隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

時代小説

へんぶつ侍、江戸を走る

亀泉きょう氏のへんぶつ侍、江戸を走る。本作の主人公は明楽久兵衛で、将軍様の駕籠担ぎである御駕籠之者組に属する御家人なのだが、今でいうところのアイドルオタクで、深川芸者の愛乃に入れ込んでいる。なので組中の同輩からは変物と呼ばれている。今日も…

泳ぐ者

青山文平氏の泳ぐ者を読んだ。本書は半席に登場した片岡直人を主人公とするミステリーで、前巻同様に事件の裏に潜む「なぜ」をあぶりだすのが物語の肝になっている。前巻は短編集だったが、本作は長編で、中に2つの「なぜ」が含まれている。一つ目は、六十歳…

いのちがけ 加賀百万石の礎

砂原浩太朗氏のいのちがけ 加賀百万石の礎を読んだ。本書は前田家家臣の村井長頼の一代記だ。物語は連作長編という形式をとっており、壱之帖、弐之帖、参之帖の3部に分かれており、それぞれに2編、3編、3編の短編が収められている。一代記なので、当然扱う時…

高瀬庄左衛門御留書

砂原浩太朗氏の高瀬庄左衛門御留書を読んだ。本書は北上ラジオの第28回で紹介されていた。www.youtube.com高瀬庄左衛門は神山藩の郡方に勤める下級武士で、隠居はしていないが、息子の啓一郎は藩校での成績が優秀だったため、同じく郡方に取り立てられいた。…

江戸染まぬ

青山文平氏の江戸染まぬを読んだ。本書は短編集で、「次々の小袖」、「町になかったもの」、「剣士」、「いたずら書き」、「江戸染まぬ」、「日和山」、「台」の七編が収録されている。よくわからぬという感想を抱いたものが何篇かある。「いたずら書き」と…

からころも 万葉集歌解き譚

篠綾子氏のからころも 万葉集歌解き譚を読んだ。朝日新聞の書評のページにこの本が紹介されていた。book.asahi.com (2)の舞台は江戸日本橋。失踪した薬種問屋の手代が日記に残した『万葉集』ゆかりの和歌が、思いがけぬ謎解きの鍵となる。父の行方を求め…

新蔵唐行き

志水辰夫氏の新蔵唐行きを読んだ。以前読んだ疾れ、新蔵と同じ主人公が登場する小説だったので、読んでみた。この小説の中で新蔵は三国屋を一時離れ、諸国を回って見聞を広める旅をしていた。実は新蔵には心に秘めたる旅の目的があり、それは三国屋の宰領で…

へぼ侍

坂上泉氏のへぼ侍を読んだ。へぼ侍とは志方錬一郎の事である。志方家は三河以来の徳川家臣で、大阪東町奉行所の与力として数代前から大阪に土着していた。奉行所の御役目の傍ら、剣術の町道場を営み、武士や町人に指南している家柄であったが、幕末の時、錬…

鬼憑き十兵衛

大塚已愛氏の鬼憑き十兵衛を読んだ。この小説は時代小説というよりも、実際は伝奇小説だ。時は寛永十二年十月、所は肥後熊本。物語は15人前後の侍たちが少年を追って、雨の中山に分け入ることから始まる。山に分け入っているのは荘林正馬ら一群で、加藤家浪…

刀と傘

伊吹亜門氏の刀と傘を読んだ。これは連作短編のミステリーで、幕末から明治の最初の頃が舞台になっている。そして、一方の主人公が実在の人物である江藤新平で、もう一人の主人公が架空に人物と思われる尾張藩公用人の狩野師光である。この二人が探偵役なの…

天地に燦たり

川越宗一氏の天地に燦たりを読んだ。時代は秀吉政権が全国を統一する直前から始まり、島津の琉球入りまでを描いている。本小説は三人の視点で物語が語られていく。一人は島津の侍で、大野七郎(後の樺山久高)だけが史実の人物であろうと思われる。彼は戦を厭…

てらこや青義堂 師匠、走る

今村翔吾氏のてらこや青義堂 師匠、走るを読んだ。童の神 - 隠居日録が面白かったので、何の前知識なしにこの作品も読んでみた。タイトルから時代物で、人情ものなのだろうかと想像していたのだが、人情ものではなく、エンターテイメントというかアクション…

童の神

今村翔吾氏の童の神を読んだ。著者は童を以下のように説明している。 童とは大陸から入ってきた言葉で、「雑役者」や「僕」を意味する。家で身の回りの世話をする奴をそう呼称すると同時に、本来は朝廷に屈するべきと意味合いを込めて、化外の民をそのように…

跳ぶ男

青山文平氏の跳ぶ男を読んだ。作者は文中に明確に年号は書いていないが、「本年、水野越前守忠邦が老中首座になった」と文章中に書いているので、天保十(1839)年が物語の時間軸だと思われる。物語の舞台は藤戸藩。藤戸藩は台地の上にあるという特殊な土地柄…

室町無頼

垣根涼介氏の室町無頼を読んだ。タイトルにあるように時代は室町時代で、舞台は京都。そこに集まってきた男たちの物語だ。本書は500ページを超える大作で、ストーリはゆっくりと進行していく。主人公は才蔵という17歳の少年で、赤松家牢人だった父親が亡くな…

怪盗 桐山の藤兵衛の正体 八州廻り桑山十兵衛

佐藤雅美氏の怪盗 桐山の藤兵衛の正体 八州廻り桑山十兵衛 を読んだ。この八州廻り桑山十兵衛のシリーズも長く続いており、本書で十冊目だ。一作目の「八州廻り桑山十兵衛」が出版されたのが平成八年なので、二十年以上も続いてる。主人公の桑山十兵衛は通称…

朝井まかて氏の眩を読んだ。NHKで葛飾北斎の娘応為をモデルにしたドラマを放送していて、面白かったので原作を読んでみた。NHKのドラマは75分ほどの時間なので、原作のほんの一部分を取り出して再構成をしたような印象だ。原作はお栄の結婚生活が破たんする…

疾れ、新蔵

志水辰夫氏の「疾れ、新蔵」を読んだ。時代小説という体裁をとっているが、読んでみた印象では、どちらかというと冒険小説だと感じた。目指すは越後岩船の春日荘。主人公の新蔵は酒匂家での須河幾一郎の急死の報に接し、かねてから打ち合わせていた通り、江…

半席

本書には「半席」、「真桑瓜」、「六代目中村正蔵」、「蓼を喰う」、「見抜く者」、「役替え」の六編が収められている。実は表題作の半席は約定 - 隠居日録にも収められており、どういうことだろうと思っていたのだが、実は本作はその登場人物の片岡直人を主…

励み場

青山文平氏の励み場を読んだ。「励み場」とは「励めば報われる仕事場」という意味である。本編は名子の青年が勘定書の普請役となり、そこから勘定支配に這い上がって、更に上を目指そうとしている姿を描いている。名子という言葉は本書を読むまで知らなかっ…

つまをめとらば

青山文平氏のつまをめとらばを読んだ。本作品は第154回直木賞受賞作品だ。短編集で、表題作の「つまをめとれば」の他に、「ひともうらやむ」、「つゆかせぎ」、「乳付」、「ひと夏」、「逢対」が収められている。今までの青山作品は、江戸幕府開闢から150年…

鬼はもとより

青山文平氏の鬼はもとよりを読んだ。主人公は浪人の奥脇抄一郎。表向きは万年青の商いをしているが、裏では諸藩に向けて藩札板行指南をしている。物語の前半は奥脇抄一郎が浪人する前のことが語られる。当時はある藩で馬廻り役をしており、剣に入れ込んでい…

かけおちる

青山文平氏のかけおちるを読んだ。本書は四つの駆け落ちの物語である。と言っても連作短編ではなく、長編小説だ。主人公は柳原藩執政阿部重秀だ。政阿部重秀は家業として鮭の種川に取り組んでおり、ようやくその結果が出たところであった。鮭の種川とは鮭が…

約定

青山文平氏の約定を読んだ。本書は短編集で、「三筋界隈」、「半席」、「春山入り」、「乳房」、「約定」、「夏の日」の6編が収められている。本書の二編目に「半席」という作品が収められているが、寡聞にしてこの半席という言葉は知らなかった。 御家人か…

流水浮木 最後の太刀

青山文平氏の流水浮木 最後の太刀を読んだ。江戸時代の武士は家計の助けのためにいろいろな内職をしていた。鉄砲百人組の内職はツツジの栽培が有名であるが、本書ではツツジではなくサツキと書かれている。サツキはツツジの一種であるし、苗木で売っていたと…

敵討ちか主殺しか (物書き同心居眠り紋蔵)

佐藤雅美氏の物書き同心居眠り紋蔵シリーズ「敵討ちか主殺しか」を読んだ。このシリーズも非常に長く続いていて、本作で14作目だ。前作では驚いたことに別シリーズの登場人物蟋蟀小三郎が登場していて、今後も登場するのかと思ったら、本作には登場しなかっ…

白樫の樹の下で

青山文平氏の白樫の樹の下でを読んだ。以前遠縁の女 - 隠居日録を読んで、面白かったので他の作品にも手を出してみた。読み終えて、改めて文章がうまいと思った。江戸の町名、橋、川が文章中にちりばめられており、そこを実際移動しているかのような印象を受…

遠縁の女

青山文平氏の遠縁の女を読んだ。本書には短編集で、表題作の他に「機織る武家」、「沼尻新田」が収められている。面白かったのは、「機織る武家」と「遠縁の女」だ。機織る武家は主要の登場人物の関係がまず面白い。家付きの娘であった姑、その娘婿由人、由…

家康、江戸を建てる

門井慶喜氏の「家康、江戸を建てる」を読んだ。タイトルからすると家康が主人公のような印象を与えるが、本書は連作短編小説で、実は家康は脇役でしかなく、家康が江戸の入府する際に江戸のインフラ等を作った男たちの物語だ。五編の物語が収められている。 …

決戦!関ヶ原

決戦!関ヶ原を読んだ。本書は関ヶ原の合戦にちなんだアンソロジー時代小説だ。収録作品、作者、主人公は以下の通り。 人を致して 伊東潤 徳川家康 笹を噛ませよ 吉川永青 可児才蔵 有楽斎の城 天野純希 織田有楽斎 無為秀家 上田秀人 宇喜多秀家 丸に十文字 …