隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

読書

純喫茶「一服堂」の四季

東川篤哉氏の純喫茶「一服堂」の四季を読んだ。本書は短編集で、4編収録されたおり、「春の十字架」、「もっとも猟奇的な夏」、「ひり取られた死体の秋」、「バラバラ死体と密室の冬」がそれぞれのタイトルだ。この作品は一服堂という純喫茶を父親から譲り受…

二人の嘘

一雫ライオン氏の 二人の嘘を読んだ。この本は北上次郎氏が本の雑誌で紹介していて、「目が離せない」、「前三作を急いで買ってきて、これから読むところである」と書いていたので、気になった本だ。www.webdoku.jp片陵礼子が以前判決を起案して、実刑を受け…

殺した夫が帰ってきました

桜井美奈氏の殺した夫が帰ってきましたを読んだ。これはまさにタイトル通りの導入から始まる物語だ。鈴倉茉奈は取引先の男からストーカのような付きまといにあい、その男は住んでいるアパートまで押しかけてきた。そこに割って入ってきたのが、殺したはずの…

子供は怖い夢を見る

宇佐美まこと氏の子供は怖い夢を見るを読んだ。この本は表紙のデザインを見ると暗い感じだし、「怖い夢」というようなタイトルがついているのでホラー小説であるような印象を与える。しかし、読みだすと、小説のテーマは貧困とか、児童虐待・いじめとか、新…

底惚れ

青山文平氏の底惚れを読んだ。読み始めてすぐ、「これは読んだことがあるぞ」と強烈な既視感に襲われた。もう一度タイトルを見た。出版日も見直した。最近出版された本だ。しかし、このストーリーは「江戸染まぬ」じゃないか。でも、短編ではない。どうやら…

君の顔では泣けない

君嶋彼方氏の君の顔では泣けないを読んだ。本書は北上ラジオの第37回で紹介されていた。www.youtube.com男女の心が入れ替わった物語だ。そして、入れ替わったまま元に戻らず、15年が経過したところから物語が始まっている。事の発端は、15歳の高校一年の時、…

朝と夕の犯罪

降田天氏の朝と夕の犯罪を読んだ。この本もどこかで紹介を読んで面白そうだったので、読んだのだが、例によって、読もうと思った時と実際に読み始めた時の間が空いているので、内容に関してはどのようなものだか全然わからない状態で読み始めた。作者の名前…

黒人と白人の世界史

オレリア・ミシェルの黒人と白人の世界史――「人種」はいかにつくられてきたか (原題 Un monde en nègre et blanc)を読んだ。原題の意味するところは「黒と白の世界」で、日本語に翻訳すると直接的過ぎるような表現になっている。それからすると日本語のタイ…

世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論

カルロ・ロヴェッリの世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論 (原題 Helgoland)を読んだ。原題のHelgolandとは何か?Helgolandとはドイツにある島の名前で、北海上に浮かび、ハンブルグとかブレーメンから割と近いところにある。なぜこの島の名前…

空のあらゆる鳥を

チャーリー・ジェーン・アンダーズの空のあらゆる鳥を (原題 All Birds in the Sky)を読んだ。本書は2016年に刊行され、翌年ネビュラ賞長編部門、ローカス賞ファンタジー部門、クロフォード賞を受賞している。これだけの賞を受賞しているのだから、それなり…

暗闇にレンズ

高山羽根子氏の暗闇にレンズを読んだ。本書は一言でいうなら加納照に繋がる一族の物語だ。物語はSide Aで語られる現在とさほど遠くない時代の物語とSide Bで語られる加納照に繋がる一族の映像にかかわる物語が交互に現れる。ただし、Side Bには明治の頃から…

読書嫌いのための図書室案内

青谷真未氏の読書嫌いのための図書室案内を読んだ。表紙の裏のあらすじに「……その理由を探る浩二と蛍はやがて、三人の秘めた想いや昔学校で起きた自殺事件に直面し……」と書かれているので、ミステリーなのだろうかと思い読み始めたのだが、ミステリーという…

刀伊の入寇-平安時代、最大の対外危機

関幸彦氏の刀伊の入寇-平安時代、最大の対外危機を読んだ。平安時代に対外勢力からの侵略があったという事、そしてそれが「刀伊の入寇」と呼ばれていたという事は知っていたのだが、具体的な内容はよく知らなかった。更に、何かの小説で、事件があったのは時…

賭博常習者

園部晃三氏の賭博常習者を読んだ。この小説は北上ラジオの第39回で紹介されていた。www.youtube.comタイトルがそのものずばりなのだが、この本でいうところの賭博は競馬だ。本書の主人公のコウスケは一族が博労で、叔父が牧場を営んでいて、競走馬も飼育して…

7.5グラムの奇跡

砥上裕將氏の7.5グラムの奇跡を読んだ。タイトルの7.5グラムとは何のことかというと、眼球の重さのことだ。この小説は目の検査に携わる視能訓練士の物語で、大学を卒業したての野宮恭一の成長物語でもある。私も定期的に眼科に通院していて、眼科で目の検査…

とにもかくにもごはん

小野寺史宜氏の とにもかくにもごはんを読んだ。この小説は北上ラジオの第35回で紹介されていた。www.youtube.comタイトルに「ごはん」とあるように、あることがきっかけで子ども食堂を開いた松井波子の物語から始まる短編連作小説だ。この小説の構成はちょ…

荘園-墾田永年私財法から応仁の乱まで

伊藤俊一氏の荘園-墾田永年私財法から応仁の乱までを読んだ。この本を読む前は、荘園の始まりが墾田永年私財法からというのは分かっていたが、ではいつまで続いたのかというのはよくわかっていなかった。室町時代はまだあったのだろうが、戦国時代にはもうな…

感応グラン=ギニョル

空木春宵氏の感応グラン=ギニョルを読んだ。本書は短編集で、「感応グラン=ギニョル」、「地獄を縫い取る」、「メタモルフォシスの龍」、「徒花物語」、「Rampo Sicks」の5編が収録されている。これらの作品群は非常に昏い、ダークなイメージをまとっていて…

闇に用いる力学 青嵐篇

竹本健治氏の闇に用いる力学 青嵐篇を読んだ。闇に用いる力学3部作の最終巻だ。読み終わた時の率直な感想は「またしても竹本マジックが炸裂か!」というものだ。青嵐篇の中でもちらりと出てくるし、初版の赤気編のあとがきにも書かれているがテーマの一つは「…

闇に用いる力学 黄禍篇

竹本健治氏の闇に用いる力学 黄禍篇を読んだ。2巻目である黄禍篇でどういう物語なのかというのは分かったような気がする。ただ、まだ3巻目の青嵐編があるので、物語がどう転がるかは予断を許さない。この物語はメルド、ミュータイプ、ウバステリズムでできて…

闇に用いる力学 赤気篇

竹本健治氏の闇に用いる力学 赤気篇を読んだ。まさかこの「闇に用いる力学 赤気篇」が21世紀になって20年も経ってから刊行されるとは思わなかった。本書は初版も光文社から1997年に刊行されていて、あとがきで「続巻は書下ろしによって継続していく予定」と…

カミサマはそういない

深緑野分氏のカミサマはそういないを読んだ。本書は短編集で、「伊藤が消えた」、「潮風が吹いて、ゴンドラ揺れる」、「朔日晦日」、「見張り塔」、「ストーカーVS盗撮魔」、「饑奇譚」、「新しい音楽、海賊ラジオ」が収録されている。ミステリーの短編集だ…

廃遊園地の殺人

斜線堂有紀氏の廃遊園地の殺人を読んだ。X県Y市の天衝村に建設されたテーマパークのイリュジオランドはある事件がきっかけとなり、正式オープンされる前に閉園が決まってしまった。その事件とは地元住民を招いて開かれたプレオープンの時に銃乱射事件が発生…

百姓から見た戦国大名

黒田基樹氏の百姓から見た戦国大名を読んだ。災害や凶作が起きればなんとなく飢饉になると思っていたが、実はそうではなく、そのような事が起きた時に、人々が食料を獲得する能力が欠如しているとき、更に言えば、食料を獲得できない人々に食料が行き渡る社…

統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀

デイヴィッド・サルツブルグの統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀 (原題 The Lady Tasting Tea)を読んだ。以前統計の歴史 - 隠居日録を読んだのだが、思っていたような本ではなかったので、それらしい本はないかと探していて見つけたの…

密告者ステラ ~ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女

ピーター・ワイデンの密告者ステラ ~ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女(原題 Stella One Woman's True Tale of Evil, Betrayal, and Survival in Hitler's Germany)を読んだ。この本はタイトルにあるように密告者の物語で、第二次世界大戦中にベルリンに潜伏…

統計外事態

芝村裕吏氏の統計外事態を読んだ。 統計外事態という文字列を見て、どういう風に区切るのかちょっとよくわからなかった。知っている単語で見ていくと、「統計」「外事」「態」だ。そうすると、これは/統計/外事/態/と区切るのかとも思えるのだが、それだと意…

invert 城塚翡翠倒叙集

相沢沙呼氏のinvert 城塚翡翠倒叙集を読んだ。あの城塚翡翠の続編が出るとは思っていなかったので、かなり意外だった。というのも、前作の構成があまりにも見事で、あの構成を踏襲した形での続編は無理だと思ったからだ。なので、この作品はタイトルのように…

信長徹底解読 ここまでわかった本当の姿

信長徹底解読 ここまでわかった本当の姿を読んだ。織田信長と言えば日本の歴史上の武将でも有名な人物で、知らない人はいないだろう。しかし、実際の信長の行ったことと物語の中での信長とがなんとなく混然一体となっていて、どこまでが歴史としてわかってい…

冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか

管賀江留郎氏の冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのかを読んだ。この本の内容を一言でいうなら、「なぜ冤罪は起きるのか」という事なのだが、その部分に直接的に言及しているのは約600ページある本文中の13章の約90ページで、では他の約510ページは何に…