隠居日録

隠居日録

2016年(世にいう平成28年)、発作的に会社を辞め、隠居生活に入る。日々を読書と散歩に費やす

最後の語り部

ドナ・バーバ・ヒグエラの最後の語り部 (原題 THE LAST CUENTISTA)と呼んだ。原題にあるcuentistaという単語には全くなじみがなかったので、調べてみたら、スペイン語で「語り部」という意味だった。この小説の主人公ペトラはニューメキシコ州に住む13歳の少女で、メキシコ人を祖先に持つ一家のようだ。だからタイトルにスペイン語を使ったのだろう。

2061年地球に彗星が衝突することが分かり、一部の人たちが移住可能と思われる星を目指して宇宙に飛び立った。3隻の宇宙船があり、ペトラ達一家は2番目の宇宙船に乗った。祖母を地球に残していくことに後ろ髪を引かれながら、宇宙船に搭乗したのだが、暴徒と化した群衆に宇宙船が襲われ、ペトラ達は辛くも地球を脱することができた。しかし、3隻目は暴徒により破壊されてしまったようだ。目指す星までの航行時間は380年もかかるので、搭乗員はポッドという睡眠装置で過ごすことになる。睡眠中の乗客の世話をする世話人たちがいるのだが、彼らが多数の乗員が睡眠中に反乱を起こし、コレクティブという単一社会を作り、ペトラが380年後に目覚めた時には、宇宙船はコレクティブに支配されていた。ペトラがコレクティブの社会からどのように逃れるのがこの物語だ。

本書は児童文学の所為なのか、詳細がわからないところが多々あった。世話人は380年も生きられないのは明白だが、彼らはどのように運命づけられていたのかよくわからない。彼ら自身で世代を重ねて、宇宙船で380年過ごすのか、それとも寿命が来たらそこで終わってしまい、世代は重ねないかなどは明らかになっていなかった。また、ペトラが覚醒した時、他に4人の少年・少女がいたが、それ以外の睡眠に入った人たちはどうなったのだろう?もともと何人の人たちが載っていたのかもよくわからないが、コレクティブの意にそわないものは粛正されたことが書かれているが、その大多数は既に粛清されてしまったのだろうか?ペトラ達はゼータと呼称されている。ゼータというと最後のアルファベットなので、もう彼ら以外は睡眠ポッドにはいないような感じもするが、よくわからない。先行する宇宙船の人たちがどうなったのかも、あまりはっきり書かれていない。宇宙船同士で通信できないとも考えにくいし、380年どうしていたのだろう?最後の最後で先行していた人々のことが出てくるような感じになっているが、それに関してもはっきり書かれていないのでよくわからない。結局、よくわからないまま物語が終わってしまって、ちょっと消化不良の感じがする。