隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

眼球堂の殺人

周木律氏の眼球堂の殺人を読んだ。眼球堂とは天才的な建築家である驫木煬がや家屋に建設した私邸だ。その屋敷に招待されたのが放浪の天才数学者十和田只人、そしてストーカーのように十和田にまとわりついき、半ば強引に同行してきたルポライター陸奥藍子の二人。

二人が発見した眼球堂の形状は異様であった。眼球堂はうっそうとした森に囲まれた斜面の広大な窪地にあった。眼球堂の本体ともいうべき巨大な円形の窪地は直径百メートル、深さ十七、八メートルぐらいはある。そしてその窪地の内面はなめらかな白い材質で覆われており、それは大理石だった。そして、その白い大理石の器には奇妙な構造物が収められていた。器の底から自生するように無秩序に林立する何十本の白柱群。そして、大きい平たい円柱の構造物。そして、この円柱の構造物は漆黒だった。そして、それ円柱の構造物にアクセスするための小さな小屋が二人の前にあるだけだったのだ。

館にたどり着くと招待されいたのは十和田だけではなく、各界で有名な著名人だった。精神学者の深浦征二、芸術家の三澤雪、編集者の造道静香、物理学者の南部耕一郎、政治家の黒石克彦。館の主の驫木煬は偏狭な考えの持ち主で、建築学こそあらゆる学問の中で最高だと信じており、物理学者の南部耕一郎は論敵の一人であり、最初の晩から建築学こそ最高の学問であると論じて、南部と口論になった。そして、翌日、眼球堂の主の死体が白柱群の一つに百舌の速贄のように突き刺さっているのが見つかった。しかし、この漆黒の円筒形の建物からは、白柱の所に行くすべがなく、それが本当に驫木煬の死体なのかを確かめるすべがなかったのだ。更に悪いことに、外に通じる扉がロックされてあかなくなり、又外部への唯一の連絡手段の電話も通じなくなっていた。

これは典型的なクローズサークルもので、この後第二、第三のと事件が起こっていくのだが、読後の感想としては「仕掛けが大きい、大き過ぎる」というものだった。作品としてはどうなのだろうか?トリックはフェアーなのだけれども、なんだかよく判らない殺人事件だった。