隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

読書

刀と傘

伊吹亜門氏の刀と傘を読んだ。これは連作短編のミステリーで、幕末から明治の最初の頃が舞台になっている。そして、一方の主人公が実在の人物である江藤新平で、もう一人の主人公が架空に人物と思われる尾張藩公用人の狩野師光である。この二人が探偵役なの…

諡-天皇の呼び名

野村朋弘氏の諡-天皇の呼び名を読んだ。よく天皇一覧に載っている○○天皇というのは、明治以降は別として、全て漢風諡号だと思っていた。ところがこれが全くの間違いだということに気付かされた。実はあれは漢風諡号と追号の組み合わせなのだ。上皇の日本史 -…

遺伝人類学入門

太田博樹氏の遺伝人類学入門を読んだ。人類学というのは聞いたことがあるが、遺伝人類学とは何だろう?と思って読み始めた。遺伝人類学を短く言うと、人類という集団を遺伝という観点から研究する分野のようだ。これも近年遺伝子の解析が高速化・低価格化し…

ニュートンのりんご、アインシュタインの神 -科学神話の虚実-

アルベルト・A・マルティネスのニュートンのりんご、アインシュタインの神 -科学神話の虚実- (原題 Science Secrets The Truth about Darwin's Finches, Einstein's Wife and Other Myths)を読んだ。本書は科学者や科学についいて巷間に流布していて半ば伝説…

郝景芳短篇集

郝景芳短篇集(原題 孤独深处)読んだ。「折りたたみ北京」でヒューゴ賞を受賞した郝景芳の短編集だ。ただ、「折りたたみ北京」はケン・リュウの英訳からの日本語訳というややこしい関係になっているが、本短編集に収録されているのは中国語から日本語の翻訳と…

ヒト夜の永い夢

柴田勝家氏のヒト夜の永い夢を読んだ。これは怪作(褒め言葉)だ。あーだ、こーだ書くと、かえって面白くなくなりそうでためらわれるのだが、何も書かないと一体何の話なのだということになってしまう。本の裏に書いてある慷慨程度は書いておくべきか?1927年…

ノースライト

横山秀夫氏のノースライトを読んだ。これは北上ラジオの第3回目で紹介されていた。本の雑誌 Presents 北上ラジオ 第3回 - YouTube横山秀夫氏というと警察小説で、主人公は捜査関係の刑事ではない警察職員というイメージがあったのだが、この小説はミステリ…

花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生

デイヴィッド グランの花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生(原題 Killers of the Flower Moon The Osage Murders and the Birth of the FBI)を読んだ。アメリカ先住民族はそれぞれの月に名前を付けた。5月はFlower Moonなので、本来は花月…

上方落語史観

高島幸次氏の上方落語史観を読んだ。本書は上方落語を切り口にして、幕末・明治の大阪の歴史・風土について解説した本である。

偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理

降田天氏の偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理を読んだ。これは短編集で、倒叙物のミステリーだ。ストーリーの前半は犯人によって物語が語られていくが、後半に入ると、神倉駅前交番に勤務する狩野雷太が登場して、犯人と狩野の対決(と言っても、話し好き…

カムパネルラ版 銀河鉄道の夜

長野まゆみ氏のカムパネルラ版 銀河鉄道の夜を読んだ。タイトルからカムパネルラを主人公にした銀河鉄道の旅の描き直しなのかと思って読んだのだが、これはむしろ小説いうよりも、宮沢賢治評であろう。その点はちょっと期待外れだった。本書には「カムパネル…

虚構推理短編集 岩永琴子の出現

城平京氏の虚構推理短編集 岩永琴子の出現を読んだ。前作を読んでから3年も経過しているので、前作の事はあまり記憶に残っていないのだが、前作を読んでいなくても、本作を読むのに問題はなかった。ストーリー的には完全に独立した短編集になっている。妖怪…

乗客ナンバー23の消失

セバスチャン フィツェックの乗客ナンバー23の消失(原題 PASSENGER 23)を読んだ。ドイツ人の潜入捜査官マルティン・シュヴァルツはある出来事をきっかけに、本当に命知らずの危険な任務に就いていた。そして、今回も危険な潜入捜査を終えたところに、見知ら…

土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話

デイビッド・モントゴメリーの土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話(原題 Growing a Revolution)を読んだ。生物の多様化が重要だとよく言われている。私はこの言葉の意味することをあまり深く考えず、半ば盲目的に正しいものとしていたのだが、本書…

忘却する戦後ヨーロッパ 内戦と独裁の過去を前に

飯田芳弘氏の忘却する戦後ヨーロッパを読んだ。イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞したときにNHKで再放送された「カズオ・イシグロ 文学白熱教室」を見た。 この番組はイシグロ氏が学生たちに自身の創作について語り、学生と討論する番組だったのだが、その中…

天地に燦たり

川越宗一氏の天地に燦たりを読んだ。時代は秀吉政権が全国を統一する直前から始まり、島津の琉球入りまでを描いている。本小説は三人の視点で物語が語られていく。一人は島津の侍で、大野七郎(後の樺山久高)だけが史実の人物であろうと思われる。彼は戦を厭…

凍てつく太陽

葉真中顕氏の凍てつく太陽を読んだ。時代は昭和十九年の年末、北海道の室蘭を舞台に小説は始まる。日崎八尋は身分を隠して、室蘭の軍需工場に人を派遣している飯場に潜り込んでいた。その飯場には朝鮮半島出身の労働者が犇めいてた。八尋は実は特高刑事であ…

公家たちの幕末維新-ペリー来航から華族誕生へ

刑部芳則氏の公家たちの幕末維新を読んだ。幕末から明治維新、明治政府の成立過程を公家の視点から描写したのが本書である。

ある男

平野啓一郎氏のある男を読んだ。本書は以前から読もうと思っていたのだが、北上ラジオの第二回目で取り上げられていた。 本の雑誌presents 北上ラジオ 第2回 - YouTube 恭一は、眉間に皺を寄せて、「ハ?」という顔をした。そして、もう一度写真に目を遣…

いやでも物理が面白くなる〈新版〉

志村史夫氏のいやでも物理が面白くなる〈新版〉を読んだ。本書は身近に存在する物理のテーマを光、電気、力・エネルギー、原子、時間・空間(相対性理論)の各テーマに沿って分類し、なぜそうなっているのかを分かりやすく解説している入門書である。本書のサ…

上皇の日本史

本郷和人先生の上皇の日本史を読んだ。本書では時それぞれの上皇のありようを大和時代の大王の時代から明治維新までのタイムスケールで解説している。

超動く家にて 宮内悠介短編集

宮内悠介氏の超動く家にて 宮内悠介短編集を読んだ。これは単行本未収録作品の短編集で「トランジスタ技術の圧縮」、「文学部のこと」、「アニマとエーファ」、「今日泥棒」、「エターナル・レガシー」、「超動く家にて」、「夜間飛行」、「弥生の鯨」、「法…

隣のずこずこ

柿村将彦氏の隣のずこずこを読んだ。この本で語られている物語は民話のようだ。何の前触れもなく不思議なことが起こり、何の説明もなく物語は終息を迎え終わっていく。そこには何の教訓じみたこともない。怪異は怪異であり、それだけだ。舞台は関西地方のど…

映画術 その演出はなぜ心をつかむのか

塩田明彦監督の映画術 その演出はなぜ心をつかむのかを読んだ。本書は2012年に映画美術学校アクターズ・コースの学生向けに行われた講義を文書化して一冊にまとめたものだ。あとがきを読むと、塩田監督は当初「映画の演出」について講義しようと思っていたの…

平城京のごみ図鑑

平城京のごみ図鑑を読んだ。タイトルを見て、「おや?」と思って読み始めたのだが、今までにない視点が得られた。本のタイトルにある通り、この本で解説されているのは奈良時代の平城京についてである。 遺物の大量発掘はゴミ捨て場から 地面の下から過去の…

本と鍵の季節

米澤穂信氏の本と鍵の季節を読んだ。本作は、八王子にある高校の図書委員が主人公の日常のミステリーで、短編集になっている。収録されている各短編のタイトルは「913」(暗号)、「ロックオン」、「金曜日に彼は何をしたのか」(アリバイ)、「ない本」、「昔話…

文化戦争 - やわらかいプロパガンダがあなたを支配する -

ネイトー・トンプソンの文化戦争 - やわらかいプロパガンダがあなたを支配する - (原題 Culture As Weapon)を読んだ。本書は文化を用いた大衆掌握・操作に関してのレポートなのだが、扱っている範囲が広い分、掘り下げ度が若干浅く感じた。本書が主にアメリ…

カッコーの歌

フランシス・ハーディングのカッコーの歌(原題 Cuckoo Song)を読んだ。嘘の木 - 隠居日録が面白かったので、こちらの作品も読んでみたのだが、巻末の解説によると、カッコーの歌の方が本国では先に出版されていたということだ。主人公は十一歳の少女トリス(…

夜汐

東山彰良氏の夜汐を読んだ。朝日新聞の書評サイトで以下の記事を見かけた。幕末を西部劇のテイストで 東山彰良さん、初の歴史時代小説「夜汐」 |好書好日西部劇的な時代小説に興味を持って読み始めた。物語はいきなり賭博場の場面から始まる。時は幕末。イ…

数字を一つ思い浮かべろ

ジョン ヴァードンの数字を一つ思い浮かべろ (原題 Think of a number)を読んだ。退職した刑事デイブ・バーニーのもとに大学時代の同級生であるマーク・メレリーから不可解な謎が持ち込まれた。「1000までの数字を一つ思い浮かべろ」という手紙をメレリーは…