隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

さよならの儀式

宮部みゆき氏のさよならの儀式を読んだ。著者初のSF短編ということで、興味を持ったので、読んでみた。宮部みゆき氏というとやはりミステリー作家という印象がある。収録作品は8編。「母の法律」、「戦闘員」、「わたしとワタシ」、「さよならの儀式」、「星に願いを」、「聖痕」、「海神の裔」、「保安官の明日」。「海神の裔」は屍者たちの帝国に収録されていたので、既に読んでいた。

「母の法律」は虐待を受ける子供とその親を救済する法律である「マザー法」が施行されている世界の物語。子供を育てる能力がないと国に判断されると、子供から親は切り離れてしまう世界。施設にいた二葉は憲一・咲子夫婦の養父母の下で育てられたが、咲子が病気で亡くなったために、再び施設の戻らなければならなかった。その二葉の実の母が生きており、実は死刑囚であることを知り会いに行くのだが。この物語の結末は強烈な皮肉的な最後になっている。

「戦闘員」は監視カメラのことが気になり調べている孤独な老人の物語なのだが、どうなるのだろうと思っていると物語が終わってしまった。短編だから仕方がないか。

「わたしとワタシ」45歳のわたしの前に、中学生のワタシが現れた。過去の自分が現在にやってくるので、タイムパラドックスは発生しないと思いきや、過去のワタシは過去に戻ってしまったので、何かが変わるのか?

「さよならの儀式」ロボットの処分場での物語。長年一緒に暮らしてきたロボット処分しなければならない若い娘はロボットのメモリーが新しいロボットにコピーできないことを知り、最後の別れをしなければならないのだと知る。物悲しいストーリだ。

「星に願いを」ちょっとよくわからない物語だった。物語の最後のところでは、妹が体調を崩したことは既に起きたことだが、駅の無差別殺傷事件はまだ起きていないことのように感じたのだが、深山秋乃が途中から経験したことは予知夢?なのか、妄想なのか?

「聖痕」。あまりSF的ではないと感じた。聖痕というタイトルからキリスト教と関係あるものなのかと思い読み進めたのだが、結局なんだかよくわからなかった。

「海神の裔」。宮部流「屍者」の物語。屍者たちの帝国に収録されていて、既読だった。他の屍者たちの帝国に収録されている作品は元になる作品があるように思えるのだが、これは多分オリジナルのストリーだと思う。イギリスからやってきた「屍者」のトムが神と崇められる物語。

「保安官の明日」。仮想世界の物語なのかと思ったが、義体で作られた町での物語。ある男の妄執のために、繰り返される悲劇。出口はあるのだろうか?