隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

揺籃の都

羽生飛鳥氏の揺籃の都を読んだ。これは蝶として死す - 隠居日録の第二作目で、今回の時間軸は治承4(11890)年の福原遷都の直後に巻き戻る。平頼盛は平清盛からある人探しを命じられた。それは源雅頼に仕える青侍で、この青侍が不吉な夢の噂を広めていることに…

アイダホ

エミリー・ラスコヴィッチのアイダホを読んだ。内容の分からない本を内容がわからないまま読むことはあるが、それは本の著者を知っている場合だ。その作者の作品ならば読むべきだろうという単純な思考だ。しかし、全く知らない著者の本はそうはいかず、少な…

標本作家

小川楽喜氏の標本作家を読んだ。何と表現したらいいのかわからない不思議な小説だ。色々なストーリーが詰め込まれていて、ちょっと整理しないとなかなか理解が追い付かず、これは読みにくい小説なのではないかと思った。読み終わった後も、これをどのように…

江戸の宇宙論

池内了氏の江戸の宇宙論を読んだ。本書は志筑忠雄(筑の字の凡が卂になっているのが正しい字体)と山片蟠桃についての評伝である。山片蟠桃は名前になんとなく記憶があったが、志筑忠雄には全然記憶がなかった。しかし、志筑忠雄は鎖国論を翻訳した元オランダ…

科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで

三田一郎氏の科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまでを読んだ。この本も若干本のタイトルと内容が一致していないという印象を受けた。少なくとも科学者と言われている人たちがなぜ神を信じるのかに関して明確には主張している文書等は存…

CF

吉村萬壱氏のCFを読んだ。罪の責任を取る必要がない「無化」を行ってくれる超巨大企業CFの物語。一体どのようにして無化するのかというのは、本書の中で説明されている。 二十一世紀の初頭、ルーマニアの頭脳集団「トランシルバニアの盾」に金の雨が降り(註 …

サーカスから来た執達吏

夕木春央氏のサーカスから来た執達吏を読んだ。タイトルの「執達吏しったつり」という言葉になじみがなく、何のことかと調べてみると、執行官の古い言い方の様なのだが、この小説においては借金取りの事を指している。表紙絵の真ん中に描かれているのがそう…

明暦の大火: 「都市改造」という神話

岩本馨氏の明暦の大火: 「都市改造」という神話を読んだ。明暦の大火は明暦三年正月十八日から二十日にかけて発生した。これを西暦に変換すると1657年3月2から4日となり、江戸幕府が開けてから約半世紀後の早春に起きた火災であることがわかる。この大火災の…

五色の殺人者

千田理緒氏の五色の殺人者を読んだ。高齢者向けの介護施設で利用者の老人が撲殺された。後で判明するのだが、廊下を走る犯人と思れる人物の姿を部屋の中から目撃した人々の証言は異なっていたのだ。犯人の服の色は「赤」、「緑」、「白」、「黒」、「青」と…