隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

2019-01-01から1年間の記事一覧

巨神降臨

シルヴァン・ヌーヴェルの巨神降臨を読んだ。本作は巨神計画から続いてきた巨神シリーズ三部作の最終巻だ。前回、EDCのメンバーが突然巨神テーミスとともに宇宙に放り出されたところで終わって、「いったいどうストリーが続くのだろう?次巻は第一巻と第二巻…

我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち

川端裕人氏の我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たちを読んだ。この本を著しているのは、サブタイトルになっている「アジアから消えた~」の部分であろう。かってアジアには様々な原人がいたが、その後ホモ・サピエンスがこの地域に増…

エステルハージ博士の事件簿

アヴラム・デイヴィッドスンのエステルハージ博士の事件簿(原題 The Enquiries of Doctor Eszterhazy)を読んだ。東欧にある架空のスキタイ=パンノニア=トランスバスカニア三重帝国、その首府の大都ベラに住む大博士エンゲルト・エステルハージ。博士号は法…

生命の歴史は繰り返すのか?ー進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む

ジョナサン・B・ソロスの生命の歴史は繰り返すのか?ー進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む(原題 Improbable Destinies: Fate, Chance and the Future of Evolution)を読んだ。本書は多岐にわたる例示が含まれていて非常に興味深い本だ。大きなテーマとしては…

世界の英語ができるまで

唐澤一友氏の世界の英語ができるまでを読んだ。英語の素となった言語は、現在のユトランド半島やオランダ・ドイツの北部沿岸地域で細々とつかわれた言語だったが、それがイギリスに根付き、現在では世界で最も使われる言語となっている。本書は「世界の英語…

FreeBSD u-boot-nanopi-neo2-2019.04はNanoPi NEO2 NAS kitではブートしない?

2020/6/20追記 起動しない原因がNAS kitに由来するもので、LTSとは関係ないので、内容及びタイトルを一部修正たぶん5月ぐらいだと思うのだが、FreeBSDのパッケージにNanoPi NEO2用のu-bootが追加された。i386に現れてからarm64に現れるまで時間差があり、試…

大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済

高槻泰郎氏の大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済を読んだ。時代小説などを読んでいると、江戸時代に大坂の堂島に米市場があり、そこでは先物市場がすでにあって、これは世界的に見ても類を見ないことだというようなことを目にすることがある。本書は、この堂…

刀と傘

伊吹亜門氏の刀と傘を読んだ。これは連作短編のミステリーで、幕末から明治の最初の頃が舞台になっている。そして、一方の主人公が実在の人物である江藤新平で、もう一人の主人公が架空に人物と思われる尾張藩公用人の狩野師光である。この二人が探偵役なの…

諡-天皇の呼び名

野村朋弘氏の諡-天皇の呼び名を読んだ。よく天皇一覧に載っている○○天皇というのは、明治以降は別として、全て漢風諡号だと思っていた。ところがこれが全くの間違いだということに気付かされた。実はあれは漢風諡号と追号の組み合わせなのだ。上皇の日本史 -…

遺伝人類学入門

太田博樹氏の遺伝人類学入門を読んだ。人類学というのは聞いたことがあるが、遺伝人類学とは何だろう?と思って読み始めた。遺伝人類学を短く言うと、人類という集団を遺伝という観点から研究する分野のようだ。これも近年遺伝子の解析が高速化・低価格化し…

ニュートンのりんご、アインシュタインの神 -科学神話の虚実-

アルベルト・A・マルティネスのニュートンのりんご、アインシュタインの神 -科学神話の虚実- (原題 Science Secrets The Truth about Darwin's Finches, Einstein's Wife and Other Myths)を読んだ。本書は科学者や科学についいて巷間に流布していて半ば伝説…

郝景芳短篇集

郝景芳短篇集(原題 孤独深处)読んだ。「折りたたみ北京」でヒューゴ賞を受賞した郝景芳の短編集だ。ただ、「折りたたみ北京」はケン・リュウの英訳からの日本語訳というややこしい関係になっているが、本短編集に収録されているのは中国語から日本語の翻訳と…

ヒト夜の永い夢

柴田勝家氏のヒト夜の永い夢を読んだ。これは怪作(褒め言葉)だ。あーだ、こーだ書くと、かえって面白くなくなりそうでためらわれるのだが、何も書かないと一体何の話なのだということになってしまう。本の裏に書いてある慷慨程度は書いておくべきか?1927年…

ノースライト

横山秀夫氏のノースライトを読んだ。これは北上ラジオの第3回目で紹介されていた。本の雑誌 Presents 北上ラジオ 第3回 - YouTube横山秀夫氏というと警察小説で、主人公は捜査関係の刑事ではない警察職員というイメージがあったのだが、この小説はミステリ…

花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生

デイヴィッド グランの花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生(原題 Killers of the Flower Moon The Osage Murders and the Birth of the FBI)を読んだ。アメリカ先住民族はそれぞれの月に名前を付けた。5月はFlower Moonなので、本来は花月…

上方落語史観

高島幸次氏の上方落語史観を読んだ。本書は上方落語を切り口にして、幕末・明治の大阪の歴史・風土について解説した本である。

偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理

降田天氏の偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理を読んだ。これは短編集で、倒叙物のミステリーだ。ストーリーの前半は犯人によって物語が語られていくが、後半に入ると、神倉駅前交番に勤務する狩野雷太が登場して、犯人と狩野の対決(と言っても、話し好き…

カムパネルラ版 銀河鉄道の夜

長野まゆみ氏のカムパネルラ版 銀河鉄道の夜を読んだ。タイトルからカムパネルラを主人公にした銀河鉄道の旅の描き直しなのかと思って読んだのだが、これはむしろ小説いうよりも、宮沢賢治評であろう。その点はちょっと期待外れだった。本書には「カムパネル…

虚構推理短編集 岩永琴子の出現

城平京氏の虚構推理短編集 岩永琴子の出現を読んだ。前作を読んでから3年も経過しているので、前作の事はあまり記憶に残っていないのだが、前作を読んでいなくても、本作を読むのに問題はなかった。ストーリー的には完全に独立した短編集になっている。妖怪…

乗客ナンバー23の消失

セバスチャン フィツェックの乗客ナンバー23の消失(原題 PASSENGER 23)を読んだ。ドイツ人の潜入捜査官マルティン・シュヴァルツはある出来事をきっかけに、本当に命知らずの危険な任務に就いていた。そして、今回も危険な潜入捜査を終えたところに、見知ら…

土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話

デイビッド・モントゴメリーの土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話(原題 Growing a Revolution)を読んだ。生物の多様化が重要だとよく言われている。私はこの言葉の意味することをあまり深く考えず、半ば盲目的に正しいものとしていたのだが、本書…

忘却する戦後ヨーロッパ 内戦と独裁の過去を前に

飯田芳弘氏の忘却する戦後ヨーロッパを読んだ。イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞したときにNHKで再放送された「カズオ・イシグロ 文学白熱教室」を見た。 この番組はイシグロ氏が学生たちに自身の創作について語り、学生と討論する番組だったのだが、その中…

天地に燦たり

川越宗一氏の天地に燦たりを読んだ。時代は秀吉政権が全国を統一する直前から始まり、島津の琉球入りまでを描いている。本小説は三人の視点で物語が語られていく。一人は島津の侍で、大野七郎(後の樺山久高)だけが史実の人物であろうと思われる。彼は戦を厭…

凍てつく太陽

葉真中顕氏の凍てつく太陽を読んだ。時代は昭和十九年の年末、北海道の室蘭を舞台に小説は始まる。日崎八尋は身分を隠して、室蘭の軍需工場に人を派遣している飯場に潜り込んでいた。その飯場には朝鮮半島出身の労働者が犇めいてた。八尋は実は特高刑事であ…

公家たちの幕末維新-ペリー来航から華族誕生へ

刑部芳則氏の公家たちの幕末維新を読んだ。幕末から明治維新、明治政府の成立過程を公家の視点から描写したのが本書である。 公家たちの秩序 序章として、公家たちの秩序、まず家格が説明されている。摂家とか清華家というのは色々なところで見聞きするが、…

ある男

平野啓一郎氏のある男を読んだ。本書は以前から読もうと思っていたのだが、北上ラジオの第2回目で取り上げられていた。本の雑誌presents 北上ラジオ 第2回 - YouTube 恭一は、眉間に皺を寄せて、「ハ?」という顔をした。そして、もう一度写真に目を遣っ…

いやでも物理が面白くなる〈新版〉

志村史夫氏のいやでも物理が面白くなる〈新版〉を読んだ。本書は身近に存在する物理のテーマを光、電気、力・エネルギー、原子、時間・空間(相対性理論)の各テーマに沿って分類し、なぜそうなっているのかを分かりやすく解説している入門書である。本書のサ…

上皇の日本史

本郷和人先生の上皇の日本史を読んだ。本書では時それぞれの上皇のありようを大和時代の大王の時代から明治維新までのタイムスケールで解説している。

超動く家にて 宮内悠介短編集

宮内悠介氏の超動く家にて 宮内悠介短編集を読んだ。これは単行本未収録作品の短編集で「トランジスタ技術の圧縮」、「文学部のこと」、「アニマとエーファ」、「今日泥棒」、「エターナル・レガシー」、「超動く家にて」、「夜間飛行」、「弥生の鯨」、「法…

隣のずこずこ

柿村将彦氏の隣のずこずこを読んだ。この本で語られている物語は民話のようだ。何の前触れもなく不思議なことが起こり、何の説明もなく物語は終息を迎え終わっていく。そこには何の教訓じみたこともない。怪異は怪異であり、それだけだ。舞台は関西地方のど…