隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

キツネ狩り

寺嶌曜氏のキツネ狩りを読んだ。この作品は特殊設定ミステリーというか、サイコサスペンスというか、あまり分類する必要はないとは思うが、純粋な謎解きのミステリーではない。

主人公は尾崎冴子という警察官で、3年前に婚約者とタンデムツーリングをしていた時に事故にあった。その事故で婚約者は死亡し、自身は右目の視力を失った。それから3年たっても、目に異常はないのだが、視力は回復しなかった。眼科の主治医であり友人でもある霧島環奈と事故現場を訪れた時に、突如として3年前の光景が視力を失ったはずの右目に映るようになってしまった。そこで、なぜあのバイク事故が起きたのかの理由が分かったのだ。そこには事故を誘発した人物がいた。この物語は、この特殊能力を持つようになった尾崎冴子が登坂警察署に新設された継続捜査支援室で未解決の事件を追う物語で、支援室の室長は新任の登坂警察署署長でもある深澤航とかっての上司だったある弓削警部補がともに事件に挑んでいく。

さすがに過去を見られるというのはあまりにも強い力なので、だいたい3年ぐらい前しか見えないという縛りがある。任意の時点を見ることはできないようにしている。それと、右目と左目の両方を使うと疲労が蓄積するので、長時間は使えないという縛りもあるのだが、こちらの方は尾崎の暴走気味の行動で往々に脇に押しやられる傾向にはある。読後の感想は、この小説はスピーディーで無駄がないと感じた。最初のプロローグの事件が継続捜査支援室が最初に取り組む事件になる。この事件と過去の様々の事件とが色々繋がっていく筋立ては、先がどうなるのか、どこまで事件が広がるのか気になる物語の構成だった。エピローグで弓削が被った未解決である事件が取り上げられているのは、続編を想定して書いているのだろうか?そちらも読んでみたいと感じている。