隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

奥州狼狩奉行始末

東圭一氏の奥州狼狩奉行始末を読んだ。

本書は東北にある架空の藩が舞台の時代小説で、その藩は馬の産地として有名であった。藩の牧の馬が狼に襲われることがあり、そのために狼狩りという役職がその藩にはあった。物語は序章帰路から始まるのだが、その序章は本当に短く郷目付の岩泉源之進が山道で狼に出会い、その直後何者かと対峙するところで唐突に終わる。実は源之進はこの後全く登場せず、この物語の主人公はこの源之進の次男の亮介で、狼狩奉行に抜擢されるのはこの亮介なのだ。第一章から始まる物語は序章から三年後で、源之進は崖から転落して落命していた。跡を継いだ長兄の寛一郎は半年前から胃の病のため寝たり起きたりの生活が続いている。それで亮介が狼狩奉行の任につくことになった。

狼狩奉行というのは多分架空の役職だと思うが、狼害が増えたのは通称黒絞りという名前の非常に賢い狼が群れを率いるようになったからではないかということで、亮介はこの狼を狩らなければならなくなるが、そう簡単にはいかない。しかも、狼だけではなく、父の死の謎や藩の不正と色々なことが次々と降りかかってくる。200ページぐらいの長さに物語は非常にコンパクトにまとめられている。

この小説は時代小説だけれども、時代小説の皮を被った小説だと思う。特に亮介と舅の関係とか嫁の関係なんかは妙にに現代的だ。なので読みやすく面白いと感じる人が多いのだろう。