隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

バールの正しい使い方

青本平氏のバールの正しい使い方を読んだ。小学生の要目礼恩は父親の都合で転校を繰り返していた。この物語は彼が転校先の学校で遭遇した事件に関するミステリーの連作小説になっている。収録されているのは「狼とカメレオン」、「タイムマシンとカメレオン」、「五人とカメレオン」、「靴の中のカメレオン」、「ブルーバックとカメレオン」、「ライオンとカメレオン」とプロローグとエピローグだ。

この連作にはバールの怪人というのが共通のキーワードになっている(ただ、必ずしも全てのストリーに出てくるわけではないので、厳密には共通とは言い難い)。それが本書のタイトルに使われている理由だろう。読んでみて、一話目から、あれっと思わざるを得なかった。礼恩は父親と二人暮らしの様なのだが、仕事が忙しく、早紀さんという父親の恋人が礼恩の面倒を見ていた。礼恩が遭遇した事件を早紀さんに推理して語るのだが、早紀さんからおかしな点が指摘されて、という感じのストーリ展開が共通のパターンかと思うと、一話目の最後で早紀さんの秘密が明らかにされ、しかも物語から退場してしまって2度と出てこない。この時点で「早紀さんは必要だったのか?」と不思議に思ったのだが、2話目がうまいようにミスディレクションされるようなストーリになっていて、楽しめた。ところが3話目はなぜこのストーリーが書かれたのかよくわからないし、物語も謎が解明されず中途半端な状態で終わっている。バールも出てこない。4話目もバールは出てこないし、短くて読んでいてなんとなくストーリーがわかってしまった。5話目から再びバールが出てきて、何となく作者の書きたかったのは5話、6話、エピローグだったのじゃないかという気がした。そうなると、1から4話って本当にこの小説に必要だったのだろうかと疑問に思わざるを得ない。