隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

われら古細菌の末裔: 微生物から見た生物の進化

二井一禎氏のわれら古細菌の末裔: 微生物から見た生物の進化を読んだ。

私の子どもの頃は生物は動物と植物の2つに分類されるとされていた。これがいつの頃からか全く用いられなくなり、実はそのことに気付いたのはここ数年のことだ。実際ミドリムシなどは葉緑体を持つが、運動の力もあるので、植物なのか動物なのかはっきりしない。また、キノコなどの菌類やカビとかも植物としていいのかどうかはっきりしなかった。それに代わって、今は生物はまず、細菌(バクテリア)、古細菌(アーキア)、真核生物に分類されている。本書の第一章はまずどのようないきさつで、この3つに分類されるようになったかを説明している。

アーキア (古細菌)

そもそも過去の生物学者は外見から似ている・似ていないを判断して、生物のグループ分けを行っていたが、対象となる生物が小さくなり、顕微鏡でもよく見えなくなると、外見からは判断することはできなくなる。1977年Carl R. Woese と George E. Foxによって「Phylogenentic structure of the prokaryotic domain: The primary kingdoms」 という論文が発表され、細菌と古細菌という概念が提案された。Woeseは生物間の近似度を求めるために、細胞内のリボゾームを比較した。具体的にはリボゾームを分離し、リボゾームを構成している16S rRNAという核酸成分を生成した後、その塩基配列を調べて比べるという事を行った。この論文で原核生物(細胞内に核を持たない生物)と真核生物(細胞内に細胞核と呼ばれる細胞内小器官をもつ生物)という2つの分類だけでは不十分で、原核生物には(メタン菌のような)別の生物(アーキア/古細菌)も含めて3つのカテゴリーからなると提案した。

実はこれらの名前が実はややっこしい。原核生物は核がないのに「原核」と呼ばれているし、古細菌は細菌より古いというような印象を名前から受けるが、細菌と古細菌はほぼ同時に発生したようで、どちらかが古いという事はないようなのだ。