がどのように滅びないように仕掛けをしたかを説明しながら、解説した本だ。そして、徳川幕府崩壊後の明治についても、何が変わ…

『源氏物語』の時間表現

吉海直人氏の『源氏物語』の時間表現を読んだ。この本の内容は序章からかなり衝撃的だった。何が衝撃的だったかというと、平安時代は時間的な日付変更が午前三時に起きていたということだ。つまり、午前3時を超えた時点で、新しい一日が始まるというのだ。こ…

中世イングランドの日常生活: 生活必需品から食事、医療、仕事、治安まで

トニ・マウントの中世イングランドの日常生活: 生活必需品から食事、医療、仕事、治安まで (原題 How to Survive in Medieval England) を読んだ。本書はタイムトラベルが可能になり、中世のイングランドに行ったときに不便にならないようにするためのガイド…

読み書きの日本史

八鍬友広氏の読み書きの日本史を読んだ。本書は読み書きの実践がどのように行われてきたのかという事を解説した本である。文字の成立から、文字がどのように教えられてきたのかという事を明治時代までの時間軸で概説している。 寺子屋という名称 江戸時代の…

江戸の宇宙論

池内了氏の江戸の宇宙論を読んだ。本書は志筑忠雄(筑の字の凡が卂になっているのが正しい字体)と山片蟠桃についての評伝である。山片蟠桃は名前になんとなく記憶があったが、志筑忠雄には全然記憶がなかった。しかし、志筑忠雄は鎖国論を翻訳した元オランダ…

科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで

三田一郎氏の科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまでを読んだ。この本も若干本のタイトルと内容が一致していないという印象を受けた。少なくとも科学者と言われている人たちがなぜ神を信じるのかに関して明確には主張している文書等は存…

明暦の大火: 「都市改造」という神話

岩本馨氏の明暦の大火: 「都市改造」という神話を読んだ。明暦の大火は明暦三年正月十八日から二十日にかけて発生した。これを西暦に変換すると1657年3月2から4日となり、江戸幕府が開けてから約半世紀後の早春に起きた火災であることがわかる。この大火災の…

一八世紀の秘密外交史:ロシア専制の起源

カール・マルクスの一八世紀の秘密外交史:ロシア専制の起源(原題 Secret Diplomatic History of the Eighteenth Century)を読んだ。マルクスといえば資本論を思い浮かべるが、今までどの本も読んだことがなかった。この本も今の一連のロシアの状況に刺激を…

戦争とオカルティズム 現人神天皇と神憑り軍人

藤巻一保氏の戦争とオカルティズム 現人神天皇と神憑り軍人を読んだ。以前読んだ建国神話の社会史-虚偽と史実の境界 - 隠居日録と対になる内容で、こちらの本は建国神話を国に蔓延させ、押し付けた軍人に関して書かれている。建国神話などは普通の感覚ではあ…

「木」から辿る人類史: ヒトの進化と繁栄の秘密に迫る

ローランド・エノスの「木」から辿る人類史: ヒトの進化と繁栄の秘密に迫る (原題 The Age of Wood: Our Most Useful Material and the construction of Civilization)を読んだ。本書はわれわれヒトと木がどれほど密接に関係しいるかという事を解説している…

一冊でわかるドイツ史

関眞興氏の一冊でわかるドイツ史を読んだ。文明交錯 - 隠居日録に神聖ローマ帝国の皇帝が出ていて、そういえば神聖ローマ帝国とはどいういきさつでできたのかもうすっかり忘れていることに気付いた。神聖ローマ帝国といえばハプスブルク家で、文明交錯でも登…

江戸の女子旅―旅はみじかし歩けよ乙女―

谷釜尋徳氏の江戸の女子旅―旅はみじかし歩けよ乙女―を読んだ。この現代的なタイトルを見て、「江戸時代に若い女性だけの旅はないだろう。どんなことが書かれているのだろう?」と思って、読んで見た。このタイトルはミスリードだ。著者にはそのような意図が…

シンクロニシティ 科学と非科学の間に

ポール・ハルパーンのシンクロニシティ 科学と非科学の間に (原題 SYNCHORNICITY)を読んだ。synchronicityという英単語の意味は同時性とか同時発生というような意味だが、この本では「意味のある偶然の一致」を意味している。本書で出てくる例としては、「都…

アウシュビッツ潜入記

ヴィトルト・ピレツキのアウシュビッツ潜入記を読んだ。昨年の8月11日にNHK BS1でBS世界のドキュメンタリー「アウシュビッツに潜入した男」というのを放送していた。www.nhk.or.jpこの番組を見るまで、ヴィトルト・ピレツキのことは全く知らなかった。それに…

ソ連を崩壊させた男、エリツィン 帝国崩壊からロシア再生への激動史

下斗米伸夫氏のソ連を崩壊させた男、エリツィン 帝国崩壊からロシア再生への激動史を読んだ。昨年あたりからロシア発のニュースにたびたびする登場オリガルヒ(本書の中ではオリガルフと表記されている)は新興財閥と説明されることが多いが、いったい彼らはど…

ボマーマフィアと東京大空襲 精密爆撃の理想はなぜ潰えたか

マルコム・グラッドウェルのボマーマフィアと東京大空襲 精密爆撃の理想はなぜ潰えたか (原題 THE BOMBER MAFIA)を読んだ。以前NHK BSプレミアムで放送されていた映像の世紀プレミアムで太平洋戦争時の東京空襲に触れている回があり、その中で、「米軍は当初…

コード・ガールズ――日独の暗号を解き明かした女性たち

ライザ・マンディのコード・ガールズ――日独の暗号を解き明かした女性たち (原題 CODE GIRLS The Untold story of American Women Code Breakers of Wold War II)を読んだ。本書は暗号解読の役割を担った女性たちという切り口で第二次世界大戦中を描いている…

大聖堂・製鉄・水車―中世ヨーロッパのテクノロジー

ジョゼフ・ギース、フランシス・ギースの大聖堂・製鉄・水車―中世ヨーロッパのテクノロジー (原題 Cathedral, Forge, and Waterwheel Technology and Invention in the Middle Ages)を読んだ。読む前は、中世時代にヨーロッパで発明されたものに関する本だと…

南北戦争 アメリカを二つに裂いた内戦

小川寛大氏の南北戦争 アメリカを二つに裂いた内戦を読んだ。南北戦争に関しては中学か高校の世界史で学んだという記憶があるぐらいで、北部の州は奴隷解放、南部の州は奴隷制維持を掲げて戦ったという事ぐらいしか、記憶に残っていなかった。後年、アメリカ…

因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか

ジューディア・パール、 ダナ・マッケンジーの因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか(原題 The Book of Why The New Science of Cause and Effect)を読んだ。非常に興味深いのだが、残念ながら、この本の説明だけではよくわからないところも多々あっ…

氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか

尾脇秀和の氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのかを読んだ。本書は江戸時代まで使われていた人名の構成方法が、明治政府の誕生により捨て去られて、今の氏名という形式になった経緯が記されている。その前提として、江戸時代の後期の頃はどのように人…

一九三九年 誰も望まなかった戦争

フレデリック・テイラーの一九三九年 誰も望まなかった戦争 (原題 A People's History The War Nobody Wanted)を読んだ。本書は第二次世界大戦に至る英独開戦状況を、当時の新聞、日記、回想録あるいは実際のインタビューによって事細かに追っていった記録で…

数学の大統一に挑む

エドワード・フレンケルの数学の大統一に挑む (原題 Love and Math The Heart of Hidden Reality)を読んだ。エドワード・フレンケルは旧ソビエト出身の数学者で、現在はラングランズ・プログラムという数学の中の異なる分野間の概念にお互いに密接に関係して…