隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

数の女王

川添愛氏の数の女王を読んだ。

本書は人々が固有の「運命の数」を持つ世界のファンタジー。しかし、その世界ではなぜか計算が禁じられていた。主人公のナジャは王妃の娘であるが、実の子ではなく、幼少の頃両親が流行り病で亡くなったのを哀れんだ王妃に引き取られた。だが、ナジャはその話が信じられない。なぜなら、ナジャは使用人のように扱われていて、糸紬や機織りの仕事をさせられて、王妃はちっとも愛情を示してくれない。王妃の愛はすべて王子である兄リヒャルトに注がれていたが、リヒャルトはとても残忍な性格をしていた。本当はもう一人優しい姉のビアンカがいたのだが、数年前に行方不明なってしまった。もうすでに死んでしまったのかもしれない。この王妃には恐ろしい邪視の力があり、その力を使って、恐ろしい計画を遂行していたのだった。

このストリーの中にはいろいろな整数の話が盛り込まれている。人々の持つ「運命の数」を素因数分解して、その素数を基に呪いをかけるとか、フィボナッチ数列から借用したフィボナッチ草の花の数、そのフィボナッチ草から呪いを癒すとか、フェルマーの小定理とかコラッツ予想とか色々出てくる。これらをファンタジー要素に結びつけてストリーに巧みに混ぜ込んでいるところが読んでいてい非常に面白く出来上がっている。