隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

ITエンジニアのための機械学習理論入門

中井悦司氏のITエンジニアのための機械学習理論入門を読んだ。最近はやりの深層学習ではない機械学習なので、タイトル通り本当入門書といった感じだ。カバーしている内容も、

といった辺りである。最小二乗法とか最尤推定機械学習かと言えば、ちょっと違うと思うのだが、最小二乗法の場合にも、トレーニングデータとテストデータを用意する必要があることが書かれていて、当たり前なのだが、なるほどと思ってしまった。昔々、大学時代に、何かの実験の実習で、測定データーから最小二乗法を用いて、一次関数の傾きと切片を求めるようなことをした経験がある。当時は全ての測定データを用いて、傾きと切片を求めていたが、このようにすると機械学習で起きる過学習のような状況(オーバーフィッテング)になってしまい、求めた傾きと切片は必ずしも最適なものではなくなって、計算に用いた測定データ以外には適応できなくなってしまう。当時は、オーバーフィッテングの話を聞いた記憶はない。

それと、教師なしの機械学習について、なんとなくわかったようなわかってないような、あやふやな感じだったが、k平均法の項目を読んで、クラスタリング(グループ化)のことだというのが、今回わかった。だが、最後の項目のベイズ推定は、未だによく判らない。

Self-Reference ENGINE

円城塔氏のSelf-Reference ENGINEを読んだ。例外小説の中からピックアップした本の中の一冊である。

本作には22編の短編が収められており、それぞれ関連しているようで、関連していないかもしれない。同じ名前を与えられている登場人物が登場する話もあるが、それが全くの同一体であることを保証することはできないのかもしれないし、する必要もないであろう。ただ一つ、それとなく示唆されているのは、イベントの発生により、この世界の時間の進み方が、過去から未来ではなくなった世界を描写した短編小説の物語群が本書である。

いくつかの話は関連性があるようにも見える。例えば、「Bullet」は母親の胎内にいるときに未来から銃撃され、頭蓋骨に銃弾があるリタとその幼馴染のジェイムズとリチャードの物語だ。これと同じ登場人物が「Return」にも出てきて、続きのようにも読めるが、本当に続きなのだろうか? 続きと読んでも差し支えないだろうし、別の物語とみなしても構わないだろう。この世界では、巨大知性体により絶えず何者かと電子戦が繰り返され、過去が改変されているのだ。それもこれも、イベントの所為である。

最後の所で、タイトルになっているSelf-Reference ENGINEが何者かが書かれている。

私の名はSelf-Referene ENGINE。

全てを語らないために、あらかじめ設計されなかった、もとより存在していない構造物。

 そう、この小説とはこういう小説なのだ。各短編に何らかの面白味を感じられればそれでよし。