野嶋剛氏の新中国論: 台湾・香港と習近平体制を読んだ。本書が出版されたのが2022年の5月で、それからすでに2年経過しているので、必ずしも最新の状況を本書から得られるわけではないが、21世紀に入ってからの動きを追う分には特に問題ないだろう。「香港の一国二制度は風前の灯火」と書かれているが、今やだれも香港にそのような制度があるとは思っていないだろうし、今後後戻りすることもないというのはほぼ言えると思う。本書を読めば、なぜあれほど習近平は強硬に香港を中国内部に取り込もうとしているのかのヒントが得られるかと思ったのだが、それについては書かれていなかった。もう一つ知りたかったのは、台湾の国民党と中国共産党の関係だ。かっては内戦の敵同士だったのに、なぜ今国民党は親中派になっているのか?何がきっかけなのか?これも残念ながら本書に書かれていなかった。
中国には人民解放軍があり、これは共産党の軍隊だ。なぜ解放軍と呼ばれているのか昔から不思議に思っていたのだが、共産党は共産化できた地域を「解放区」と名付けたというのだ。人民解放軍というのは共産化するための軍隊という意味なのだろう。
大陸側から台湾をどのように見ていたかというが本書に書かれていたが、台湾の一部を支配したのが1684年の台湾府の設置からで、1885年に台湾省が設置された。日本が台湾を植民地にしたのがその10年後の1895年で、そして1945年からは国民党が支配している。少なくとも共産党が関わった期間は一切ない。興味深いことに毛沢東は人民解放軍の機関紙「解放軍報」に「我々は台湾独立に賛成し、台湾が自ら求める国家を作り上げることに賛成する」と述べているらしい。今台湾独立などと台湾の人たちが発言すると共産党は問題視するが、かっては毛沢東がそう言っていた。多分その当時台湾は国民党に占領されていたので共産党の影響が及ぶ範囲ではないとい認識が毛沢東にはあったのだろう。