川添愛氏の白と黒のとびらを読んだ。これはサブタイトルがついて、そこには「オートマトン」と書かれている。そう、これはあの計算理論に出てくるあの「オートマトン」だ。この本も以前から読もうと思っていたのだが、後回しにしてしまい、なかなか読む機会がなかった。この本は万人向けではないが、これはなかなか面白い作りになっている。
ストーリーは魔術師見習いのガレットが魔術師アルドゥインのもとで修業しながら、その後継者となるまでがを糸に、オートマトン・チューリングマシンの動作を横糸にして描かれいく。オートマトンの教科書的な数学モデルの説明はとにかくとっつきにくく、何の説明だかよく判らないという印象があった。とくに具体的なイメージがないうちにいきなり数式により一般化されてしまうと、何を現しているのかさっぱり理解できないのだが、本書では遺跡をオートマトンになぞらえ、○と●を入力文字として、遺跡にある白と黒の2つのどちらかの扉を開けて部屋を移動するという動作に割り当て、遺跡へ入って出てくるという動作で、遺跡が○と●を入力文字列として受け入れということになぞらえていく。このことにより、オートマトンの動作に具体的なイメージを与えているのだ。最初に書いたように、万人受けする本だとは思えないが、オートマトンとかに少しでも興味がある人なら、その面白さはわかるだろう。