隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

ファンタジー

さやかに星はきらめき

村山早紀氏のさやかに星はきらめきを読んだ。この連作短編集には5作収められているが、ジャンルとしては御伽噺に近いファンタジーのようなものだった。今から数百年未来の月が舞台で、その頃は地球は気候変動とか戦争により生物の棲めない惑星になっていた。…

呪いを解く者

フランシス・ハーディングの呪いを解く者 (原題 UNRAVELLER)を読んだ。この物語はラディスという架空の国が舞台のファンタジーだ。ラディスには<原野ワイルズ>と呼ばれる霧に包まれた森が隣接しており、そこには不思議な力を持つ生き物が暮らしている。特…

愚かな薔薇

恩田陸氏の愚かな薔薇を読んだ。ジャンル的にはファンタジーになると思うのだが、何か非常に土俗的な感じがするストーリーだった。場所も盤座という土地だけが舞台になっていて、そこで行われる祭りからその感じがするし、その地にキャンプと称して集められ…

夜の都

山吹静吽氏の夜の都 を読んだ。何とも言えない不思議な小説だった。大正時代に父と義母とともに日本にやって来た14歳の少女ライラは、父の仕事の間保養地のホテルで過ごすことになった。ホテルの近くにある古い祠に迷い込んだライラは、岩窟の中にある岩井戸…

ガラスの顔

フランシス・ハーディングのガラスの顔 (原題 A Face Like Glass)を読んだ。今度の物語の舞台は地底都市カヴェルナで、全くの架空の世界で展開するファンタジーになっている。地底世界に住んでいる住人は自然な顔の表情というものがなく、作られた表情を覚え…

Babel IV 言葉を乱せし旅の終わり

古宮九時氏のBabel IV 言葉を乱せし旅の終わりを読んだ。このシリーズの最終巻で、なぜこの大陸には共通言語があるのか、なぜ異世界から迷い込んできた雫は言葉に不自由しなかったのかの謎が解き明かされている。それだけではなく、Babel Iから登場していた…

Babel III 鳥籠より出ずる妖姫

古宮九時氏のBabel III 鳥籠より出ずる妖姫を読んだ。前巻の最後で雫は誰かに拉致されたところで終わっていたのだが、拉致された先はファルサスの隣国のキスクで、そこで雫は謎の病の治療をすることになったのだ。その病はその世界の話し言葉と深く関係して…

Babel II 魔法大国からの断罪

古宮九時氏のBabel II 魔法大国からの断罪を読んだ。前巻の終わりでどこかわからない場所に転移してしまった雫とエリクだったが、彼らが辿り着いたのは大陸のほぼ西側で、大陸の東の方から目的地のファルサス王国を飛び越えてしまった。ファルサス自体は大陸…

Babel I 少女は言葉の旅に出る

古宮九時氏のBabel I 少女は言葉の旅に出るを読んだ。本書は、女子大生の水瀬雫が真夏の暑い日に道を歩いていると、黒い影のようなものが合わられて、何だろうと不思議に思っていると、その影の中に吸い込まれて、気づいてた異世界にいたことから始まるファ…

沙漠と青のアルゴリズム

森晶麿氏の沙漠と青のアルゴリズムを読んだ。この物語は色々なストーリーが多層的に積み重なっていて、かなり読み進めないと、どれが物語的事実で、どれが物語的虚構なのかよくわからなくて、なかなか理解するのに苦労した。この状況は本書でも著者により、…

子供は怖い夢を見る

宇佐美まこと氏の子供は怖い夢を見るを読んだ。この本は表紙のデザインを見ると暗い感じだし、「怖い夢」というようなタイトルがついているのでホラー小説であるような印象を与える。しかし、読みだすと、小説のテーマは貧困とか、児童虐待・いじめとか、新…

空のあらゆる鳥を

チャーリー・ジェーン・アンダーズの空のあらゆる鳥を (原題 All Birds in the Sky)を読んだ。本書は2016年に刊行され、翌年ネビュラ賞長編部門、ローカス賞ファンタジー部門、クロフォード賞を受賞している。これだけの賞を受賞しているのだから、それなり…

約束の果て 黒と紫の国

高丘哲次氏の約束の果て 黒と紫の国を読んだ。この小説は南朱列国演義と歴世神王拾記と青銅器の物語。あるいは、梁親子から田辺親子に託された偽史と小説をめぐる物語だ。事の発端は伍州の南端で発掘された矢をかたどった装身具のような青銅器であった。それ…

スキマワラシ

恩田陸氏のスキマワラシを読んだ。この作品は、「スキマワラシ」と「僕のアレの力」と「タイル」の物語だ。スキマワラシとは隙間童子のことだが、もっともこれは登場人物の纐纈太郎の造語だ。座敷童子は家に憑くものだ。一方スキマワラシは人と人の記憶の間…

この本を盗む者は

深緑野分氏の「この本を盗む者は」を読んだ。この本を読む前は知らなかったのだが、ブック・カース(book curse)という言葉があるようだ。ヨーロッパ中世の頃、本の盗難を防ぐために本にかけられた呪いの事のようだが、その起源は紀元前にさかのぼるという。…

数の女王

川添愛氏の数の女王を読んだ。本書は人々が固有の「運命の数」を持つ世界のファンタジー。しかし、その世界ではなぜか計算が禁じられていた。主人公のナジャは王妃の娘であるが、実の子ではなく、幼少の頃両親が流行り病で亡くなったのを哀れんだ王妃に引き…

クジラアタマの王様

伊坂幸太郎氏のクジラアタマの王様を読んだ。お菓子メーカーの宣伝広報局に勤めている岸は出荷された新商品のマシュマロのお菓子に画鋲が混入していたという苦情を発端に人気ダンスグループの小沢ヒジリと都議会議員の池野内征爾と知り合った。それはあたか…

カッコーの歌

フランシス・ハーディングのカッコーの歌(原題 Cuckoo Song)を読んだ。嘘の木 - 隠居日録が面白かったので、こちらの作品も読んでみたのだが、巻末の解説によると、カッコーの歌の方が本国では先に出版されていたということだ。主人公は十一歳の少女トリス(…

図書館の魔女 烏の伝言

高田大介氏の図書館の魔女 烏の伝言を読んだ。本書も厚く、658ページもある大ボリュームだ。ただ、本作は上下巻ではなく、本巻のみ。前作の図書館の魔女の終わりの所は次に続く物語のプロローグ的な感じになっていたので、その続きの話なのだろうかとも思っ…

図書館の魔女(下)

高田大介氏の図書館の魔女(下)を読んだ。上巻では後半に刺客に襲われ物語が大きく動き出すかと思いきや、下巻の進行も緩やかに動き出していく感じだった。まず、マツリカは魔術書・錬金術書を類をこき下ろし、禁書にするなど馬鹿馬鹿しいと一蹴するの所から…

図書館の魔女(上)

高田大介氏の図書館の魔女(上)を読んだ。本書はとにかく厚い。ページ数で652ページあり、厚さからすると、2冊分ぐらいに相当するのではないだろうか。上巻には第一部と第二部が収録されている。しかし、この上巻では、ようやく物語が動き出したところで、今…