高山羽根子氏の暗闇にレンズを読んだ。本書は一言でいうなら加納照に繋がる一族の物語だ。物語はSide Aで語られる現在とさほど遠くない時代の物語とSide Bで語られる加納照に繋がる一族の映像にかかわる物語が交互に現れる。ただし、Side Bには明治の頃からの加納照達の物語だけではなく、映像に関する歴史的な説明や挿話が差し込まれる場合もある。Side Aは二人の女子高生が作った映像作品にまつわるストーリーになっているが、その世界では今の我々の世界よりも監視カメラが至る所にあり、彼女らはその監視カメラをもスマートフォンで撮影して、自分達の映像作品に組み込んでいく。監視カメラのレンズをカメラでとらえるのだ。Side Bでは我々の知る歴史とはちょっと違うようなことも語られていて、特に兵器としての映像の話が興味深かった。どこかで、この映像兵器の話が膨らんでいって、Side Aにある監視カメラのような見ることによる攻撃と結びついていくのかと思ったのだが、それは単なる妄想だった。Side Aの時間とSide Bの時間はやがて近づいてくる。そして、Side Aの女子高生が誰なのかというのがわかるようになっている。それと、一番最初にあるのが何なのかも。それはある種ショッキングな部分でもある。
私としては「映像兵器」の部分がだんだん大きくなって、物語を乗っ取るのかと思いながら読んだので、ちょっと拍子抜けの感もあるのが正直な感想だ。