隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

君の教室が永遠の眠りにつくまで

鵺野莉紗氏の君の教室が永遠の眠りにつくまでを読んだ。本作は第42回横溝正史ミステリ&ホラー大賞の優秀賞受賞作だ。この作品も特殊設定の作品で、どのような特殊設定かを書いてしまうとネタバラシになるので書けない。舞台は北海道の不思子町で、そこに暮らす小学六年生の遠野葵と同級生の落合紫子は無二の親友であったが、あることをきっかけに仲たがいしてしまったようだ。担任の石井先生が葵に知恵を授けてくれて、ある儀式を実行すれば仲直りできると教えてくれた。ところが石井先生が急に病気になり学校を休んでしまい、代わりに狭間先生が来た。石井先生から儀式に必要なものをもらわないといけない葵は気が気でなくなる。

小説は、0、第一部、第二部、第三部、エピローグから構成されているが、第一部はこの儀式が一つの山場なのだが、その内容を知った時は、頭の中が「???」になってしまった。石井先生はなぜそんなことを実行するように葵に言ったのかこの時点では全く想像がつかなかった。そして、第一部の終盤に向けてこの作品の特殊設定が明らかになるところで、「ああなるほど」なったところもあるが、依然として儀式の理由がわからなかった。それはそれ以降を読まないとわからない。どちらかというと、この小説はホラーの比重が多いよう感じた。この街を覆う不思議な雲や町に住む人々が行方不明になっている辺りが何とも言えない不気味な感じを物語に与えている。色々な謎は徐々に説明され、明らかになるのだが、第三部の終からエピローグにかけては現実世界の出来事ではないと感じられる。それと、葵の父親が犯した殺人に関しては理由が明らかにされていないのが気になった。

もう一つ不思議なのはamazonのあらすじに書かれているのは間違いか含まれている。「葵が犯した過ちがきっかけで、研究者をしている紫子の父のスキャンダルが暴かれる」というのは間違い。葵はそのような過ちを犯していないし、縁子の父親のスキャンダルは別な話。「百合は葵に「私はあなたの秘密も過ちも知っている。そして私だけがあなたを助けることができる」」も間違い。このようなことはない。これは改稿前のストーリーに基づいてあらすじを書いてしまったのだろうか?