隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

落語魅捨理全集 坊主の愉しみ

山口雅也氏の「落語魅捨理全集 坊主の愉しみ」を読んだ。『落語魅捨理全集 坊主の愉しみ』山口雅也|講談社文芸第三出版部|講談社BOOK倶楽部に落語とミステリの融合と書いてあるので、どんなものだろうと思って読んだ見た。

読む前は、都筑道夫氏の「きまぐれ砂絵」のような作品ではないかと想像していたのだが、実際にはミステリ要素はあまりなく、どちらかといゆと落語要素が強く、会話の中に密室殺人とかそういう用語が出てくるぐらいだった。ただし、「猫屋敷呪詛の婿入り」では怪異の正体を探るのがミステリー仕立てにはなっている。全体の趣向としては、おなじみの落語のおちの先を書くとか、別の角度から解説するという感じである。

あなたの人生の物語

テッド・チャンあなたの人生の物語を読んだ。映画「メッセージ」の原作だ。表題作のあなたの人生の物語を含めて8作収められている。

バビロンの塔

いわゆるバベルの塔の話だが、これとよく似た話をどこかで読んだような記憶があるのだが、何かの勘違いだろうか。バベルの塔の話がモチーフになっているので、何か似た話があっても不思議ではないと思うのだが。

あなたの人生の物語

小説を読んで、映画の後半(ヘプタポッドに爆弾をしかける辺り)部分からは映画オリジナルなのだと知った。小説の様に何をしに来たのか明らかにしないで終わる方がいいような気がする。それと、小説ではあの柿の種のような物体は出てこず、ルッキンググラスという通信装置が地上にあるという設定になっていて、こちらの方が納得のいく設定だと思う。あの大きな塊が、地上に降りてくる理由があまり感じられなかった。

一番どうなっているのかと思っていた、例の文字であるが、実際は彼らが通信端末を使って表示させているのが小説の表現だった。映画の様に空中に煙なようなもので書くのもありだとは思うが、ただでさえ複雑な図形で、それをどの時点の図形をとらえればいいかを判断するのも難しいだろうと思っていた。

一番重要なのは、なぜあの言語が時間を超える感覚を与えるかと説明だが、映画の方はそのあたりはあまりされていないが、小説では、人類は物事を

ある瞬間から生じる、次の瞬間。原因と結果は、過去から生じる未来という連鎖反応を作り出す。

と判断・理解しているが、ヘプタポッドは、

事象を一定期間の時間という視点から見ることにより、満足されねばならない要件、最小化もしくは最大化という目的があることが認識できる。そして、その目的を満たすには最初と最終の状態を知っていなければならない。原因が発生する前に結果に関する知識が必要となるのだ。

として捉えている。

なので、時間を超えるというよりも、原因と結果の両方を同時に認識するという解釈の方がだ正しいと思った。それと、娘とのエピソードは文章では過去形で書かれていないので、過去のエピソードではないということがそれとなく示されているが、映像では表現できないところだろう。

七十二文字

「名辞」とい言葉が明確に記述されることなく物語が進行していって、そこがもやもやしたのだが、この話も面白かった。「名辞」は最終的にはプログラム・コード・DNAなものなのではないかと思ったのだが。