隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

読書

とてつもない失敗の世界史

トム・フィリップスのとてつもない失敗の世界史(原題 HUMANS A Brief History of How We F*cked It All Up)を読んだ。本書は我々人類が過去から未来にわたって犯してきた愚かしいミスをあげつらった本である。扱っている範囲は広範囲で、環境、外来種、独裁…

シルヴィーとブルーノ

ルイス・キャロルのシルヴィーとブルーノ (原題 Sylvie and Bruno)を読んだ。この物語はシルヴィーとブルーノという姉弟のストーリーと、私とその若き友アーサー・フォレスターのミリュエル嬢をめぐるストーリーが入れ子のように語られていく。シルヴィーと…

ドグラ・マグラ

夢野久作のドグラ・マグラを読んだ。この本を読むのも2回目で、1回目は多分1990年代の何時かがだったのだと思うが、正確には記憶していない。きっと、匣の中の失楽を読んで、虚無への供物を読んで、ドグラ・マグラを読んだのではないかと想像しているのだが…

四神の旗

馳星周氏の四神の旗を読んだ。 北上ラジオの第15回目で紹介されていた。 www.youtube.comこの小説は藤原不比等の4人の息子、武智麻呂、房前、宇合、麻呂と長屋王の対立を描いた小説で、いわゆる長屋王の変を扱っている。物語は藤原不比等がなくなったところ…

キリオン・スレイの再訪と直感

都筑道夫氏のキリオン・スレイの再訪と直感を読んだ。キリオン・スレイシリーズの短編集の最終巻だ。本書には六編収められており、それぞれのタイトルは「如雨露と綿菓子が死につながる」、「三角帽子が死につながる」、「下足札が死につながる」、「女達磨…

銀花の蔵

遠田潤子氏の銀花の蔵を読んだ。この作品は北上ラジオの第16回目で紹介されていた。 銀花は主人公の女性の名前で、蔵は醤油蔵を指している。序章は現在なのだが、1は1968年夏、銀花が10歳の頃に時が巻き戻る。その当時銀花は父の尚孝、母の美乃里と大阪の文…

人体、なんでそうなった?

ネイサン・レンツ の人体、なんでしょうなった?(原題 HUMAN ERRORS. A Panorama of Our Glitches, from Pointless Bones to Broken Genes)を読んだ。本書は我々の体にはいかに多くの欠陥があるかということを解説した本だ。本書ではたびたび「デザイン」と…

まち

小野寺史宜氏のまちを読んだ。これは北上ラジオの第11回で紹介されていた。 瞬一は東京に出ろ。東京に出て、よその世界を知れ。知って、人と交われ このようにじいちゃんに言われて、江藤瞬一は高校卒業と同時に東京に出た。大学に行くのもいいし、就職する…

四人組がいた。

高村薫氏の四人組がいた。を読んだ。タイトルに「。」がついているのも最近の流行りを取り入れたのだろうか。四人組というぐらいだから主要な登場人物は4人いる。元村長、元助役、郵便局長、キクエ小母さんの4人。元村長、元助役、キクエ小母の三人はどう見…

逆転のイギリス史 衰退しない国家

玉木俊明氏の逆転のイギリス史 衰退しない国家を読んだ。本書はイギリスの歴史について、特に経済の観点から記述した本なのだ。「逆転」とタイトルについているのは、世界の覇権がオランダからイギリスに移り変わっていたことをさしているのだろうが、その後…

夏の終わりに君が死ねば完璧だったから

斜線堂有紀氏の夏の終わりに君が死ねば完璧だったからを読んだ。いわゆる結核文学の一形態だと思うのだが、設定はちょっとひねっている。主人公は中学3年生の江都日向えとひなたは劣悪な家庭環境にいた。母親は家の近くにあるサナトリウムの反対運動をしてい…

へぼ侍

坂上泉氏のへぼ侍を読んだ。へぼ侍とは志方錬一郎の事である。志方家は三河以来の徳川家臣で、大阪東町奉行所の与力として数代前から大阪に土着していた。奉行所の御役目の傍ら、剣術の町道場を営み、武士や町人に指南している家柄であったが、幕末の時、錬…

キリオン・スレイの復活と死

都筑道夫氏のキリオン・スレイの復活と死を読んだ。キリオン・スレイシリーズの2冊目。本書には「ロープウエイの霊柩車」、「情事公開同盟」、「八階の次は一階」、「二二が死、二死が恥」、「なるほど犯人は俺だ」、「密室大安売り」、「キリオン・スレイの…

恋と禁忌の述語論理

井上真偽氏の恋と禁忌の述語論理を読んだ。本書は連作短編で、「スターアニスと命題論理」、「クロスノットと述語論理」、「トリプレッツと様相論理」の三つのミステリーと「恋と禁忌の……?」のおまけの4編が収録されている。本書はミステリーなのだが、そ…

嘘と正典

小川哲氏の嘘と正典を読んだ。本書は短編集で、「魔術師」、「ひとすじの光」、「時の扉」、「ムジカ・ムンダーナ」、「最後の不良」、「嘘と正典」の6編が収められている。巻末の初出一覧を見ると、最初の4編がSFマガジンで、「最後の不良」がPen、「嘘と正…

匣の中の失楽

竹本健治氏の匣の中の失楽を読んだ。この本を読むのは2回目で、最初に読んだ時からは多分25年以上は経過していると思う。なので、細部に関してはあまり覚えていなかったし、この本の仕掛けについても、間違って記憶していた。主要な登場人物は12人で、彼らは…

流れよわが涙、と孔明は言った

三方行成氏の流れよわが涙、と孔明は言ったを読んだ。本書はSF短編集で表題作の「流れよわが涙、と孔明は言った」、「折り紙食堂」、「走れメデス」、「闇」、「竜とダイアモンド」の5編が収められている。表題作は明らかにディックの「流れよ我が涙と、警官…

なめらかな世界と、その敵

伴名練氏のなめらかな世界と、その敵を読んだ。本書はSF短編集で、「なめらかな世界と、その敵」、「ゼロ年代の臨界点」、「美亜羽へ贈る拳銃」、「ホーリーアイアンメイデン」、「シンギュラリティ・ソヴィエト」、「ひかりより速く、ゆるやかに」の6編が収…

不連続殺人事件

坂口安吾の不連続殺人事件を読んだ。実際には創元推理文庫の日本探偵小説全集の坂口安吾集に収録されている作品を読んだ。この本をいつ購入したのかは正確に覚えていないが、多分30年ぐらい前ではないだろうか。買った当時も不連続殺人事件を読もうとしたの…

生命進化の物理法則

チャールズ・コケルの生命進化の物理法則(原題 The Equations of Life. The Hidden Rules Shaping Evolution)を読んだ。以前、生命の歴史は繰り返すのか?ー進化の偶然と必然のナゾに実験で挑むを読んだが、その本と対になるような本で、なぜ進化の収斂が起き…

時空旅行者の砂時計

方丈貴恵氏の時空旅行者の砂時計を読んだ。本作は第29回鮎川哲也賞を受賞した作品で、SF+ミステリーの構成をとっている。SFのところは主人公で探偵役となる加茂冬馬が不思議な声にいざなわれて過去の世界にタイムスリップするところなのだが、実はミステリー…

5分間SF

草上仁氏の5分間SFを読んだ。たぶん1980年代後半から1990年代の前半ぐらいには草上仁氏の作品をよく読んでいた気がする。軽いタッチのSF短編を量産していて、SFマガジンにもよく掲載されていたと記憶しているし、文庫本も早川書房から多数出ていたと記憶して…

キリオン・スレイの生活と推理

都筑道夫氏のキリオン・スレイの生活と推理を読んだ。手元にあるのは昭和53年第三版発行の文庫本で、42年前の本になる。amazonで検索してみても、再版されていないようで、絶版のようだ。実はこの本は最初に買った都筑氏の本だ。都筑氏の事は多分以前から知…

イブリン嬢は7回殺される

スチュアート・タートンのイヴリン嬢は七回殺される(原題 The Seven Deaths of Evelyn Hardcastle)を読んだ。気づいた時には「アナ」と叫んでいた。そこは森の中で、しとしとと雨が降っていた。自分が誰かもわからない。名前は?ここはどこだ?どこからここ…

「忠臣蔵」の決算書

山本博文先生の「忠臣蔵」の決算書を読んだ。本書では大石内蔵助が遺した「預置あずかりおき候そうろう金銀きんぎん請払帳うけはらいちょう」を基に元禄赤穂事件を考察している。この史料は討ち入りのために費やされた経費の入出金記録で、神奈川県箱根町に…

勝者なき戦争 世界戦争の200年

イアン・J. ビッカートンの勝者なき戦争 世界戦争の200年 (原題 The Illusion of Victory: The True Cost of War)を読んだ。本書の内容をを一言で表すならば、戦争による犠牲には、どのような観点から見ても、払うのに見合った価値を見出すことはできないと…

マネーの魔術史 支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのか

野口悠紀雄氏のマネーの魔術史 支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのかを読んだ。この本は貨幣の歴史についての本で、サブタイトルにあるように、いかにして支配者がその価値を水増ししたのかということの説明だ。金融緩和とは貨幣の量を増やすことを意味…

狐火の辻

竹本健治氏の狐火の辻を読んだ。湯河原のあたりで噂されている不思議な話・都市伝説の裏には実際に事件があったという感じのミステリーだ。最初の「序としての断章」にそれらの話が語られている。一つは森の奥の沼のそばに隠れ家があり、そこには黒いマント…

脳はあり合わせの材料から生まれた

ゲアリー マーカスの脳はあり合わせの材料から生まれた(原題 KLUGE The Haphazard Construction of the Human Mind)を読んだ。この本を読む前は、タイトルから、脳の進化に関して書かれているのだと思っていたのだが、実際は脳の進化の心理学側面(即ち進化心…

気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年 (2)「江戸時代」

田家康氏の気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年の後半。前半はこちら。 江戸時代 寛永の飢饉 寛永十三(1636)年から旱魃による凶作の記録が出てくる。寛永十五(1638)年から寛永十八(1641)年にかけて、畿内から西日本にかけて家畜牛の大量死が記…