隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

乗客ナンバー23の消失

セバスチャン フィツェックの乗客ナンバー23の消失(原題 PASSENGER 23)を読んだ。

ドイツ人の潜入捜査官マルティン・シュヴァルツはある出来事をきっかけに、本当に命知らずの危険な任務に就いていた。そして、今回も危険な潜入捜査を終えたところに、見知らぬ相手から電話ががかってきた。あの事件、5年前の「海のサルタン号」で姿を消した妻子にかかわる情報を持っているという人物から。マルティンは全てを投げ出して、海のサルタン号に乗船すべくイギリスのサザンプトンに向かった。謎の人物は直接会わないと情報を明かさなというからだ。そして、その海のサルタン号では2か月前に行方不明になっていた少女が忽然と姿を現したところだったのだ。いったいどこにいたというのだろう?

こんな出だしで始まる乗客ナンバー23の消失であるが、ストーリーが二重、三重に絡み合っていて、作者の仕込んだ罠にはまること間違いなしのミステリーだ。最後の最後まで、作者の仕掛けが施されている。残りのページ数がかなりあるのに、ストーリーの終わりが見えてきて、あれ、と思っていると、もうひと波乱あるという、実に飽きさせない構成になっている。しかも、謝辞の後にエピローグがあるという不思議な構成になっている。世界の海を周遊する豪華客船という隔離された世界。だがその世界は途方もなく大きい。どこかに隠れる場所があっても不思議ではないが、長期間隠れることなの可能なのだろうか?様々の謎を散らばめて、最後まで一気に読み進められるよくできたストーリーになっている。