隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

落語推理 迷宮亭

落語推理 迷宮亭を読んだ。本書は落語とミステリーを合わせたアンソロジーになっていて、収録作は「変調二人羽織(連城三紀彦)」、「貧乏花見殺人事件(我孫子武丸)」、「崇徳院(伽古屋圭市)」、「幻燈(快楽亭ブラック)」、「落語家変相図(大下宇陀字)」、「落研の殺人(那伽井聖)」、「落語 味噌漉し(結城昌治)」、「擬宝珠(都筑道夫)」。

本書にも収録されているが落語+ミステリーというと都筑道夫氏の「きまぐれ砂絵(なめくじ長屋捕り物さわぎ)」を思い浮かべて、落語の題材にヒントを得たミステリーだろうと勝手に思っていたのだが、全編そういうわけではなく、落語に関係する物事・人物が登場するミステリーだった。ただし、「落語 味噌漉し」は落語であって、ミステリーではない。この噺の中には謎は何もない。ただ、これが山東京伝の作品(江戸生艶気樺焼)に基づいてることが興味深かった。この作品は現代文で書かれていて、これは落語そのものだと思う。それと、快楽亭ブラックは初代の快楽亭ブラックで、この作品は明治時代のイギリスを舞台にしたミステリー(というほどの謎はないが)なのだが、登場人物がなぜかみんな日本人名という不思議な作品だった。それと、都筑氏の作品が収録されているきまぐれ砂絵には、擬宝珠よりも面白い作品があったような気がするのだが、何せ最後に読んでから時間がたちすぎて、内容が全然思い出せないので、もう一度読もうと思った。