隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

でぃすぺる

今村昌弘氏のでぃすぺるを読んだ。これもある種特殊設定ミステリーだ。この物語の主人公はある地方の奥郷町に住む小学六年生の木島悠介だ。彼は半ば巻き込まれるようにして、この不思議な物語に分け入っていくことになる。事の発端は2学期に掲示係になり、同じ係の波多野沙月に奥郷町の七不思議について質問されたことから始まる。彼女の従姉妹が一年前に殺されて、未だに犯人が捕まっていない。従姉妹が残したパソコンを調べていたら、奥郷町の七不思議に関する文章が残されていたが、実際には6つの物語しか残されていなかった。オカルトマニアの悠介はこの町の怪談とか不思議な話を他にも知っていたが、あと一つを選ぶ明確な基準もないので、最後の一つを選べなかった。それで、もう一人の掲示係の畑美奈とともに、実際に6つの不思議を調べ始めるのだった。調べたことを壁新聞にして発表しようというのが彼らの目論見だったのだが、実際に調べ始めると色々と不思議なことに彼らは遭遇していった。

オカルトマニアの悠介は沙月の従姉妹の事件や怪談話は何か正体不明の超常現象のようにとらえていて、その視点から一連のことを調べる。一方沙月はオカルト的な事には興味もなく、存在していないと思っているので、事件は犯人がいると思っている。美奈は二人の意見に客観的な判断を加える役どころになっている。彼らが七不思議を調査すると不思議な出来事に出くわしていて、それらにどういう説明を加えるのかと思っていたら……という展開になってしまった。だが、沙月の従姉妹の事件はちゃんと合理的な説明を加えているので、その点は全くフェアーだった。この作者の作品は第一作目からかなり注目されていたけれども、同じテイストの作品なのだろうか?ちょっと興味が湧いてきた。