隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

2021-01-01から1年間の記事一覧

朝と夕の犯罪

降田天氏の朝と夕の犯罪を読んだ。この本もどこかで紹介を読んで面白そうだったので、読んだのだが、例によって、読もうと思った時と実際に読み始めた時の間が空いているので、内容に関してはどのようなものだか全然わからない状態で読み始めた。作者の名前…

黒人と白人の世界史

オレリア・ミシェルの黒人と白人の世界史――「人種」はいかにつくられてきたか (原題 Un monde en nègre et blanc)を読んだ。原題の意味するところは「黒と白の世界」で、日本語に翻訳すると直接的過ぎるような表現になっている。それからすると日本語のタイ…

世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論

カルロ・ロヴェッリの世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論 (原題 Helgoland)を読んだ。原題のHelgolandとは何か?Helgolandとはドイツにある島の名前で、北海上に浮かび、ハンブルグとかブレーメンから割と近いところにある。なぜこの島の名前…

空のあらゆる鳥を

チャーリー・ジェーン・アンダーズの空のあらゆる鳥を (原題 All Birds in the Sky)を読んだ。本書は2016年に刊行され、翌年ネビュラ賞長編部門、ローカス賞ファンタジー部門、クロフォード賞を受賞している。これだけの賞を受賞しているのだから、それなり…

暗闇にレンズ

高山羽根子氏の暗闇にレンズを読んだ。本書は一言でいうなら加納照に繋がる一族の物語だ。物語はSide Aで語られる現在とさほど遠くない時代の物語とSide Bで語られる加納照に繋がる一族の映像にかかわる物語が交互に現れる。ただし、Side Bには明治の頃から…

読書嫌いのための図書室案内

青谷真未氏の読書嫌いのための図書室案内を読んだ。表紙の裏のあらすじに「……その理由を探る浩二と蛍はやがて、三人の秘めた想いや昔学校で起きた自殺事件に直面し……」と書かれているので、ミステリーなのだろうかと思い読み始めたのだが、ミステリーという…

刀伊の入寇-平安時代、最大の対外危機

関幸彦氏の刀伊の入寇-平安時代、最大の対外危機を読んだ。平安時代に対外勢力からの侵略があったという事、そしてそれが「刀伊の入寇」と呼ばれていたという事は知っていたのだが、具体的な内容はよく知らなかった。更に、何かの小説で、事件があったのは時…

賭博常習者

園部晃三氏の賭博常習者を読んだ。この小説は北上ラジオの第39回で紹介されていた。ギャンブルに取りつかれた人間たちを描く自伝的長編小説『賭博常習者』園部晃三(講談社)を読むべし!【北上ラジオ#39】 - YouTubeタイトルがそのものずばりなのだが、この…

7.5グラムの奇跡

砥上裕將氏の7.5グラムの奇跡を読んだ。タイトルの7.5グラムとは何のことかというと、眼球の重さのことだ。この小説は目の検査に携わる視能訓練士の物語で、大学を卒業したての野宮恭一の成長物語でもある。私も定期的に眼科に通院していて、眼科で目の検査…

とにもかくにもごはん

小野寺史宜氏の とにもかくにもごはんを読んだ。この小説は北上ラジオの第35回で紹介されていた。最後2ページのどかーんを一緒に味わおう! 小野寺史宜の『とにもかくにもごはん』(講談社)を読むべし!【北上ラジオ#35】 - YouTubeタイトルに「ごはん」と…

荘園-墾田永年私財法から応仁の乱まで

伊藤俊一氏の荘園-墾田永年私財法から応仁の乱までを読んだ。この本を読む前は、荘園の始まりが墾田永年私財法からというのは分かっていたが、ではいつまで続いたのかというのはよくわかっていなかった。室町時代はまだあったのだろうが、戦国時代にはもうな…

感応グラン=ギニョル

空木春宵氏の感応グラン=ギニョルを読んだ。本書は短編集で、「感応グラン=ギニョル」、「地獄を縫い取る」、「メタモルフォシスの龍」、「徒花物語」、「Rampo Sicks」の5編が収録されている。これらの作品群は非常に昏い、ダークなイメージをまとっていて…

闇に用いる力学 青嵐篇

竹本健治氏の闇に用いる力学 青嵐篇を読んだ。闇に用いる力学3部作の最終巻だ。読み終わた時の率直な感想は「またしても竹本マジックが炸裂か!」というものだ。青嵐篇の中でもちらりと出てくるし、初版の赤気編のあとがきにも書かれているがテーマの一つは「…

闇に用いる力学 黄禍篇

竹本健治氏の闇に用いる力学 黄禍篇を読んだ。2巻目である黄禍篇でどういう物語なのかというのは分かったような気がする。ただ、まだ3巻目の青嵐編があるので、物語がどう転がるかは予断を許さない。この物語はメルド、ミュータイプ、ウバステリズムでできて…

闇に用いる力学 赤気篇

竹本健治氏の闇に用いる力学 赤気篇を読んだ。まさかこの「闇に用いる力学 赤気篇」が21世紀になって20年も経ってから刊行されるとは思わなかった。本書は初版も光文社から1997年に刊行されていて、あとがきで「続巻は書下ろしによって継続していく予定」と…

カミサマはそういない

深緑野分氏のカミサマはそういないを読んだ。本書は短編集で、「伊藤が消えた」、「潮風が吹いて、ゴンドラ揺れる」、「朔日晦日」、「見張り塔」、「ストーカーVS盗撮魔」、「饑奇譚」、「新しい音楽、海賊ラジオ」が収録されている。ミステリーの短編集だ…

廃遊園地の殺人

斜線堂有紀氏の廃遊園地の殺人を読んだ。X県Y市の天衝村に建設されたテーマパークのイリュジオランドはある事件がきっかけとなり、正式オープンされる前に閉園が決まってしまった。その事件とは地元住民を招いて開かれたプレオープンの時に銃乱射事件が発生…

百姓から見た戦国大名

黒田基樹氏の百姓から見た戦国大名を読んだ。災害や凶作が起きればなんとなく飢饉になると思っていたが、実はそうではなく、そのような事が起きた時に、人々が食料を獲得する能力が欠如しているとき、更に言えば、食料を獲得できない人々に食料が行き渡る社…

統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀

デイヴィッド・サルツブルグの統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀 (原題 The Lady Tasting Tea)を読んだ。以前統計の歴史 - 隠居日録を読んだのだが、思っていたような本ではなかったので、それらしい本はないかと探していて見つけたの…

密告者ステラ ~ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女

ピーター・ワイデンの密告者ステラ ~ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女(原題 Stella One Woman's True Tale of Evil, Betrayal, and Survival in Hitler's Germany)を読んだ。この本はタイトルにあるように密告者の物語で、第二次世界大戦中にベルリンに潜伏…

統計外事態

芝村裕吏氏の統計外事態を読んだ。 統計外事態という文字列を見て、どういう風に区切るのかちょっとよくわからなかった。知っている単語で見ていくと、「統計」「外事」「態」だ。そうすると、これは/統計/外事/態/と区切るのかとも思えるのだが、それだと意…

invert 城塚翡翠倒叙集

相沢沙呼氏のinvert 城塚翡翠倒叙集を読んだ。あの城塚翡翠の続編が出るとは思っていなかったので、かなり意外だった。というのも、前作の構成があまりにも見事で、あの構成を踏襲した形での続編は無理だと思ったからだ。なので、この作品はタイトルのように…

信長徹底解読 ここまでわかった本当の姿

信長徹底解読 ここまでわかった本当の姿を読んだ。織田信長と言えば日本の歴史上の武将でも有名な人物で、知らない人はいないだろう。しかし、実際の信長の行ったことと物語の中での信長とがなんとなく混然一体となっていて、どこまでが歴史としてわかってい…

冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか

管賀江留郎氏の冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのかを読んだ。この本の内容を一言でいうなら、「なぜ冤罪は起きるのか」という事なのだが、その部分に直接的に言及しているのは約600ページある本文中の13章の約90ページで、では他の約510ページは何に…

Numbers Don't Lie 世界のリアルは「数字」でつかめ!

バーツラフ・シュミル のNumbers Don't Lie 世界のリアルは「数字」でつかめ!(原題 Numbers Don't Lie 71 Things You Need to Know About the World)を読んだ。表紙の折り返しの所に「信頼できる数字とデーターで驚くべき事実を明らかにする。」と書かれてい…

絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている

左巻健男氏の絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできているを読んだ。タイトルに「化学入門」とついているが、入門書というよりは人類の歴史の中での化学的な発見とかその成果のエピソード集といった感じの本だ。すでに知っていることもあったが、知らない…

水よ踊れ

岩井圭也氏の水よ踊れを読んだ。この作品は北上ラジオの第34回で紹介されていた。迷っている場合ではない。岩井圭也の『水よ踊れ』を読むべし! 【おすすめ本/北上ラジオ#34】 - YouTube香港が中国に返還されて約四半世紀が経過した。この物語が始まるのは…

量子とはなんだろう 宇宙を支配する究極のしくみ

松浦壮氏の量子とはなんだろう 宇宙を支配する究極のしくみを読んだ。何冊か量子力学の本を読んできたが、未だに良くわかっていない。量子は粒子の性質と波の性質を併せ持っている(というか、そういう性質のあるものを量子と呼んでいる)のは分かるのだが、で…

日本神判史

清水克行氏の日本神判史を読んだ。有罪であるか無罪であるかを神に問い判決を下すのが神判であり、かってこの日本でもそのような事が行われていた。日本書紀にも竹内宿禰が「深湯」を行ったという記録があり、これ以外にも日本書紀に2件あるという。「深湯」…

西洋美術とレイシズム

岡田温司氏の西洋美術とレイシズムを読んだ。本書は、西洋美術、とりわけキリスト教美術とレイシズムは密接なつながりがあるという事を指摘した本だ。この本を読んで、実は美術だけにとどまらず、キリスト教自身がレイシズムと密接に関係があるのだろうと思…