隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

ロボットには尻尾がない

ヘンリー・カットナーの ロボットには尻尾がない (原題 Robots Have No Tails)を読んだ。アル中の発明家ギャロウェイ・ギャラガーが酔っ払っている時にとてつもないものを発明して、それにまつわるトラブルに悩まされるというSF調のドタバトコメディー。ギャラガーは酔っぱらっているほうが頭の冴えがよく、きちんとした科学の教育も受けていないのにもかかわらず、とんでもないものを作ってしまう。酒飲みにはよくあることだが、酔いがさめると何があったかすっかり忘れてしまっているので、どのような原理で発明品が動くのかとか、どのように操作するのか、どのようなことに使えるのかとなどのことが全然わからない。しかも、酔っぱらっている時に、誰かの依頼を受けて金までもらっているので、後からトラブルが発生して、警察の厄介になったり、裁判に引きずり出されたりする。最後にはどうにかこうにか解決に至るのだが、毎回とてつもない厄介を背負い込んでしまうという5編の小説が収められている短編集だ。

収録されている作品は「タイム・ロッカー」、「世界はわれらのもの」、「うぬぼれロボット」、「Gプラス」、「エクス・マキナ」。本小説はいちおうSFに分類されるのだろうが、発明品がSF的であるだけで、どちらかというとこれらの作品はコメディーで、気軽に読めるものばかりだ。

この中の最後の短編で、ギャラガーの作ったロボットが裁判で証言することになるのだが、「あなたは神の前で、真実を、真実のみを語ると誓いますか?」という宣誓供述する場面で、ロボットの神とは何かという話になり、ロボットが「わたしにそっくりです」と答えたところから、最終的にはロボットの供述が無効になってしまう場面がある。「なるほど。あれは神に対して宣誓しているのか。だから聖書が必要なのか」と思いいたった。日本でも裁判で宣誓供述するが、それは良心にしたがってだから、神は関係ない。この部分はいかにもアメリカ的というか、キリスト教的だと思った。