隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

タイムボックス

アンドリ・S.マグナソンの タイムボックス(原題 Tímakistan)を読んだ。本書は児童文学の範疇に含まれると思われる。物語は現代と地続きのような世界から始まる。そこでは経済危機が起こっていて、誰にもその解決策が見つからない。そんな時に世の中に登場してきたのが「タイムボックス」という魔法の箱だ。この箱の中では時間が止まっており、みんなこの箱の中に入って経済危機をやり過ごそうとし始めたのだ。本書に最初に登場したシングルン一家もパパがテレビのコマーシャルを見て、早速タイムボックスを買い、家族3人でそれぞれのタイムボックスに入ることになった。だが、シングルンが中に入ってったら、すぐに扉が開いて、外に出た。何も変わっていないと思ったら、実は数年が経過した。パパとママのタイムボックスはなぜか扉を開けられなかった。そんなところにマルクスという少年がやってきて、一緒に行こうという。一緒についっていた家にいたグレイスという老婆が語り始めたのが、もう一つの物語で、実はこちらの方がメインと思われるストーリーだ。

昔々、パンゲアという国があり、ディモン王は娘のオプシディアナ姫のために世界を征服して残そうと思い、巨大な帝国を作る。しかし、魔女から時間を征服しない限り、世界を征服できないと言われ、姫の時間を止めることを思いつき、姫の時間を止められるものを探し始めたのだ。そんな時にこびと達がんできたのが、蜘蛛の糸で編まれて作られた箱で、これこそタイムボックスの原型だったものだ。この中では時間が止まる。オプシディアナ姫は殆どこの中で過ごすことになり、10年が経過しても体感時間ではほんの数日しかたっていない不思議な生活をすることになるのだ。

二つの物語はやがて一方が他方に追いつき融合していく。過去においては世界を征服するために、時間を征服しようとしてタイムボックスを使いだしたが、現代では物事を先送りにするために、タイムボックスを使っている。いずれにしてもそんな不自然なことは長続きするわけはない。児童文学だからだろうか、未来に希望を抱かせるような終わりになっている。