隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

探偵が早すぎる

井上真偽氏の探偵が早すぎるを読んだ。この小説も読もうと思っていたのだが、後回しになってしまい、そうこうしているうちに日テレ系で18年の夏からドラマが始まってしまった。テレビドラマを見る前に小説を読むべきだと思い、テレビドラマの方は録画しておいた。

父の死により莫大な財産(その額実に五兆円)を相続することになった女子高生の十川一華。しかし、彼女の未来は明るくなかった。その遺産を狙って、父親の腹違いの兄弟姉妹である大陀羅一族が一華の命を狙って、あの手この手の策を弄し始めたからだ。何とか事故死に見せかけて、一華の相続した遺産を横取りしようと画策しているのだ。一華は既に母親を亡くしており、唯一信頼を寄せているは家政婦の橋田だ。橋田は一華の命を守るためにある探偵に依頼したのだった。

この小説の探偵はユニークだ。なぜなら、事件発生前にその予兆を掴み、事件自体を起こらないようにするのだ。どのようにしてか?例えばこんな具合だ。

一華はその時一族の何物かに狙われ、その結果足を骨折して車いすを使っていた。そんな時、同じく車いすに乗る女性を見つけた。しかもその女性は足だけではなく、右腕までもL字型のギプスで覆われていた。指先まで覆うがっちしりたタイプだ。その女生と付き添いの女性がこんな会話をしていた。
「xxっていう――もとは保湿剤でコラーゲンとかも配合されているから、美肌効果もすごいみたい。ほら見て、この肘。前はカサカサだったけど、毎日自分で塗っていたら――」
「うわ、本当だ。つるつる。――いいな。私もそれ使いたいな。どこに売っている?」

探偵はこの会話を聞いて、この会話の中におかしなところを見つけ、そしてそこから推理を働かせて、仕掛けられた殺害のトリックを見破っていくのだ。探偵は大陀羅一族の罠を次々に見破っていき、最終決戦の場は一華の父親の四十九日の法要、納骨、そして一族との会食の場だった。最後の最後で大陀羅一族の大きな仕掛けが実行に移される。そして、探偵はそれを見破ることができるか?陰謀を防ぐことはできるのか?

以前の井上真偽氏の探偵もユニークだったが、本作の探偵もユニークだ。今までのだいたいの探偵は事件発覚後でなければ犯人にたどり着けない。だが、この探偵は事件発覚前に、事件を無効化させて、事件を解決してしまう。今までにない発想だ。

小説を読み終わった後、録画しておいたテレビドラマを見たが、設定とトリックを一部借りたもので、原作小説とは似て非なるものだった。なんかドラマはコメディーになっていて、広瀬アリスも激しく顔芸をしている。彼女のほかの作品を見たことがないのでよく判らないのだが、彼女はいつもこんな演技なのだろうか?