隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

科捜研の砦

岩井圭也氏の科捜研の砦を読んだ。これは最後の鑑定人 - 隠居日録の2作目だが、時間軸が巻き戻って主人公の土門誠はまだ警視庁に勤務している頃の物語になっている。収録作品は「罪の花」、「路側帯の亡霊」、「見えない毒」、「神は殺さない」の4編。

本作の1話目の「罪の花」で土門は尾藤宏香に出会い、それが縁で4話目の「神は殺さない」で結婚することになっている。物語は尾藤宏香の視点で書かれていて、土門との結婚生活はかなり難しいことが書かれている。土門は不愛想だし、必要最低限のことも語っているかどうか怪しい男なので、意思疎通がすごく難しそうだ。たしか、一作目では元妻として登場しているので、結局別れてしまったということか。

この中では「見えない毒」がちょっと異色だと思った。土門は毒物の鑑定のためにある大学の研究室を訪れているのだが、研究室の女性講師の視点で物語は書かれているので、事件の捜査はメインではなさそうな感じがしていた。ではこの短編の謎は何なのだろうと思いながら読み進めて、後半のほうまで行って、そういう事かと納得がいった。ある種日常の謎的な展開の短編だった。