隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

スペース金融道

宮内悠介氏のスペース金融道を読んだ。これも「超動く家」のようなバカSF的なところがある、コメディタッチのSFだ。

人類が最初に植民に成功した惑星。だから(でもなぜか)二番街と呼ばれている惑星。その惑星にある新星金融。借りる人には誰でも貸す。アンドロイドだろうと、バクテリアであろうと、人工生命であろうと。そして、借金が焦げ付きそうになったり、焦げ付いたら、すかさず回収する。そこが、宇宙だろうと、深海だろうと、核融合炉だろうと、零下190度の惑星だろうと、絶対取り立てる。そんな極道的なポリシーが匂ってきそうな金融会社の上司ユーセフとその部下の私は、今日も過酷な取り立ての向かっているのだった。

本書は連作短編で、5編収録されており、タイトルはそれぞれ、「スペース金融道」、「スペース地獄篇」、「スペース蜃気楼」、「スペース珊瑚礁」、「スペース決算」。

本シリーズのハチャメチャなところは、量子金融工学というのをでっちあげているところで、量子力学金融工学は確立微分方程式でつながっているからで、だから、宇宙をまたいだオプション取引デリバティブが発生するのは歴史の必然だと嘯いているところ。当然主人公の私にはちんぷんかんぷんで理解できない。この主人公の私は上司のユーセフのパワハラまがいの仕打ちに耐えながら、借金の取り立てをおこなしていくのだが、実は天才プログラマーという顔を持ち、あっという間にプログラムを作り上げてしまう。一方上司のユーセフはかっては量子金融工学の研究者であったが、量子金融工学アインシュタインの相対性原理の影響のせいで、ブラックホール解が出現し、金融破綻してしまった。その後、ムスリムに改宗し、借金の取り立てをしているという変わり者だ。この設定だけでもかなりハチャメチャだ。