隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

友が消えた夏 終わらない探偵物語

門前典之氏の友が消えた夏 終わらない探偵物語を読んだ。これはよくできた構成のミステリーだ。現在と過去が目まぐるしく交錯して、作者の目晦ましに見事はまってしまった。現在(2007年の夏)の時点では、ある手記をもとに探偵の蜘蛛手が過去に起きた演劇部部員の大学生が複数人殺された事件を推理し、過去のパート一つではその手記が挟み込まれている。それとは別の過去のパートでは何者かにタクシーで拉致された女性のストーリが進行している。それとは別にプロローグ、イントルード、エンディングがあり、当然のことながら全ては何らかのつながりがあるのだ。

このミステリーはネタバレになるので詳細を書きにくい。読み終わった後ちょっと疑問に思ったことがある。「合宿所に居合わせた精華大学の劇団員たちが、半焼した建物から白骨死体で発見され」と一章の現在のパートで書かれているし、あらすじにもそのようなことが書かれているが、これは物語の中で実際に起きたこととは違っている。実際には半島の突端にある某大学所有の洋館が火災により半壊し、焼け跡から4人の焼死体が発見された。そして焼死体は頭部がなかったというのが事件の概要だ。この点だけはなぜ白骨死体というように書かれているのかが不思議だ。