隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

夜露がたり

砂原浩太朗氏の夜露がたりを読んだ。これは時代小説の短編集で、全体的にほろ苦い、あるいは純粋に苦い作品が多くて、最後の「妾の子」だけがなんとなくいい話風に終わっている。250ページぐらいの本に8編収録されているので、一編辺り30ページちょっとぐらいの本当に短い作品が収められている。収録作品は、「帰ってきた」、「向こうがわ」、「死んでくれ」、「さざなみ」、「錆びた刀」、「幼なじみ」、「半分」、「妾の子」。今までの作品は架空の藩神山藩の武士の話が多かったと思うが、今回の短編集は浪人が主人公の作品もあるが、それ以外は町人が主人公だった。そのせいか今までの作品とはちょっと違った印象を受けた。いわゆる人情噺的な傾向の作品が多い。ただ、30ページ程度というのは読みやすいけれども、あまりにも短く、ちょっと物足りなさも感じられた。