隠居日録

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2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

知らないと恥をかくアフリカの問題 (石油資源の搾取の構図 ナイジェリア)

NHKラジオ第二の「カルチャーラジオ 歴史再発見」で放送されていた「アフリカは今~カオスと希望と」の第七回目。今回はナイジェリアの石油資源の搾取の構図について内容だ。

歴史

ナイジェリアは1914年にイギリスの植民地になったが、イギリスはハウサランド、ヨルバランド、イボランドという3つの地域をまとめて植民地にしたのであった。そして、独立するときにナイジェリアという一つの国にして独立させてしまった。ここにも多民族国家の問題が発生することになる。

国家の中に住む人たちに安全を保障する、その代り税金を払ってくれというのが国家の基本である。安全が保障されていない状態より安全が保障されている状態の方が、何倍も生産性が向上する。何をおいても安全である。安全がない状態では国家と呼べない。だが、国家が安全を何も保障してくれない状態がナイジェリアでは日常的に起きている。

現状

例えば、強盗が起きても警察が出てこないのだ。その強盗たちはみな銃を持っている。このようなことがアフリカで最大の都市ラゴスでほとんど毎朝のように起きているにもかかわらず、警察は出てこない。
こんなことが起きてる。ある外資系の会社に勤めているある家族が日曜日の朝教会に行くために準備をしていると、誰かが塀を乗り越えてやってくるのが見えた。あわてて玄関にカギをかけようとしたけれど間に合わなく、押し入られてしまった。彼らはピストルを持っていて、その家の主人を殴って、あるものを全部さらって、その家の車に全部詰め込んだ。そして強盗が次にしたのは、逃げるのではなく、隣の家に押し入ったのだ。隣の家でも同じことをして、また次の隣の家へ。結局4軒で同じことをした。警察に連絡すると、車がないので迎えに来いという。隣の家の車で迎えに行くと、警察は、「西隣にベナンという国があり、強盗はそこで車を売り払うつもりである。俺たちは国境まで車の捜索に行く。そのための交通費と弁当代を今よこせ」という。交通費と弁当代を出したが、結局それっきりで、警察からは何の連絡もない。

つまり、国家が安全というものを何も保障してくれないという状態が起きているのだ。

教育も国家の非常に重要な仕事である。教育はいくら投資をしても、その見返りが金銭的に返ってくるわけではない。しかし、教育がなければ国の将来は何もない。教育を受けたものが国をよくしてくれるという形でしか返ってこない。なので、これはビジネスとしてやっても仕方がなくて、国家がやらなければならない。国家がやらなければならないのだが、ナイジェリアでは学校の先生たちの給料の遅配がごく普通に起きている。なぜ、遅配が起きるかというと、文部省の役人や地方の役人が先生たちの給料を自分の口座に入れてしまう。ナイジェリアは投資促進のために利息が高くなっているので、数か月口座に高額のお金を入れておくと相当の利息が手に入る。また、給料を自分の口座に入れていることを忘れて使い込んでしまう場合もある。こうなると、遅配ではなく、欠配になってしまう。


2012年の統計でナイジェリアは850億ドルの石油を産出している。ナイジェリアの人口は1億6千万人ぐらいだが、国民の91%以下が一日2ドル以下で生活している。850億ドルの石油に収入あるにもかかわらず、ナイジェリアの外為市場に出てくるのは100億ドル程度で、残りの外貨がどこに行ったか分からない状態になっている。


ナイジェリアにはライセンス屋という商売がある。例えばナイジェリアのある会社が日本から300万円の自動車を100台輸入したい場合、外貨割り当てを受けなければならない。だが、役所に外貨割り当ての申請書を書いても返事など来ない。ここに、このライセンス屋というのが登場する。300万円で100台なので3億円分の外貨が必要である。その外貨に対して12.5%のリベートを払えば、外貨割り当てを取ってきてやると、ライセンス屋は言う。リベートの2.5%のうちの10%(3000万円)は中央銀行に役人に渡す。2.5%はライセンス屋の取り分になるということだ。

ハウサーの人口は30%、ヨルバ20%、イボ18%。ここでも同じように選挙をすると中央政府はハウサー人たちに占められることになる。ここでも部族による国家の私物化が起きているのである。

ビアフラ戦争

この状況に嫌気を指したイボ族は1967年にナイジェリアから分離独立を宣言し(ビアフラ共和国)、その結果ナイジェリア政府軍との間でビアフラ戦争が勃発した。イギリスはナイジェリア政府軍を支援して、戦争に参加した。ビアフラは周りを包囲されたために食料・物資が遮断されたために、4年間で180万から300万の人たちが飢えで死んだ。

石油は実は殆どイボランドのポートハーコートから算出されている。ここで石油を採掘しているのはロイヤルダッチシェル、BP、アメリカの石油会社だ。ここで石油を採掘して、ナイジェリアの中央政府に代金を支払っている。しかし、ナイジェリア政府は現地のイボランドに対しては何も見返りをもたらさない。そのため、学校もないし、企業も育っていない。

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