隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで

三田一郎氏の科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまでを読んだ。この本も若干本のタイトルと内容が一致していないという印象を受けた。少なくとも科学者と言われている人たちがなぜ神を信じるのかに関して明確には主張している文書等は存在しないようなのだ。筆者は科学者として、コペルニクスガリレオニュートンアインシュタイン、ボーア、ハイゼンベルグディラック、ホーキングらを取り上げていて、彼らの業績を説明している。ほとんどの科学者は近世の時代の人たちで、彼らが科学を志したときにはすでに何らかの宗教的なかかわりを持っていたので、科学者が神を信じるというよりも、神を信じていたものが科学的な思考で物事を調べて、説明しようとしたという方が実態だろう。ただ、アインシュタインはちょっと例外で、子供の頃の体験から、宗教には懐疑的だったようだ。アインシュタインにとっての神は自然法則の制定者であるとイメージしていたようで、何ら宗教的なものではない。また、ホーキングも無神論者だと思われるが、筆者はそれは彼の本意ではないだろうと述べている。では、どのような神をホーキングが想定していたのかは不明だ。

興味深かった点というか、知らなかったことは、なぜあれほど教会は天動説に固執したかという点に関してだ。確かに聖書には地動説も天動説も出てこないはずだ。これはトマス・アキナスが書いた神学大全が14世紀に教会公認のテキストになったためなのだという。トマス・アキナスは信仰と理性の一致を目指し、理性として持ち出したのがアリストテレスの天動説だった。宇宙の中心に地球があり、地球に神が存在する。太陽や他の天体は神の手によって天球上を動かされているのだという考えは、理性による神の存在証明とされ、当時の教会としては正統性を主張するための絶好の後ろ盾だった。