隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

首木の民

誉田哲也氏の首木の民を読んだ。

この著者の本はこれが初めてなので、ほかにどのようなものを書いているか全くわからない。ちょっと話題になっているようだったので、読んでみたのだが、結構面白かった。

小説の出だしが、高校生の娘に邪険にされる父親の場面から始まるので、どういうストーリーになるのかと思えば、これは佐久間龍平という男の人の良さを語るエピソードなのだと思う。この娘はこれ以降登場しない。この佐久間龍平は刑事で、彼が扱うことになる窃盗事件が一つの軸になる。自動車警ら隊がなんとなく不審に思い職質をかけた車の中に、本人のものではない財布があり、職質の際警察官と接触したために公務執行妨害緊急逮捕された男との取り調べがもう一つの軸になる。この逮捕された男は大学の客員教授の久和で、取り調べた佐久間に、「自分はありとあらゆる公務員を信用しない。そのため、今回逮捕された件では一切供述しない」というのだ。それで佐久間がその理由を尋ねると長い話になってしまった。

佐久間の部下が財布の持ち主を探すと、持ち主は割と簡単に判明したのだが、持ち主本人には会えない。そして、財布の持ち主と客員教授の久和と接点がなくもない。更に持ち主自身を調べていくと、彼はフリーの記者で、何かを調べていたようで、その件をさらに追うと、いろんなことが繋がっていき、最後にはとんでもない事件へと広がっていく。この財布の持ち主の件がどう着地するのか不思議だったのだが、あのような結末を迎えるとは読みだしたときには想像もつかなかった。

久和がかたるなぜ公務員を信用しないかという理由は財務省の欺瞞に論点が移っていくことになる。私自身も国債は「国民の借金」だと思っていないし、負債を論じるなら資産も論じなければ話半分になると思っている。ただ、これだけ額が多きるなると、これはこのままでいいわけないのではと思うが、ではどうしたらいいかという所はよくわからないというのが正直な所だ。