隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

文化戦争 - やわらかいプロパガンダがあなたを支配する -

ネイトー・トンプソンの文化戦争 - やわらかいプロパガンダがあなたを支配する - (原題 Culture As Weapon)を読んだ。

本書は文化を用いた大衆掌握・操作に関してのレポートなのだが、扱っている範囲が広い分、掘り下げ度が若干浅く感じた。本書が主にアメリカについて書かれていることが、そのように感じた原因の一つかもしれない。ただ、本書でも繰り返して述べられているが、人々が持っている恐怖心に付け込んだり、欲求を煽ることに文化(音楽、絵画、アート、演劇、文学)などが利用されており、20世紀の後半になってくると、それが資本主義の商業活動と強く結びついたことで、より過激に、より巧妙に隠されながら、人々に様々な影響を与えていている事例が色々と紹介されている。

ちょっと毛色が変わった内容としては、文化人類学の見地がイラク統治に利用されたことだろう。現地住民との摩擦を避け、占領軍に対して敵対意識を持たせないようにするために、現地の住民と積極的に交流することが行われた。不思議なことにこの政策は次のアフガン統治にも、より積極的に用いられたのだが、イラクほどアフガンでは成功を治めず、半ばアフガンの統治を放棄する形でアメリカが撤退したことだ。両者の違いが何だったのか、なぜアフガンでは失敗したのかが明確に書かれていなかったので、消化不良の感じがした。

また、企業が行うチャリティや慈善活動がCRM (Cause Related Marketing)の名のもとに、企業のブランドイメージ向上に用いられるようになってきているが、大量生産・大量消費の際限のないサイクルを生み出す資本主義自体が、慈善活動が改善しようとしている問題の多くを生み出しているのだとしたら、非常に皮肉なことであろうし、企業のCRMと慈善活動が結びつくことがよいことなのかという問題も発生してくる。そのような企業の活動は純粋な善行なのか、罪滅ぼし行為なのか判断が難しいところだ。