隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

読書

幕末江戸と外国人

吉崎雅規氏の幕末江戸と外国人を読んだ。江戸時代にいつ頃から外国人が住んでいたのかに関しては正直なところよく知らなかった。安政五(1858)年六月十九日日米修好通商条約が結ばれるが、この条約の第一条に、 合衆国の大統領は江戸に居留するヂプロマチーキ…

統計の歴史

オリヴィエ・レイの統計の歴史(原題 Quand le monde s'est fait nombre)を読んだ。日本語のタイトルは統計の歴史となっているが、フランス語の原題は「世界が数になったら」という意味で、こちらの方が内容をよく表していると思う。というのも、統計に関して…

三体III 死神永生

劉慈欣氏の三体III 死神永生を読んだ。三体シリーズの最終巻だが、2巻目の最後があのような形で終わって、一体どいう展開になるのだろうと思って読み始めたのだが、最初に「時の外の過去」の部分があって、これも何かの仕掛けなのだろうと読み、その次がいき…

生命はデジタルでできている 情報から見た新しい生命像

田口善弘氏の生命はデジタルでできているを読んだ。本書はゲノムを情報処理装置に見立て、解説をしたものだ。 セントラルドクマ セントラルドクマとは基本原理とか中心教義として日本語に訳され、その意味するところはDNA→RNA→タンパクという順に情報が伝達…

中世ヨーロッパ ファクトとフィクション

ウィンストン・ブラックの中世ヨーロッパ ファクトとフィクション(原題 The Middle Ages: Facts and Fictions)を読んだ。この本が指摘するように、確かに「中世暗黒時代」というイメージは自分も持っていた。教会の権力が強大で何もかも支配して、一般民衆は…

麻薬と人間 100年の物語

ヨハン・ハリの麻薬と人間 100年の物語(原題 Chasing the Scream: The First and Last Days of the War on Drugs)を読んだ。この本に書かれていることは自分がなんとなく麻薬について理解していたことと全く違っていて、読み終わってもちょっと頭の整理がつ…

法の雨

下村敦史氏の法の雨を読んだ。検察が起訴した事件の有罪率は99.7%だ。しかし、高等検察庁の検事の大神は同じ判事から3度無罪を言い渡された。その裁判官は年間15件もの無罪判決を言い渡していて、無罪病判事と揶揄されていた。そして、更に次の担当の二審裁…

へんぶつ侍、江戸を走る

亀泉きょう氏のへんぶつ侍、江戸を走る。本作の主人公は明楽久兵衛で、将軍様の駕籠担ぎである御駕籠之者組に属する御家人なのだが、今でいうところのアイドルオタクで、深川芸者の愛乃に入れ込んでいる。なので組中の同輩からは変物と呼ばれている。今日も…

「違和感」の日本史

本郷和人先生の「違和感」の日本史を読んだ。本書は産経新聞に連載中の日本史ナナメ読みをまとめたもの。これを読んでいると、本郷先生色々とストレスが溜まっているのじゃないかと心配してしまうような記述がいくつかあった。それはそれとして、本書の中で…

新 謎解きはディナーのあとで

東川篤哉氏の新 謎解きはディナーのあとでを読んだ。警視庁国立署の刑事宝生麗子は実は巨大複合企業「宝生グループ」のご令嬢という設定の連作ミステリー。風祭モータースの御曹司である風祭警部の許事件解決に励むのだが、いい加減な風祭警部の推理が間違っ…

日本史の賢問愚問

中里裕司氏の日本史の賢問愚問を読んだ。本書は山川出版社の広報誌「歴史と地理」に連載されていた「賢問愚問」をまとめたものだ。 承平・天慶の乱 私が子供の頃は承平・天慶の乱と教わった記憶がかすかにあるのだが、最近はそのようには呼ばないで、天慶の…

アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿

澤村伊智氏のアウターQ 弱小Webマガジンの事件簿を読んだ。本書はWebマガジンの駆け出しライターの湾沢陸男が取材中に出くわした事件に関するミステリーだ。短編集で「笑う露死獣」、「歌うハンバーガー」、「飛ぶストーカーとアイドル」、「目覚める死者た…

脳男 新装版

首藤瓜於氏の脳男 新装版を読んだ。ブックキーパー脳男の始まりの物語。物語は愛宕市おたぎのどこかの廃工場に茶屋警部が急襲をかけるところから始まる。そこには連続爆弾犯人がアジトにしているはずなのだ。最初の爆弾の襲撃は愛宕市に七星建設が建てた新社…

約束の果て 黒と紫の国

高丘哲次氏の約束の果て 黒と紫の国を読んだ。この小説は南朱列国演義と歴世神王拾記と青銅器の物語。あるいは、梁親子から田辺親子に託された偽史と小説をめぐる物語だ。事の発端は伍州の南端で発掘された矢をかたどった装身具のような青銅器であった。それ…

クララとお日さま

カズオ・イシグロ氏のクララとお日さま(原題 KLARA AND THE SUN)を読んだ。知能を持った少女型のアンドロイドは太陽を信仰していた。アンドロイドのエネルギー源は太陽光なので、彼らは太陽を信頼するような志向をしていたが、クララと呼ばれたアンドロイド…

文学少女対数学少女

陸秋槎氏の文学少女対数学少女を読んだ。本書は雪が白いとき、かつそのときに限りの訳者あとがきに書かれていた、作者と同姓同名の女子高生が主人公のミステリーだ。私は中国人の名前に関しては全く詳しくないので、秋槎というのが女性向きの名前なのか、男…

泳ぐ者

青山文平氏の泳ぐ者を読んだ。本書は半席に登場した片岡直人を主人公とするミステリーで、前巻同様に事件の裏に潜む「なぜ」をあぶりだすのが物語の肝になっている。前巻は短編集だったが、本作は長編で、中に2つの「なぜ」が含まれている。一つ目は、六十歳…

宇宙の春

ケン リュウの宇宙の春を読んだ。本書は短編集だが、アメリカで出版された本を翻訳したというわけではなく、日本で収録作品を選定して出版したオリジナルの短編集のようだ。収録作品は「宇宙の春」、「マクスウェルの悪魔」、「ブックサイヴァ」、「思いと祈…

スキマワラシ

恩田陸氏のスキマワラシを読んだ。この作品は、「スキマワラシ」と「僕のアレの力」と「タイル」の物語だ。スキマワラシとは隙間童子のことだが、もっともこれは登場人物の纐纈太郎の造語だ。座敷童子は家に憑くものだ。一方スキマワラシは人と人の記憶の間…

ブックキーパー 脳男

首藤瓜於氏のブックキーパー 脳男を読んだ。本作は北上ラジオ33回で紹介されていた。www.youtube.comうーむ。またしてもシリーズ物の紹介だ。本作は脳男のタイトルがついている先行作品が二作あり、本作は三作目だ。 だが、前二作を読んでいなくても十分内容…

いのちがけ 加賀百万石の礎

砂原浩太朗氏のいのちがけ 加賀百万石の礎を読んだ。本書は前田家家臣の村井長頼の一代記だ。物語は連作長編という形式をとっており、壱之帖、弐之帖、参之帖の3部に分かれており、それぞれに2編、3編、3編の短編が収められている。一代記なので、当然扱う時…

歴史を変えた10の薬

トーマス・ヘイガーの歴史を変えた10の薬 (原題 TEN DRUGS)を読んだ。本書は著者の選定基準に基づいて歴史上の薬から10個を掘り下げて、その開発の歴史をまとめたものだ。 天然痘と人痘・牛痘 天然痘とといえばかっては恐ろしい伝染病で、致死率の高さと、仮…

日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年

田口俊樹氏の日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年を読んだ。この本は北上ラジオの第32回で紹介されていた。 www.youtube.com田口氏の名前は昔聞いたラジオに出演していたので記憶にあった。どこかにその時の録音が残っているだろうと外付けハードディスク…

詐欺師は天使の顔をして

斜線堂有紀氏の詐欺師は天使の顔をしてを読んだ。本書は特殊状況ミステリーだ。2つの中編のミステリーが収録されている。子規冴昼は一世を風靡した霊能力者だったが、突然失踪してしまった。マネージャーの呉塚要も八方手を尽くして探したが、その行方は杳と…

レストラン「ドイツ亭」

アネッテ・ヘスのレストラン「ドイツ亭」(原題 DEUTSCHES HAUS)を読んだ。本書はフランクフルト・アウシュビッツ裁判をテーマにしたフィクションで、1963年ドイツのフランクフルトで開かれたムルカ等の裁判に偶然ポーランド語の通訳として参加することになっ…

戯作屋伴内捕物ばなし

稲葉一広氏の戯作屋伴内捕物ばなしを読んだ。本書は時代小説とミステリーを融合したハヤカワ時代ミステリ文庫でハヤカワ文庫JAの中のサブカテゴリなのだと思う。2019年の夏から刊行を開始しているようだ。本書の主人公は戯作者(本人は戯作屋と称しているが)…

エデュケーション 大学は私の人生を変えた

タラ・ウェストーバーのエデュケーション 大学は私の人生を変えた (原題 Educated A Memoir)を読んだ。この本の内容は衝撃的だった。そして、不謹慎にも非常に面白かった。なぜ、不謹慎かというと、英語の原題にあるようにこの本は回顧録だからで、記憶の齟…

父を撃った12の銃弾

ハンナ・ティンティの父を撃った12の銃弾 (原題 THE TWELVE LIVES OF SAMUEL HAWLEY)を読んだ。本書は北上ラジオ第31回で紹介されていた。www.youtube.com帯にある「少女と父と銃と今は亡き母の物語」という言葉がが本書を一番よく表していると思う。少女は…

ピエタとトランジ <完全版>

藤野可織氏のピエタとトランジ を読んだ。ピエタがトランジと巡り合ったのは、彼女たちが17歳の時だった。ピエタの通っていた高校にトランジが転校してきたのだ。この物語は、それからの二人の物語だ。ピエタもトランジもニックネームで、本名がそのような音…

高瀬庄左衛門御留書

砂原浩太朗氏の高瀬庄左衛門御留書を読んだ。本書は北上ラジオの第28回で紹介されていた。www.youtube.com高瀬庄左衛門は神山藩の郡方に勤める下級武士で、隠居はしていないが、息子の啓一郎は藩校での成績が優秀だったため、同じく郡方に取り立てられいた。…