隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

ぎんなみ商店街の事件簿

井上真偽氏のぎんなみ商店街の事件簿を読んだ。実はこの本は2冊になっていて、一方がbrother編、もう一方がSister編になっている。それぞれの本には3編ずつ収録されており、実は同じ事件を別々の角度から見た物語になっているのだ。Brother編には「桜幽霊とシェパーズ・パイ」、「宝石泥棒と幸福の王子」、「親子喧嘩と注文の多い料理店」が収録されており、Sister編にはそれらに対応する「だから都久音は嘘をつかない」、「だから都久音は押し付けない」、「だから都久音は心配しない」が収録されている。

横浜のどこかに銀波寺という寺があり、ぎんなみ商店街は寺の門前町として栄えた通りだ。Brother編に登場する四兄弟(元太、福太、学太、良太)もSister変異登場する三姉妹(佐々美、都久音、桃)もこの町に住んでいる。「桜幽霊とシェパーズ・パイ」と「だから都久音は嘘をつかない」では自動車が銀波坂の袴田商店に突っ込み、運転手が事故死した。その事故の目撃者が四兄弟の末弟の良太で、助手席から誰かが出てくるのを目撃したと証言した。この事故の原因が全く違う理由になっている。どっちが正しいのだろう?

「宝石泥棒と幸福の王子」と「だから都久音は押し付けない」では中学校で創作楽器が壊され、その壊された現場に謎のメッセージが残されていた。四兄弟(といっても実質は福太、学太)と三姉妹(といっても実質は都久音、桃)が別々な方向から事件を調べる。四兄弟は残されたメッセージを中心に三姉妹は誰が壊したのかを突き止める。このストーリーはそれぞれ一部分しか解決しないので、矛盾はなさそうだ。そして、初めて三姉妹と四兄弟が交わりを持つ。

「親子喧嘩と注文の多い料理店」と「だから都久音は心配しない」では銀波商店街で進行中の陰謀を捜査することになる。三姉妹の方も四兄弟の方もなんだか勝手に話を大きくしている感はある。一応犯罪はあったようなのだが、このストーリーで元太はいったい何をしていたのか結局よくわからなかった。

3篇の中では第一話が一番面白く感じられた。私はBrother編を読んでから対応するSister編を読んだ。多分この順番の方がいいと思う。というのもBrother編の結論とは全く違うことがSister編で明らかになるからだ。このギャップが面白かった。巻末の初出一覧を見るとBrother編を発表してからSister編を発表しているので、どちらから読んでも良いとは言いつつ、この順番がよいのではないかと思う。