隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

空のあらゆる鳥を

チャーリー・ジェーン・アンダーズの空のあらゆる鳥を (原題 All Birds in the Sky)を読んだ。本書は2016年に刊行され、翌年ネビュラ賞長編部門、ローカス賞ファンタジー部門、クロフォード賞を受賞している。これだけの賞を受賞しているのだから、それなりに面白いのだろうと思って読み始めたのだが、自分にはあまり合わなかったようだ。

本書はSFというよりはファンタジー寄りの作品だと思う。だとしても、ちょっとリアリティに欠けるような気がする。物語の時代は現代とさほど変わらない時間だと思われる。魔法使いの少女パトリシアと天才的な少年エンジニアのローレンスが出会ったことで、やがて世界が滅亡するような危機が訪れることになりそうだという事を謎の殺人結社の男が知るところになる。未成年を殺してはいけないという謎の掟のため、彼らを暗殺することはできないので、彼らの仲を引き裂き、別々な道を歩ませようとする暗殺者なのだが、一応その試みは成功する。そうするとあの未来の啓示は何だったのだという感じがするし、この仕事は暗殺者結社の中で一定の地位を保つためのボランティアの仕事だという。ここにはなんだかよくわからない設定が色々ある。ここまででストーリー全体の3分の1ぐらいの所。

約10年後二人はひょんなことから再開することになる。その頃は地球の環境問題が酷い状況になっているらしいのだが、ある事件が起きるまではあまりそのような描写がないのもちょっと不思議で、この辺りがリアリティに欠ける感じがするところだ。ローレンスはある装置を開発するプロジェクトにかかわっていて、パトリシアは謎の魔術師の組織に属してるが、魔術師が全体として何をしようとしているのかもよくわからない。一応物語の決着はつくが、これは壮大な(?)ボーイ・ミーツ・ガールの物語なのか?という気もする。最も再会したときは彼らは20代半ばなので、ボーイでもガールでもないが。