隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

27000冊ガーデン

大崎梢氏の27000冊ガーデンを読んだ。本書は高校の学校司書を主人公にした日常のミステリだ。27000冊というのは大体高校の図書室(本書の中では一貫して図書館と呼んでいるが、独立した建物ではないので図書館と呼ぶのはちょっと奇妙に感じた)にある本の冊数のようだ。

この本は短編集で、「放課後リーディング」、「過去と今と密室と」、「せいしょる、せいしょられる」、「クリスティにあらず」、「空を見上げて」の5編が収録されている。本書の主人公は学校司書の星川駒子なのだが、実は探偵役というかするどい指摘をするのが、図書室に出入りしている書店員の針谷敬斗だ。

「放課後リーディング」はミステリーとしてはあまり謎がはっきりしていないようなストーリーだった。「過去と今と密室と」は駒子の司書仲間の高校で、施錠されている図書室のあったディスプレイが荒らされていた。ある種の密室事件だ。針谷がその学校の卒業生で、昔も密室事件があったという。ある棚の本が背表紙を内側にされていて、3冊だけ正しい向きでは言っていた。その3冊は「十二番目の天使」「34丁目の奇跡」、「百人一首の秘密」。この意味は何か?暗号も織り交ぜた小説で、これはなかなか面白かった。「せいしょる、せいしょられる」はこの「せいしょる」が何を意味するかをあれやこれや考えるのだが、全く違う事に結びてけて駒子達は行動する。たまたま結果オーライだっただけで、結構暴走気味な行動だ。「クリスティにあらず」では生徒の持ち物が隠されて、隠されたものは見つかるのだが、図書室の本も一緒に置かれている。それがABC殺人事件に似ていると言い出す生徒がいてというストーリー。これは途中まで面白かったが、この設定で最後まで行くには舞台にちょっと無理があったのかもしれない。「空を見上げて」は春雨ずくしの料理が載っている本を探してほしいという生徒の依頼で、作者を絞り込むところがちょっと強引な感じがしたが、これも割と面白かった。