隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

不実在探偵の推理

井上悠宇氏の不実在探偵の推理を読んだ。これを最初に読んだときは、この小説も特殊設定もののミステリーだと思った。この小説の特徴はタイトルにもある通り、探偵が不実在なのだ。どいう事かというと、大学生の菊理現が黒い箱の中にあるダイスを見て、質問に、「イエス」、「ノー」、「関係なし」などの回答する。それによって推理が進んでいくというストリーなのだ。箱の中のダイスの目が質問に応じて変わるので、現は探偵がいると信じている。しかし、目には見えないのだ。

本書には4話収録されていて、それぞれのタイトルは「不実探偵としたいの花」、「不実探偵の存在証明」、「不実探偵と殺神事件」、「不実探偵と埋められた罪」となっている。2話目の「不実探偵の存在証明」で現が不実探偵と巡り合うことになった経緯のストリーなので、謎は一切ない。しかし、1話目では全く姿が見えない設定だったのが、ここでは長い黒髪の女性が現れる設定に変わっている。こうするなら一話目もそれに合わせて書き換えた方がよかったと思う。

この小説を読んでから時間が経つにしたがって、果たしてこれはミステリーなのかという疑問も湧いてきた。謎の解明に至る過程に出てくるのがいわゆる「水平思考」で、これだと論理的に謎を解決しているのではなく、直観に頼っているのではないかという気がしてきたのだ。もっとも、私は世間で言われている水平思考クイズの類があまり好きではない。というか、何が面白いか理解できないのだ。だからそう感じるのかもしれない。水平思考クイズが好きなひとならば、本書は面白いのかもしれない。