隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

精霊の箱 チューリングマシンをめぐる冒険

川添愛氏の精霊の箱 チューリングマシンをめぐる冒険を読んだ。これは白と黒のとびらの続編で、前作の登場人物が今作でも登場し、あたらな人物も登場してくる。今回のテーマはチューリングマシーンとなっているが、最後の所では暗号の話題も取り上げられている。

ガレットは塔の守り手となり、魔術師となったが、相変わらず師匠のアルドウィンから厳しく指導を受けていた。そんなガレットが、色々な事件に巻き込まれるうちに、クージュの魂がガレットの手の中に吸い込まれてしまった。クージュの魂は本来は浄罪界に属していたものであるが、失われて九百年も経ち、魔術師たちはずっと探していたのだった。一方、学術院の院長のファウマン卿はユフィンやヴィエンに何やら不思議な装置設計を依頼しており、実はファウマン卿の依頼はユフィンやヴィエンだけではなく、他の若い学者にもされていた。それは、ファウマン家の長年の悲願を達成するために装置なのであった。

今作は、上巻と下巻とに分かれていて、ストーリーとしてはかなり長くなっているが、前作がどちらかというと、オートマトンを説明しるためにストーリをひねり出したような印象だったのに比べ、今回は十分な紙幅があるので、ストーリが主で、そこにチューリーングマシーンなどの動作・説明をうまくあてはめたような印象を受けた。そのため、今回の方がストリーとしては格段に面白くなっている。今回はあとがきがついているのが、それによると最初から続編の執筆は予定していたのだとか。そうであれば、第一作目はちょっと詰め込み過ぎだったのではないかと思えてくる。