隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

時代小説

夜露がたり

砂原浩太朗氏の夜露がたりを読んだ。これは時代小説の短編集で、全体的にほろ苦い、あるいは純粋に苦い作品が多くて、最後の「妾の子」だけがなんとなくいい話風に終わっている。250ページぐらいの本に8編収録されているので、一編辺り30ページちょっとぐら…

奥州狼狩奉行始末

東圭一氏の奥州狼狩奉行始末を読んだ。本書は東北にある架空の藩が舞台の時代小説で、その藩は馬の産地として有名であった。藩の牧の馬が狼に襲われることがあり、そのために狼狩りという役職がその藩にはあった。物語は序章帰路から始まるのだが、その序章…

父がしたこと

青山文平氏の父がしたことを読んだ。タイトルが「父がしたこと」なので、物語の重要なポイントで父が何かをしたのだろうというのは想像がついたのだが、それが過去に行ったことなのか、それとも物語が進行する中で起きることなのか、全くわからない状況で最…

霜月記

砂原浩太朗氏の霜月記を読んだ。本作は架空の藩神山を舞台にした時代小説だ。主人公は弱冠十八歳の青年草壁総次郎。物語はその総次郎が遊里にある賢木という料亭を訪ねるところから始まる。実はこの料亭の離れに隠居した総次郎の祖父が5年前から住んでいるの…

虎と十字架 南部藩虎騒動

平谷美樹氏の虎と十字架 南部藩虎騒動を読んだ。まさにタイトルの通り「虎」と「十字架」の物語だった。慶長十二(1607)年南部利直は駿府の家康に拝謁し二匹の虎を下賜された。そのうちの一頭が寛永二(1625)年冬に死んだ。この時この小説にあるように虎が籠か…

十三夜の焔

月村了衛氏の十三夜の焔を読んだ。天明から天保へかけて50年以上の時間スケールで活写する時代小説。天保四(1784)年五月の十三夜の夜に幣原喬十郎は匕首を手にした男と側に倒れる男女を見た。倒れている男女は血に塗れていて、見るからに殺されたと思われた…

藩邸差配役日日控

砂原浩太朗氏の藩邸差配役日日控を読んだ。本書は神宮司藩の江戸屋敷で差配役の頭を勤める里村五郎兵衛が主人公の時代小説だ。神宮司藩も差配役も作者が考え出した架空の設定だ。差配役とはいわば江戸屋敷の何でも屋のような役回りで、それぞれの役割の専従…

本売る日々

青山文平氏の本売る日々を読んだ。本書は短編集で、「本を売る日々」、「鬼に食われた女ひと」、「初めての開板」の3編が収録されている。主人公は松月平助という本屋の男である。本と言っても、彼が扱っているのは「物之本」で、仏書、漢籍、歌学書、儒学書…

やっと訪れた春

青山文平氏のやっと訪れた春を読んだ。この小説背景はちょっと込み入っている。舞台になっているのは架空の藩である倉橋藩だ。近習目付を拝命してから約40年がたち、長沢圭史はとあることで職を辞すことを決意し、致仕した。そして、同役で同時に近習目付を…

黛家の兄弟

砂原浩太朗氏の 黛家の兄弟を読んだ。架空の神山藩を舞台にした時代小説。時代は宝暦の頃の事と思われる。タイトルにある黛家は神山藩で筆頭家老を勤める家系の家柄で、栄之丞、壮十郎、新三郎の三兄弟がいた。その藩の次席家老の漆原家の娘が藩主の側室にな…

底惚れ

青山文平氏の底惚れを読んだ。読み始めてすぐ、「これは読んだことがあるぞ」と強烈な既視感に襲われた。もう一度タイトルを見た。出版日も見直した。最近出版された本だ。しかし、このストーリーは「江戸染まぬ」じゃないか。でも、短編ではない。どうやら…

黒牢城

米澤穂信氏の黒牢城を読んだ。天正6(1578)年10月、荒木村重は有岡城に籠城し、突如、信長に対して反旗を翻した。黒田孝高(官兵衛)は村重を翻意させるために有岡城に乗り込んだが、成功せず、城から追い払われることもなく、あるいは殺されることもなく、土牢…

へんぶつ侍、江戸を走る

亀泉きょう氏のへんぶつ侍、江戸を走る。本作の主人公は明楽久兵衛で、将軍様の駕籠担ぎである御駕籠之者組に属する御家人なのだが、今でいうところのアイドルオタクで、深川芸者の愛乃に入れ込んでいる。なので組中の同輩からは変物と呼ばれている。今日も…

泳ぐ者

青山文平氏の泳ぐ者を読んだ。本書は半席に登場した片岡直人を主人公とするミステリーで、前巻同様に事件の裏に潜む「なぜ」をあぶりだすのが物語の肝になっている。前巻は短編集だったが、本作は長編で、中に2つの「なぜ」が含まれている。一つ目は、六十歳…

いのちがけ 加賀百万石の礎

砂原浩太朗氏のいのちがけ 加賀百万石の礎を読んだ。本書は前田家家臣の村井長頼の一代記だ。物語は連作長編という形式をとっており、壱之帖、弐之帖、参之帖の3部に分かれており、それぞれに2編、3編、3編の短編が収められている。一代記なので、当然扱う時…

高瀬庄左衛門御留書

砂原浩太朗氏の高瀬庄左衛門御留書を読んだ。本書は北上ラジオの第28回で紹介されていた。砂原浩太朗『高瀬庄左衛門御留書』は、まだ1月だけど2021年のベスト1と言いたいくらいの素晴らしい時代小説だ!【おすすめ本/北上ラジオ#28】 - YouTube高瀬庄…

江戸染まぬ

青山文平氏の江戸染まぬを読んだ。本書は短編集で、「次々の小袖」、「町になかったもの」、「剣士」、「いたずら書き」、「江戸染まぬ」、「日和山」、「台」の七編が収録されている。よくわからぬという感想を抱いたものが何篇かある。「いたずら書き」と…

からころも 万葉集歌解き譚

篠綾子氏のからころも 万葉集歌解き譚を読んだ。朝日新聞の書評のページにこの本が紹介されていた。book.asahi.com (2)の舞台は江戸日本橋。失踪した薬種問屋の手代が日記に残した『万葉集』ゆかりの和歌が、思いがけぬ謎解きの鍵となる。父の行方を求め…

新蔵唐行き

志水辰夫氏の新蔵唐行きを読んだ。以前読んだ疾れ、新蔵と同じ主人公が登場する小説だったので、読んでみた。この小説の中で新蔵は三国屋を一時離れ、諸国を回って見聞を広める旅をしていた。実は新蔵には心に秘めたる旅の目的があり、それは三国屋の宰領で…

へぼ侍

坂上泉氏のへぼ侍を読んだ。へぼ侍とは志方錬一郎の事である。志方家は三河以来の徳川家臣で、大阪東町奉行所の与力として数代前から大阪に土着していた。奉行所の御役目の傍ら、剣術の町道場を営み、武士や町人に指南している家柄であったが、幕末の時、錬…

鬼憑き十兵衛

大塚已愛氏の鬼憑き十兵衛を読んだ。この小説は時代小説というよりも、実際は伝奇小説だ。時は寛永十二年十月、所は肥後熊本。物語は15人前後の侍たちが少年を追って、雨の中山に分け入ることから始まる。山に分け入っているのは荘林正馬ら一群で、加藤家浪…

刀と傘

伊吹亜門氏の刀と傘を読んだ。これは連作短編のミステリーで、幕末から明治の最初の頃が舞台になっている。そして、一方の主人公が実在の人物である江藤新平で、もう一人の主人公が架空に人物と思われる尾張藩公用人の狩野師光である。この二人が探偵役なの…

天地に燦たり

川越宗一氏の天地に燦たりを読んだ。時代は秀吉政権が全国を統一する直前から始まり、島津の琉球入りまでを描いている。本小説は三人の視点で物語が語られていく。一人は島津の侍で、大野七郎(後の樺山久高)だけが史実の人物であろうと思われる。彼は戦を厭…

てらこや青義堂 師匠、走る

今村翔吾氏のてらこや青義堂 師匠、走るを読んだ。童の神 - 隠居日録が面白かったので、何の前知識なしにこの作品も読んでみた。タイトルから時代物で、人情ものなのだろうかと想像していたのだが、人情ものではなく、エンターテイメントというかアクション…

童の神

今村翔吾氏の童の神を読んだ。著者は童を以下のように説明している。 童とは大陸から入ってきた言葉で、「雑役者」や「僕」を意味する。家で身の回りの世話をする奴をそう呼称すると同時に、本来は朝廷に屈するべきと意味合いを込めて、化外の民をそのように…

跳ぶ男

青山文平氏の跳ぶ男を読んだ。作者は文中に明確に年号は書いていないが、「本年、水野越前守忠邦が老中首座になった」と文章中に書いているので、天保十(1839)年が物語の時間軸だと思われる。物語の舞台は藤戸藩。藤戸藩は台地の上にあるという特殊な土地柄…

室町無頼

垣根涼介氏の室町無頼を読んだ。タイトルにあるように時代は室町時代で、舞台は京都。そこに集まってきた男たちの物語だ。本書は500ページを超える大作で、ストーリはゆっくりと進行していく。主人公は才蔵という17歳の少年で、赤松家牢人だった父親が亡くな…

怪盗 桐山の藤兵衛の正体 八州廻り桑山十兵衛

佐藤雅美氏の怪盗 桐山の藤兵衛の正体 八州廻り桑山十兵衛 を読んだ。この八州廻り桑山十兵衛のシリーズも長く続いており、本書で十冊目だ。一作目の「八州廻り桑山十兵衛」が出版されたのが平成八年なので、二十年以上も続いてる。主人公の桑山十兵衛は通称…

朝井まかて氏の眩を読んだ。NHKで葛飾北斎の娘応為をモデルにしたドラマを放送していて、面白かったので原作を読んでみた。NHKのドラマは75分ほどの時間なので、原作のほんの一部分を取り出して再構成をしたような印象だ。原作はお栄の結婚生活が破たんする…

疾れ、新蔵

志水辰夫氏の「疾れ、新蔵」を読んだ。時代小説という体裁をとっているが、読んでみた印象では、どちらかというと冒険小説だと感じた。目指すは越後岩船の春日荘。主人公の新蔵は酒匂家での須河幾一郎の急死の報に接し、かねてから打ち合わせていた通り、江…