隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

読書

夜の都

山吹静吽氏の夜の都 を読んだ。何とも言えない不思議な小説だった。大正時代に父と義母とともに日本にやって来た14歳の少女ライラは、父の仕事の間保養地のホテルで過ごすことになった。ホテルの近くにある古い祠に迷い込んだライラは、岩窟の中にある岩井戸…

かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖

宮内悠介氏のかくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖を読んだ。この作品は連作短編ミステリーで、著者自身が第一話の覚書で明かしているように、アイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」の形式を明治時代の実在の芸術家のパンの会に当てはめている。メイ…

銀河の片隅で科学夜話 物理学者が語る、すばらしく不思議で美しい この世界の小さな驚異

全卓樹氏の銀河の片隅で科学夜話を読んだ。ジャンルとしては科学エッセイで、平易な文章で書かれていて、非常に読みやすい。この中で特に印象に残ったのは第13夜に出てきた「ガラム理論」だ。ガラム理論とはフランスの理論物理学者のセルジュク・ガラムが、…

密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック

鴨崎暖炉氏の密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリックを読んだ。本書は、 「密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある」 という事が裁判所により認定された世界での密室を扱ったミステリーだ。そういう意味ではある種の特殊な世界でのミステリ…

九つの物語

サリンジャーの九つの物語 (原題 Nine Stories)を読んだ。TVアニメ 攻殻機動隊SACのcomplexエピソードは通称「笑い男事件」を扱っている。そして、第9話、第20話で事件とサリンジャーの小説の関連性が指摘されている。特に第20話の中では、草薙素子に「確か…

名探偵と海の悪魔

スチュアート・タートンの名探偵と海の悪魔を読んだ。タートンは非常にトリッキーな「イブリン嬢は7回殺される」でデビューした作家で、本作は第2作目だ。「イブリン嬢は7回殺される」と比べると「名探偵と海の悪魔」はオーソドックスなつくりになっていて、…

ガラスの顔

フランシス・ハーディングのガラスの顔 (原題 A Face Like Glass)を読んだ。今度の物語の舞台は地底都市カヴェルナで、全くの架空の世界で展開するファンタジーになっている。地底世界に住んでいる住人は自然な顔の表情というものがなく、作られた表情を覚え…

幕末社会

須田努氏の幕末社会を読んだ。どの年代からを幕末と呼ぶかはいろいろ意見はあるだろうが、著者は天保時代からを幕末ととらえていて、本書では天保時代から取り上げている。いわゆる幕末も1868年に近づけば近づくほど、とてつもなく色々な出来事が起こってき…

鎌倉公方と関東管領 (対決の東国史 4)

植田真平氏の鎌倉公方と関東管領を読んだ。本書は対決の東国史シリーズの一冊で、室町時代の中頃までを鎌倉公方と関東管領という切り口で解説した本だ。 鎌倉公方・関東管領 鎌倉公方と言えば、室町時代にも鎌倉に駐在し、関東に睨みを利かせていた室町幕府…

スタッフロール

深緑野分氏のスタッフロールを読んだ。タイトルから想像できるように今回は映画の話で、ミステリーでもSFでもファンタジーでもない。物語は2部構成になっていて、第一部のマチルダ・パートは第二次世界大戦後の1948年アメリカで始まる。主人公はマチルダ・セ…

ヒトはなぜ戦争をするのか?―アインシュタインとフロイトの往復書簡

アインシュタインとフロイトの往復書簡 ヒトはなぜ戦争をするのか?を読んだ。 講談社のサイトにこの本の紹介があって、興味を持ったので読んでみた。「人はなぜ戦争をするのか」アインシュタインとフロイトが話し合った「壮大な問題」(講談社学術文庫) @ge…

八月の母

早見和真氏の八月の母を読んだ。この小説は北上ラジオの第44回で紹介されていた。www.youtube.com「八月は母の匂いがする。八月は血の匂いがする」というようなプロローグから始まるこの小説はかなり不穏な感じがした。北上ラジオで紹介されているように、恵…

戦争プロパガンダ 10の法則

アンヌ・モレリの戦争プロパガンダ 10の法則(原題 Principes élémentaires propagande de guerrel)を読んだ。本書は1928年にロンドンで出版されたアーサー・ポンソンビーの「戦争の嘘」に書かれている戦争のプロパガンダの10項目の法則について、著者のモレ…

Babel IV 言葉を乱せし旅の終わり

古宮九時氏のBabel IV 言葉を乱せし旅の終わりを読んだ。このシリーズの最終巻で、なぜこの大陸には共通言語があるのか、なぜ異世界から迷い込んできた雫は言葉に不自由しなかったのかの謎が解き明かされている。それだけではなく、Babel Iから登場していた…

Babel III 鳥籠より出ずる妖姫

古宮九時氏のBabel III 鳥籠より出ずる妖姫を読んだ。前巻の最後で雫は誰かに拉致されたところで終わっていたのだが、拉致された先はファルサスの隣国のキスクで、そこで雫は謎の病の治療をすることになったのだ。その病はその世界の話し言葉と深く関係して…

Babel II 魔法大国からの断罪

古宮九時氏のBabel II 魔法大国からの断罪を読んだ。前巻の終わりでどこかわからない場所に転移してしまった雫とエリクだったが、彼らが辿り着いたのは大陸のほぼ西側で、大陸の東の方から目的地のファルサス王国を飛び越えてしまった。ファルサス自体は大陸…

Babel I 少女は言葉の旅に出る

古宮九時氏のBabel I 少女は言葉の旅に出るを読んだ。本書は、女子大生の水瀬雫が真夏の暑い日に道を歩いていると、黒い影のようなものが合わられて、何だろうと不思議に思っていると、その影の中に吸い込まれて、気づいてた異世界にいたことから始まるファ…

ハーバード日本史教室

佐藤智恵氏のハーバード日本史教室を読んだ。ハーバード大学で日本史がどのように教えられているのかが具体的に書かれている(使用するテキストとか、どのような議論がなされるのかなど)本なのかと思って、読みだしたのだが、実際にはハーバード大学において…

津田梅子 科学への道、大学の夢

古川安氏の津田梅子 科学への道、大学の夢 を読んだ。以前から不思議に思っていたのだが、明治政府は5人の少女をアメリカ留学に送り出したが、これは明治政府の中の誰の案なのだろう?どういう組織がかかわっていたのだろう?そして、その目的あるいは期待し…

時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙

ブライアン・グリーンの時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙(原題 Until the End of Time Mind, Matter and Our Search for Meaning in Evolving Universe)を読んだ。物理学者ブライアン・グリーンが生命誕生から宇宙の終焉までを解説する。本書…

蝶として死す

羽生飛鳥氏の蝶として死す 平家物語推理抄を読んだ。時代は平安末期の頃で、いわゆる平家が台頭し滅んでいく頃である。池殿流平家の頼盛を主人公にして、頼盛に降りかかってくる難題を何とか知恵でかわしていくというミステリーが本書の概略だ。頼盛は清盛の…

サーキット・スィッチャー

安野貴博氏のサーキット・スィッチャーを読んだ。本書は第9回ハヤカワSFコンテストの優秀賞受賞作だ。物語の時代設定は2029年で、近未来という事になる。その時代にはレベル5の完全自動運転が実用化されており、その自動運転のアルゴリズムの開発ベンチャー…

北緯43度のコールドケース

伏尾美紀氏の北緯43度のコールドケースを読んだ。本作は第67回江戸川乱歩賞受賞作である。物語の舞台は札幌の警察であり、タイトルに「コールドケース」とついているように未解決事件を扱ったミステリーだ。物語は取り壊されることになっていた倉庫で少女の…

ロボットには尻尾がない

ヘンリー・カットナーの ロボットには尻尾がない (原題 Robots Have No Tails)を読んだ。アル中の発明家ギャロウェイ・ギャラガーが酔っ払っている時にとてつもないものを発明して、それにまつわるトラブルに悩まされるというSF調のドタバトコメディー。ギャ…

AI監獄ウイグル

ジェフリー・ケインのAI監獄ウイグル (原題 The Perfect Police State)を読んだ。数年前から新疆ウイグル自治区で行われていると言われている著しい人権侵害について書かれている本だ。色々な所から入ってくる情報を見ていて、なんとなくわかっているつもり…

黛家の兄弟

砂原浩太朗氏の 黛家の兄弟を読んだ。架空の神山藩を舞台にした時代小説。時代は宝暦の頃の事と思われる。タイトルにある黛家は神山藩で筆頭家老を勤める家系の家柄で、栄之丞、壮十郎、新三郎の三兄弟がいた。その藩の次席家老の漆原家の娘が藩主の側室にな…

進化の技法――転用と盗用と争いの40億年

ニール・シュービンの進化の技法――転用と盗用と争いの40億年 (原題 SOME ASSEMBLY REQUIRED: Decoding Four Billion Years of Life, from Ancient Fossils to DNA)を読んだ。本書は生命の大進化が起きる仕組みを、生命科学の発見の歴史と絡めて解説した本だ…

深層学習の原理に迫る 数学の挑戦

今泉允聡氏の深層学習の原理に迫る 数学の挑戦を読んだ。本書は深層学習がなぜ既存のニューラルネットワークに比べて高い性能が出るのかについて解説している。数学的側面から解説はしているが、難しい数式は殆ど出てこない。 多層の理由 普遍近似定理で「層…

同志少女よ敵を撃て

逢坂冬馬の同志少女よ敵を撃てを読んだ。本書は第11回アガサ・クリスティー賞受賞作で、北上ラジオの第40回で紹介されていた。www.youtube.comアガサ・クリスティー賞というのが存在しているのも知らなかったし、それがもう10回以上の続いていることも知らな…

らんたん

柚木麻子氏のランタンを読んだ。恵泉女学園の創始者である河井道の物語。明治・大正・昭和と非常に長い時間を描いている物語で、全く財力も資金もない女性が学校を創設し、育てていく様を、色々な人物との交流を通して描いている。多数の実在の人物が登場し…