隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

読書

元年春之祭

陸秋槎氏の元年春之祭を読んだ。現代中国人作家の書いたミステリーというのが私にとっては非常に新鮮だった。本文中に多数引用されている中国古典に関しては全く知識がなく、ちょっと読みにくい感じなのだが、ミステリーとしては謎を解くには中国古典の知識…

歌うカタツムリ――進化とらせんの物語

千葉聡氏の歌うカタツムリ――進化とらせんの物語を読んだ。本書の第一章は以下の文章で始まる。 歴史とカタツムリはよく似ている。どちらも繰り返す。そして螺旋を描く。 本書はダーウィンの進化論がその後どのような変遷をとげてきたかをカタツムリを軸にし…

巨神覚醒

シルヴァン・ヌーヴェルの巨神覚醒を読んだ。本作は巨神計画 - 隠居日録の続編で、前作から9年経った所から物語が始まっている。前作で発掘された巨大ロボットはテーミスと名付けられ、国連に所属する地球防衛組織EDCに所属することになっていた。9年間に何…

ダンデライオン

中田永一氏のダンデライオンを読んだ。ミステリーの分類になっているようだが、どちらかというとSFだと思う。もちろん、ミステリー要素もあるのだが、それは主ではなく従ではないかというのが読後の感想だ。物語は1999年と2019年が一人の男の中で交差するこ…

朱漆の壁に血がしたたる

都筑道夫氏の朱漆の壁に血がしたたるを読んだ。本書は物部太郎シリーズの第三作目で、最終作だ。著者がなぜこのシリーズを継続しなかったのかはわからないが、この物部太郎シリーズは当時都筑氏が提唱していた「謎と論理のアクロバット」を実践するために書…

“身売り”の日本史―人身売買から年季奉公へ

下重清氏の “身売り”の日本史―人身売買から年季奉公へを読んだ。サブタイトルにあるように日本における人身売買に関する研究だ。 人身売買と法律 売買される対象は古くは奴婢であったり、戦闘による人取りあったりしたようだ。この場合の人取りは戦闘員だけ…

機械カニバリズム 人間なきあとの人類学へ

久保明教氏の機械カニバリズム 人間なきあとの人類学へを読んだ。読後の感想は、どうもタイトルが分かりにくく、内容とかみ合っていないような印象を受けたというものだ。ここでいうカニバリズムとは南米で行われている食人習慣だが、ヴィヴィエイロス・デ・…

大江戸商い白書――数量分析が解き明かす商人の真実

山室恭子氏の大江戸商い白書――数量分析が解き明かす商人の真実を読んだ。ここで報告されている分析はなかなか興味深い研究だ。江戸時代の文書・史料は偏って残っているので、わかることと分からないことの差が大きい。この研究はその差を何とか埋めようとす…

眼球堂の殺人

周木律氏の眼球堂の殺人を読んだ。眼球堂とは天才的な建築家である驫木煬がや家屋に建設した私邸だ。その屋敷に招待されたのが放浪の天才数学者十和田只人、そしてストーカーのように十和田にまとわりついき、半ば強引に同行してきたルポライターの陸奥藍子…

納屋を焼く

村上春樹氏の納屋を焼くを読んだ。2018年の年末にNHKでバーニングというドラマをやっていて、見るとはなしに見たのだが、さっぱり訳が分からなかった。www6.nhk.or.jp (以下内容に触れるので)

院政とは何だったか

岡野友彦氏の院政とは何だったかを読んだ。本書のタイトルは「院政とは何だったか」となっているが、まず論じられているのが荘園についてだ。この荘園についての説明が私が今まで理解にしてたものとは違っていて、非常に興味深く、今まで全く間違って理解し…

ライオンは仔猫に夢中 ~平塚おんな探偵の事件簿3~

東川篤哉氏のライオンは仔猫に夢中を読んだ。本書は平塚おんな探偵の事件簿シリーズの第三弾。前回と同様に探偵のエルザと助手の美伽のコンビが事件を解決していく。今回も短編集で4作収録されている。最後の「あの夏の面影」は書き下ろし作品。 失われた靴…

ライオンの歌が聞こえる 平塚おんな探偵の事件簿2

東川篤哉氏のライオンの歌が聞こえるを読んだ。本書は平塚おんな探偵の事件簿シリーズの第二弾。前回と同様に探偵のエルザと助手の美伽のコンビが事件を解決していく。今回も短編集で4作収録されている。この回の各話のタイトルはそのものズバリ物語を言い表…

ライオンの棲む街 平塚おんな探偵の事件簿1

東川篤哉氏のライオンの棲む街(平塚おんな探偵の事件簿シリーズ)を読んだ。生野エルザと川島美伽の探偵コンビのシリーズの第一弾。川島美伽は東京でOLをしていたのだが、仕事に疲れ、恋に破れ、貯金を持っていかれた挙句、なぜか不況下に会社を退職した27歳…

未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか

未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすかを読んだ。大野和基氏がジャレド・ダイアモンド、 ユヴァル・ノア・ハラリ、 リンダ・グラットン、 ダニエル・コーエン、 ニック・ボストロム、 ウィリアム・J・ペリー、 ネル・アーヴィン・ペインター、 ジョーン・C・…

室町無頼

垣根涼介氏の室町無頼を読んだ。タイトルにあるように時代は室町時代で、舞台は京都。そこに集まってきた男たちの物語だ。本書は500ページを超える大作で、ストーリはゆっくりと進行していく。主人公は才蔵という17歳の少年で、赤松家牢人だった父親が亡くな…

アルテミス

アンディ・ウィアーのアルテミス(原題 ARTEMIS)を読んだ。火星の人の作者の第二作目で、火星の人は未読だが、映画「オデッセイ」は金曜ロードショウで放送された時見て、面白いと思った。ただ、「オデッセイ」は最初は食料のことで困っていたはずなのに、芋…

戦乱と民衆

戦乱と民衆を読んだ。この本は2017年10月に行われた国際日本文化研究センターの一般公開シンポジウム「日本史の戦乱と民衆」の内容をまとめた本で、倉本一宏、呉座勇一、フレデリック・クレインス、磯田道史の各氏が講演した内容と、講演後に行われた一般公…

侍の本分

佐藤雅美氏の侍の本分を読んだ。本作は小説なのだろうと思って読み始めたのだが、小説というわけではなく、大久保彦左衛門が書き残した三河物語を、寛政年間に幕府が編纂した寛政重修諸家譜なども参照しながら、著者の視点で読み解くという構成になっている…

生物の「安定」と「不安定」 生命のダイミクスを探る

浅島誠氏の生物の「安定」と「不安定」 生命のダイミクスを探るを読んだ。本書にはゲノムに関する知見、細胞間のコミュニケーション、生命を維持するための恒常性、老化などについて書かれている。NHKブックスなので、一般向けの本だと思われるが、書かれて…

虫から死亡推定時刻はわかるのか?

三枝聖氏の虫から死亡推定時刻はわかるのか?を読んだ。本書を手に取る前には「法昆虫学」なるものがあることすら知らなかった。内容的には非常に面白いのだが、扱っている内容が内容だけに、読者を選ぶのかもしれない。ここで扱っているのは当然虫なのでが、…

コロンブスの不平等交換 作物・奴隷・疫病の世界史

山本紀夫氏のコロンブスの不平等交換を読んだ。勉強不足でコロンブスの交換という言葉を知らなかったのだが、最初に用いたのはアメリカの歴史学者のクロスビーが1972年に発表したThe Columbian Exchangeから広まったということだ。日本語ではコロンブスの交…

5まで数える

松崎有理氏の5まで数えるを読んだ。本作は短編集で、表題作の他に、「たとえわれ命死ぬとも」、「やつはアル・クシガイだ 疑似科学バスターズ」、「バスターズ・ライジング」、「砂漠」、「超耐水性日焼け止め開発の顛末」の6作が収められている。著者は2010…

精霊の箱 チューリングマシンをめぐる冒険

川添愛氏の精霊の箱 チューリングマシンをめぐる冒険を読んだ。これは白と黒のとびらの続編で、前作の登場人物が今作でも登場し、あたらな人物も登場してくる。今回のテーマはチューリングマシーンとなっているが、最後の所では暗号の話題も取り上げられてい…

白と黒のとびら オートマトンと形式言語をめぐる冒険

川添愛氏の白と黒のとびらを読んだ。これはサブタイトルがついて、そこには「オートマトン」と書かれている。そう、これはあの計算理論に出てくるあの「オートマトン」だ。この本も以前から読もうと思っていたのだが、後回しにしてしまい、なかなか読む機会…

データ分析の力 因果関係に迫る思考法

伊藤公一朗氏のデータ分析の力 因果関係に迫る思考法を読んだ。最近色々な本を読んでいて、因果関係の見極めの重要さ・難しさということを痛感しているのだが、本書はどのようにしてデータ解析して、因果関係を見極めるかということに関して書かれた、初心者…

非線形科学 同期する世界

蔵本由紀氏の非線形科学 同期する世界を読んだ。一見すると異なるリズムで動いているものが、互いに影響しあって、最終的には同期する現象がある。以下のyoutubeの動画は本書の中で紹介されていたものだが、この同期する現象を端的に表している。www.youtube…

秀吉の接待

二木謙一氏の秀吉の接待―毛利輝元上洛日記を読み解くを読んだ。この本を読む前にサブタイトルに「毛利輝元上洛日記を読み解く」に気付かず、秀吉側の視点に立った本だと思っていたのだが、実際はこのサブタイトルの通りで、毛利輝元側の視点に立った文書をも…

日本人の9割がやっている残念な習慣

日本人の9割がやっている残念な習慣を読んだ。タイトルは今時の風潮を反映してか煽り的なタイトルになっている。わずか200ページ足らずだし、字が大きいので1時間半もあれば読み終わると思う。残念ながらこれで初めて見たというものはあまりなかった(あった…

兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実

小川剛生氏の「兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実」を読んだ。言わずと知れた徒然草の作者であるが、記憶が正しければ、私の若いことは吉田兼好という風に呼ばれていたと記憶している。しかし、本書のタイトルは兼好法師だ。なぜなら、兼好法師と吉田は…