隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

読書

公家たちの幕末維新-ペリー来航から華族誕生へ

刑部芳則氏の公家たちの幕末維新を読んだ。幕末から明治維新、明治政府の成立過程を公家の視点から描写したのが本書である。 公家たちの秩序 序章として、公家たちの秩序、まず家格が説明されている。摂家とか清華家というのは色々なところで見聞きするが、…

ある男

平野啓一郎氏のある男を読んだ。本書は以前から読もうと思っていたのだが、北上ラジオの第二回目で取り上げられていた。 本の雑誌presents 北上ラジオ 第2回 - YouTube 恭一は、眉間に皺を寄せて、「ハ?」という顔をした。そして、もう一度写真に目を遣…

いやでも物理が面白くなる〈新版〉

志村史夫氏のいやでも物理が面白くなる〈新版〉を読んだ。本書は身近に存在する物理のテーマを光、電気、力・エネルギー、原子、時間・空間(相対性理論)の各テーマに沿って分類し、なぜそうなっているのかを分かりやすく解説している入門書である。本書のサ…

上皇の日本史

本郷和人先生の上皇の日本史を読んだ。本書では時それぞれの上皇のありようを大和時代の大王の時代から明治維新までのタイムスケールで解説している。 「地位」が先か、「人」が先か これはまえがきに書かれているのだが、日本においては「世襲」の概念が強…

超動く家にて 宮内悠介短編集

宮内悠介氏の超動く家にて 宮内悠介短編集を読んだ。これは単行本未収録作品の短編集で「トランジスタ技術の圧縮」、「文学部のこと」、「アニマとエーファ」、「今日泥棒」、「エターナル・レガシー」、「超動く家にて」、「夜間飛行」、「弥生の鯨」、「法…

隣のずこずこ

柿村将彦氏の隣のずこずこを読んだ。この本で語られている物語は民話のようだ。何の前触れもなく不思議なことが起こり、何の説明もなく物語は終息を迎え終わっていく。そこには何の教訓じみたこともない。怪異は怪異であり、それだけだ。舞台は関西地方のど…

映画術 その演出はなぜ心をつかむのか

塩田明彦監督の映画術 その演出はなぜ心をつかむのかを読んだ。本書は2012年に映画美術学校アクターズ・コースの学生向けに行われた講義を文書化して一冊にまとめたものだ。あとがきを読むと、塩田監督は当初「映画の演出」について講義しようと思っていたの…

平城京のごみ図鑑

平城京のごみ図鑑を読んだ。タイトルを見て、「おや?」と思って読み始めたのだが、今までにない視点が得られた。本のタイトルにある通り、この本で解説されているのは奈良時代の平城京についてである。 遺物の大量発掘はゴミ捨て場から 地面の下から過去の…

本と鍵の季節

米澤穂信氏の本と鍵の季節を読んだ。本作は、八王子にある高校の図書委員が主人公の日常のミステリーで、短編集になっている。収録されている各短編のタイトルは「913」(暗号)、「ロックオン」、「金曜日に彼は何をしたのか」(アリバイ)、「ない本」、「昔話…

文化戦争 - やわらかいプロパガンダがあなたを支配する -

ネイトー・トンプソンの文化戦争 - やわらかいプロパガンダがあなたを支配する - (原題 Culture As Weapon)を読んだ。本書は文化を用いた大衆掌握・操作に関してのレポートなのだが、扱っている範囲が広い分、掘り下げ度が若干浅く感じた。本書が主にアメリ…

カッコーの歌

フランシス・ハーディングのカッコーの歌(原題 Cuckoo Song)を読んだ。嘘の木 - 隠居日録が面白かったので、こちらの作品も読んでみたのだが、巻末の解説によると、カッコーの歌の方が本国では先に出版されていたということだ。主人公は十一歳の少女トリス(…

夜汐

東山彰良氏の夜汐を読んだ。朝日新聞の書評サイトで以下の記事を見かけた。幕末を西部劇のテイストで 東山彰良さん、初の歴史時代小説「夜汐」 |好書好日西部劇的な時代小説に興味を持って読み始めた。物語はいきなり賭博場の場面から始まる。時は幕末。イ…

数字を一つ思い浮かべろ

ジョン ヴァードンの数字を一つ思い浮かべろ (原題 Think of a number)を読んだ。退職した刑事デイブ・バーニーのもとに大学時代の同級生であるマーク・メレリーから不可解な謎が持ち込まれた。「1000までの数字を一つ思い浮かべろ」という手紙をメレリーは…

コップクラフト6

賀東招二氏のコップクラフト6を読んだ。太平洋に突如異世界から島が現れた世界での警察ドラマ。日本人のケイ・マトバと異世界からやってきた見た目は少女の準騎士ティラナ・エクセディクカのコンビのシリーズ第六作目だ。今回はA king maker (合意の形成者)…

コップクラフト5

賀東招二氏のコップクラフト5を読んだ。太平洋に突如異世界から島が現れた世界での警察ドラマ。日本人のケイ・マトバと異世界からやってきた見た目は少女の準騎士ティラナ・エクセディクカのコンビのシリーズ第五作目だ。今回はAlternative Soldiers (戦争の…

コップクラフト4

賀東招二氏のコップクラフト4を読んだ。太平洋に突如異世界から島が現れた世界での警察ドラマ。日本人のケイ・マトバと異世界からやってきた見た目は少女の準騎士ティラナ・エクセディクカのコンビのシリーズ第四作目だ。今回は長さ的には中編一作 Smells Li…

コップクラフト 3

賀東招二氏のコップクラフト3を読んだ。太平洋に突如異世界から島が現れた世界での警察ドラマ。日本人のケイ・マトバと異世界からやってきた見た目は少女の準騎士ティラナ・エクセディクカのコンビのシリーズ第三作目だ。今回は長編一編だけで、「Do the Rig…

コップクラフト2

賀東招二氏のコップクラフト2を読んだ。太平洋に突如異世界から島が現れた世界での警察ドラマ。日本人のケイ・マトバと異世界からやってきた見た目は少女の準騎士ティラナ・エクセディクカのコンビのシリーズ第二作目だ。本巻にはFirst Night (忙しい夜)とNe…

コップクラフト

賀東招二氏のコップクラフトを読んだ。現在からそんなに遠くない未来、太平洋に突如異世界から島が出現した。その島の名前はカリアエナ。この島だけではなく、その周辺には異世界に通じる超空間ゲートも出現した。そのゲートの向こうの異世界には人間だけで…

死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相

ドニー・アイカーの死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相(原題 Dead mountain)を読んだ。実はこの本が出版されるまで、この事件のこのこは全く知らなかった。事件は1959年の冷戦下のソビエトのウラル山脈で起きた。ウラル工科大学の大…

てらこや青義堂 師匠、走る

今村翔吾氏のてらこや青義堂 師匠、走るを読んだ。童の神 - 隠居日録が面白かったので、何の前知識なしにこの作品も読んでみた。タイトルから時代物で、人情ものなのだろうかと想像していたのだが、人情ものではなく、エンターテイメントというかアクション…

世界を売った男

陳浩基氏の世界を売った男(原題 遺忘・刑警)を読んだ。小説の冒頭は刑事が殺人事件の現場検証をしている場面から始まる。何者かが夫婦を刃物で殺害したようだった。死体は切り刻まれ血だまりができている。しかも、妻の方は妊娠中の様で、お腹の中には赤ちゃ…

ハロー・ワールド

藤井太洋氏のハロー・ワールドを読んだ。本書は連作短編集で、ITベンチャー企業エッジに勤める(ただし、4作目で休職し、5作目では辞めたことになっているのであろうと想像する)文椎泰弘(フズイヤスヒロ)が主人公の最近のIT関連のテーマを盛り込んだSFになっ…

クロストーク

コニー・ウィリスのクロストーク(原題 crosstalk)を読んだ。携帯電話開発会社のコムスパンに勤務するブリディは恋人のトレントに勧められて画期的な脳外科手術EEDを受けることにした。EED手術を受けたペアーはお互いの気持ちを感じることができると言われて…

拳銃使いの娘

ジョーダン・ハーパーの拳銃使いの娘 (原題 She rides shotgun)を読んだ。ネイト・マクラスキーは刑務所から出所すると同時にギャング組織から命を狙われることになった。都合が悪いことは、命を狙われエイルのはネイとだけではなく、元妻のエイヴィスと11歳…

パワー

ナオミ・オルダーマンのパワー(原題 The power)を読んだ。本書は歴史学者の二―ル・アダムス・アーモンが「大変動」の時に何が起こったのかをノベライズしたという体をした小説になっている。では「大変動」とは何か?それはある日突然女性たちが雷霆(いかず…

童の神

今村翔吾氏の童の神を読んだ。著者は童を以下のように説明している。 童とは大陸から入ってきた言葉で、「雑役者」や「僕」を意味する。家で身の回りの世話をする奴をそう呼称すると同時に、本来は朝廷に屈するべきと意味合いを込めて、化外の民をそのように…

私が大好きな小説家を殺すまで

斜線堂有紀氏の私が大好きな小説家を殺すまでを読んだ。前シリーズはミステリーだったが、本作はミステリーではなく、シリーズものの一冊でもない。 『憧れの相手が見る影もなく落ちぶれてしまったのを見て、「頼むから死んでくれ」と思うのが敬愛で「それで…

不意撃ち

辻原登氏の不意撃ちを読んだ。本書は短編集なのだが、物語が最後の所で不意撃ちに会い、ストーリーが大きく捻じ曲がるのが特徴と作品ばかりが収められている。もう一つの特徴は、現実に起きた事件などを物語の中に取り込むことで、現実と虚構がないまぜにな…

跳ぶ男

青山文平氏の跳ぶ男を読んだ。作者は文中に明確に年号は書いていないが、「本年、水野越前守忠邦が老中首座になった」と文章中に書いているので、天保十(1839)年物語の時間軸だと思われる。物語の舞台は藤戸藩。藤戸藩は台地の上にあるという特殊な土地柄で…