隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

量子とはなんだろう 宇宙を支配する究極のしくみ

松浦壮氏の量子とはなんだろう 宇宙を支配する究極のしくみを読んだ。

何冊か量子力学の本を読んできたが、未だに良くわかっていない。量子は粒子の性質と波の性質を併せ持っている(というか、そういう性質のあるものを量子と呼んでいる)のは分かるのだが、ではどんな時に粒子として扱い、または波として扱うのかが、今一つよくわからないのだ。古典物理学を援用して、粒子と波をその都度使い分けて、量子現象を説明する量子論を「前期量子論」と呼んでいるようだ。こういうアプローチは何かご都合主義的な感じがして、流石にこれではまともに量子の性質も明らかにはならないだろうと思っていたのだが、今では違うアプローチもあるようだ。

量子の位置や速度は確定した値を持たないため、「量子本来の位置や速度」を普通の数で表すことはできない。

量子の理論は1回の測定で得られる物理量を予言することは原理的にできないが、物理量の分布に付随した平均や分散のような統計量なら予言できる。

ここで言っている「予言」というのは実際は「計算」だと思う。量子の位置と運動量を行列で表現すると上で述べた計算が実現できるようなのだ。本書では20ページぐらいにわたって行列に関して説明しているのだが、実際の量子を表す行列がどのようなものなのか説明されていないので、今一つ理解が及ばなかった。

量子もつれ状態にある2つの粒子を離れたところに移動させ、一方を観測してスピンの状態を確定させると、もう一方の粒子のスピンは逆向きになり、この確定は距離がいくら離れていても瞬時に起こるので、光速を越えて状態が伝わるという何ともパラドックス的な性質がある。本書でもそのことについて解説しているが、量子の状態が確定することと情報が伝わることは別な概念だと述べている。それは、量子を観測して確定させたとしても、どの値になるかは事前にはわからないので、反対の粒子に対して任意の状態を送ることはできないのだ。これはなるほどと思った。それと、この二つの粒子というのは現実にはどれぐらいの距離を離しても量子もつれ状態を維持するのだろう?その距離が光年に近くなっても維持されるのであれば、不思議な状態を観測することになるだろうが、そんなに離しても状態が維持されるのだろうか?